新型コロナウイルスの5類移行から初めての夏を迎え、各地で花火大会の復活が期待される中、中止を余儀なくされる大会も少なくない。その背景にあるのは、物価高騰に伴う資金集めの難航。各地の主催者からは「苦しんでいる事業者に寄付のお願いはできない」と、切実な声が漏れる。一方で、クラウドファンディングを活用するなどの寄付金集めの工夫で、復活にこぎ着けた花火大会もある。

 2019年を最後に中止となっていた御宿町の「おんじゅく花火大会」。1500発を打ち上げる夏の風物詩で、今年は復活を望む声が上がっていたが、結局中止になった。

 「昨年から何とか花火をやれればとの声もあったが…」と肩を落とすのは御宿町観光協会の吉清文夫代表理事。「地域経済が冷え切っていて、価格高騰で事業者が宿泊や飲食を料金を値上げせざるを得ないこともあって、協賛や寄付のお願いはできない」と苦しい事情を明かす。

 実は中止となる前から人出は減少し、宿泊客も少なくなっていたという同大会。「花火ではない誘客方法を考える時期に来ている。年内に来年以降どうしていくのかを決めたい」と吉清代表理事は話す。

 8月12日にいすみ市で開かれる「夷隅ふれあい納涼まつり」も今年、花火の中止を決めた。「できることをやろう」と盆踊りと屋台が並ぶイベントを開催する。

 花火中止の理由は物価高騰。同市水産商工観光課によると、実行委員会から「物価や燃料費の高騰で市が事業者向けに経済支援をするのに、事業者に寄付を募るのはいかがなものか」との意見が出たという。今後は、合併前の旧3町ごとに行っていた花火と盆踊りのイベントを1カ所にまとめて持ち回りで開催するなど、規模縮小による存続を検討する。

 勝浦市で8月12〜15日に開かれる「かつうら若潮花火」は、昨年から打ち上げ数を大幅に減らして花火を再開。同市観光協会によると、以前は1500発を打ち上げていたが、各日75発を打ち上げることとし、イベント名も従来の「花火大会」から「大会」の文字を削除した。

◆警備費も負担重く

 各地の大会関係者からは「警備にかかる人件費が開催を困難にしている」との声も聞かれる。

 ある関係者は「警察から警備にお金をかけてくれと要求が上がっている。集まるお金が少ないのに、警備費に取られてしまうと花火の数を減らさざるを得ない」と打ち明ける。

 別の関係者も「警備面で警察から強く指導が入る」と吐露。「花火大会にコロナ前よりも多くの経費がかかるのは目に見えている。これまでと同じようにはできないのではないか」と危惧する。

◆クラファンで成功例

 一方、寄付金集めの工夫が成功した例も。

 1万3500発を打ち上げる「手賀沼花火大会」は8月5日、4年ぶりの開催が決定。柏市がふるさと納税制度を活用した「ガバメントクラウドファンディング」を実施し、寄付金が見込み額の150万円を大幅に上回り、900万円を超した。

 市は想定を大幅に上回った寄付金を活用し、新たに最大規模の連射花火「ウルトラジャンボスターマイン」の打ち上げを決定。太田和美市長は「4年ぶりの開催を多くの人が期待している表れ」と喜んでいる。