· 

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題、ダニエル・ソカッチ著、NHK出版

イスラエル 人類史上最もやっかいな問題、ダニエル・ソカッチ著、NHK出版
新聞の書評欄で見て興味があったので予約し、ちょうど順番が回ってきたので読み始めたらハマスのロケット弾によるイスラエルへの攻撃が始まり、俄にタイムリーになってしまいました。
作者はアメリカ在住のユダヤ系アメリカ人で、イスラエルの民主化を後押しするNGOの代表です。
イスラエル建国以来の歴史、特に周辺国や元々の住民であるパレスチナ人との軋轢の歴史を第1部でわかり易く概説し、第2部で何がイスラエルをめぐる問題をややこしくしているのかを解説しています。
誤解を恐れずに言えば、「イスラエル人とパレスチナ人は、どちらも正しく、どちらも間違っている」であり、「正義の犠牲者同士の闘争」なんだと思います。
更に、20世紀前半にヨーロッパでヒトラーらによるホロコーストが起こり、多くのユダヤ人が殺されるのに手を差し伸べなかった欧州の引け目が、また米国の1/4を占める福音派キリスト教徒がユダヤ人のイスラエルへの帰還と建国を旧約聖書の予言と捉えていることが、問題をややこしくしているもうひとつの原因のように思います。
どこに出口があるのかよく判りませんが、イスラエル国家建設宣言でイスラエルみずからが謳った言葉を思い返すしかないと思います。「イスラエルは長く迫害されてきたユダヤ人にとっての故郷にして避難所であり、なおかつ、すべての国民(ユダヤ人とパレスチナ人)に完全な平等を保障する国」
比較的バランスが取れ、解説も平易で、パレスチナ問題と向き合う良書と思います。