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SDGsの目標16『平和と公正を全ての人に』

平和都市宣言

平和な日々を過ごすことは、全人類の共通の願いです。我が国の経済発展とともに本市は成長し、今日、全国でも有数の大都市に発展しました。こうした繁栄は、平和がもたらしたものであるといっても過言ではありません。
1989年(平成元年)2月28日、千葉市は世界の恒久平和を願い、「平和都市」を宣言しました。

平和都市宣言

平和都市宣言

私たちの郷土千葉市は、「ゆとりと活力ある都市づくり」を基本目標に、心のふれあう豊かで美しい地域社会の創造と健康で快適なまちづくりに懸命な努力を続けているところである。

郷土千葉市の発展と市民の幸せは、日本の安全と世界の恒久平和なくしては望み得ないものである。

よって、私たちは、核兵器などによる戦争への脅威をなくし、市民共通の願いである世界の恒久平和を求め、ここに「平和都市」を宣言する。

1989年(平成元年)2月28日

千葉市

「ちばSDGsパートナー」登録企業 Apex product

目標16のポイント

  • みんなが安心して参加できる平和な社会をつくる
  • 公正なほうりつもとづいたらしをみんなができる
  • いき・国・世界といったあらゆるレベルで公正な司法せいを利用できる

平和な社会づくりのため、世界中から、虐待、搾取、人身売買など、子どもに対する暴力を含む、あらゆる暴力と暴力による死を大幅になくすこと、政府や国の制度を公正にし、すべての人が平等に司法を利用することを目指す目標です。

違法な資金の取引や武器の取引、汚職を大幅に減らすこと、子どもや若者を含む人々の意見を意思決定に反映し、人々に対して情報を公開して説明ができる政府や制度にすることもこの目標に含まれます。また、グローバルなレベルでの決定に際し、途上国の参加を拡大、強化していくことも目指します。

SDGsの17番目の目標は、これまでの16の目標を達成するために、「具体的な実施手段を強化し、持続可能な開発に向けて世界の国々が協力すること」に関連するとても重要な目標です。

すべての国が目標達成に向けて国の予算を確保し、また先進国は途上国に必要な資金や技術を支援し、国同士の格差を生まない貿易ルールを実施することが掲げられています。

さまざまなステークホルダー(関係者)が連携することや、目標達成に向けてどのくらい進捗しているかを確認するため、データや統計をきちんと集めることもこの目標に含まれています。

争いは、やめましょう。世界の平和を願います!!

何故、今だに世界の至る所で揉め事や争いごとが絶えないのでしょう。政治や宗教での自国間の争い、差別、派閥、どうして起こるのですか。アジアの仲間同士どうして普通に暮らせないのですか。誰が、考えても平和な社会が良いに決まっています。小さな子供でも理解出来る事を分別のある大人や政治家が、何故、争うのでしょう。人は何故争わなければいけないのでしょう。欲を捨て本来の裸で生まれた人間同士うまくやっていけないのでしょうか。それぞれ、己が正義と思い事を成すでしょうが、少しだけ立ち止まり、力を抜いて音楽を聴いてみてはいかがですか。きっと心に響く1曲があるはずです。そして貴方の幼い頃。そうです。純粋だったあの頃。思い出して下さい。人前に出るのもおどおどして、母親の影に隠れていた優しい子。正義の旗の元、どんな理由があっても人殺しです。無差別に殺しあう戦争が、どんなに愚かな事でしょう。本来のあなたに戻って下さい。きっと戻れます。先人がどれだけ血を流し我々に生きて伝えたかった事でしょう。だからだから、お願い致します。下記に、あげる資料・画像を見て一人でも多くの人に伝えて下さい。いかに、平和が大切で、人の命が尊いのか。本気で考えて下さい。弊社は、真剣に取り組みます。誰に非難されても、私達は訴え続けます。一生を掛けて取り組む問題だからです。是非ご賛同頂き、少しでも悲しい人を作らないようにしましょう。

 

平和ほど、尊いものはない。
平和ほど、幸福なものはない。
平和こそ、人類の進むべき、
根本の第一歩であらねばならない。

 

-  青空と向日葵の会 Apex product 社員一同 -

【連絡先】

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『昭和天皇』
出雲井 晶、産經新聞社、2001年
明治34年4月29日、嘉仁親王(後の大正天皇)24歳のときにお産まれになった迪宮(みちのみや)さま(後の昭和天皇)。約3000gの赤ん坊だったそうです。
迪宮さまは幼い頃から物覚えがよく周囲を驚かせ、伊藤博文や山縣有朋ら7人のおじさんに囲まれても全く物怖じしなかったと記されています。
学習院初等科では乃木希典から厳しく教育を受けて、卒業後は東宮御学問所(とうぐうごがくもんじょ)で東郷平八郎の下、6人の学友と共に学ばれたんですよね。
中でも倫理の先生となった杉浦重剛は、殿下の気高く汚れないお人柄をより高く、より深くできるよう、①三種の神器②五箇条の御誓文③教育勅語を授業の柱にしたとのこと。
杉浦先生から「君徳(天皇の徳)とは」との問いに「日月私照(にちげつししょうなし)」(太陽も月も、どんな人にも同じように光を与えている。天皇も、いつもそうでなければならない)と即座にお答えになったそうです。
大正5年に立太子の礼を行ない皇太子になられます。その後に久邇宮邦彦(くにのみやくによし)王の第一王女・良子(ながこ)女王と婚約され、大正11年にご結婚。
ヨーロッパ見学の旅を経て、大正10年に摂政におつきになりました。やがて関東大震災を乗り越えて、いよいよ天皇の御位になられます。
そんな昭和天皇の生涯を知ることができます。
『昭和天皇と鰻茶漬 陛下一代の料理番』
谷部 金次郎、河出文庫、2015年
昭和39年3月。17歳で宮内庁の大膳課(だいぜんか)、つまり皇室の料理人に採用された谷部氏。そこから昭和天皇の崩御のときまで仕えていた方で、日々の出来事や料理を通したお話が書かれています。
年に1.2回、京都から届く茶漬用の鰻が特にお好みだったようで、そこから本書のタイトルにもなっていますね。
皇室で出される日々の料理は、豪華絢爛というものではなく、やはり質素でバランスのとれたものだそうです。ふつうの家でふだん食べているものと変わらず、食器も同じく。箸も柳箸という割り箸のようなものを使われていたとのこと。
そして、少なくとも昭和の頃は朝食はおおむね洋食、昼食と夕食で和洋どちらかと決まっていたそうで、それぞれ係が分かれているんですね。
そのほかにも菊栄親睦会の方々との在位60年のお祝いの会のときや、園遊会、さまざまな儀式の際に出される食事のことなど、外からは伺い知らない内容で興味深いです。
ほかにも「宮内庁御用達」のことや東久邇家のお子様方との卓球、ご自身の結婚のことなども披露されています。
加えて、すごい料理をつくるのはもちろんとして、日々の当たり前の料理をおいしくつくることの大切さを語られていて、谷部氏にとってお客様はつねに両陛下のみ。献上品がきたりはしますが予算はそこまで潤沢ではない中、同じ食材であっても料理法や味付けを変えて飽きのこないように工夫されるのが「腕のみせどころ」というお話でした。
現代の食についての考えも示されていたり、食という面から皇室を知ることのできる一冊となっています。

加藤登紀子さん「歌うことで心の分断消したい」…21日にコンサート「百万本のバラ物語」

 ウクライナ避難民を支援する歌手の加藤登紀子さん(79)が4月28日、千葉県木更津市で読売新聞などの取材に応じた。君津市民文化ホールで5月21日に開くコンサート「百万本のバラ物語」を前に、「戦争は人々の心を分断させる。歌うことを通して分断を消していきたい」と語った。

「コンサートでは平和への祈りを込め、
国を超えて心をつなぐ歌を歌いたい」
と話す加藤登紀子さん(4月28日、木更津市のかずさエフエムで)

 加藤さんはロシア軍がウクライナ侵略を始めた昨年、アルバム「果てなき大地の上に」(税込み2200円)を自費で制作した。「早く戦争が終わることを願い、『イマジン』や『花はどこへ行った』など平和や反戦にちなむ7曲を歌った」と話す。認定NPO法人「日本チェルノブイリ連帯基金」(長野県松本市)に売上金すべてを寄付し、ウクライナから国外へ避難した人々を支えている。

 4月28日は、コミュニティーFM「かずさエフエム」での収録で木更津市を訪れた。「満州(現中国東北部)のハルビンで暮らした両親が都内でロシア料理店を営むなどした縁で、私たちはウクライナもロシアも愛してきた。ウクライナの人々が死ぬ悲劇はもう起きないでほしい」と述べた。

 代表曲「百万本のバラ」の原曲は1980年代、当時のソ連でヒットした。ウクライナやロシアが同じ国だった時期のことだ。「人々の心をつなぐ歌だと信じているが、ウクライナでは戦争が始まってから歌えなくなったかもしれない。それが悲しい」と語った。

 君津市での公演は午後4時開演。ウクライナが舞台のミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」の劇中歌「サンライズ・サンセット」から始まり、フィナーレの「百万本のバラ物語 ロングバージョン」では君津市民合唱団がバックコーラスで出演する。料金は税込み6500円(全席指定)。問い合わせは同ホール(0439・55・3300)へ。

『天皇家 百五十年の戦い』
江崎 道朗、ビジネス社、2019年
本書は、西暦1868〜2019年つまり明治元年から令和元年のおよそ150年間の天皇の戦いを振り返る一冊。
何が戦いかって、やはり大東亜戦争敗戦からの占領下での政策でしょう。
敗戦によって日本を占領したGHQやその上部組織である極東委員会は、皇室と国民を切り離す数々の政策を打ち出しました。新聞・映画・教科書の検閲から、神道指令に財産の略奪まで。
戦勝国によって構成された極東委員会からして「日本の新憲法についての基本原則」では天皇制廃止を奨励しなければならないと書かれていますしね。これを基にGHQの行動が決まってくるわけですが。
そして、歴代の陛下は昭和、平成を通じて全国への御巡幸を積極的になされます。GHQは、陛下が石や罵倒罵声を投げつけられることを期待していたようですが、実際は万歳と歓喜の雨あられだったのはご存知の通りですが。
戦火に傷付いた国民や自然災害などの天災に苦しむ国民を励ますために、日本の分裂を防ぐために。
そんな数多くのエピソードも紹介されています。
最後に、御巡幸についての話を本書から引用させていただきます。
陛下を迎えることで、その地域は、陛下に誰と会っていただくか、何を御覧になってもらうかを考えなくてはならなくなる。
(中略)
一つ一つ考えることで、自分たちがどういう素晴らしいものを持っているのかを確認する機会になる。自分たちが何者なのかを再認識することが、自分たちが持っているものをさらに活かして地域を発展させていこうという原動力につながる。
御巡幸には、その地域の力を呼び覚ます、すさまじいほどの効果があるのだ。
【 焼き場に立つ少年 】
1999年現在76歳になるジョー・オダネル氏は、
アメリカ軍の報道写真家として
第2次世界大戦後の日本を撮った。
佐世保から長崎に入った私は、
小高い丘の上から下を眺めていました。
すると白いマスクをかけた
男達が目に入りました。
男達は60センチ程の深さにえぐった
穴のそばで作業をしていました。
荷車に山積みにした死体を石灰の燃える
穴の中に次々と入れていたのです。
10歳ぐらいの少年が
歩いてくるのが目に留まりました。
おんぶひもをたすきにかけて、
幼子を背中に背負っています。
弟や妹をおんぶしたまま、
広っぱで遊んでいる子供の姿は
当時の日本でよく目にする光景でした。
しかし、この少年の様子は
はっきりと違っています。
重大な目的を持って
この焼き場にやってきたという
強い意志が感じられました。
しかも裸足です。
少年は焼き場のふちまで来ると、
硬い表情で目を凝らして立ち尽くしています。
背中の赤ん坊はぐっすり眠っているのか、
首を後ろにのけぞらせたままです。
少年は焼き場のふちに、
5分か10分も立っていたでしょうか。
白いマスクの男達がおもむろに近づき、
ゆっくりとおんぶひもを解き始めました。
この時私は、
背中の幼子が既に死んでいる事に
初めて気付いたのです。
男達は幼子の手と足を持つと
ゆっくりと葬るように、
焼き場の熱い灰の上に横たえました。
まず幼い肉体が火に溶ける
ジューという音がしました。
それからまばゆい程の炎が
さっと舞い立ちました。
真っ赤な夕日のような炎は、
直立不動の少年のまだあどけない頬を
赤く照らしました。
その時です、
炎を食い入るように見つめる少年の唇に
血がにじんでいるのに気が付いたのは。
少年があまりきつく噛み締めている為、
唇の血は流れる事もなく、
ただ少年の下唇に赤くにじんでいました。
夕日のような炎が静まると、
少年はくるりときびすを返し、
沈黙のまま焼き場を去っていきました。
(インタビュー・上田勢子)
=朝日新聞創刊120周年記念写真展より抜粋
『日中友好侵略史』
 門田隆将
この様なノンフィクションは前から読みたかったです。
如何に中国が我が国に長きにわたり侵攻しているのか、またその経緯、歴史に旋律します。
田中角栄内閣時代に歴史的な「日中友好条約」とは、実は友好と言う名を借りた「日中友好侵略史」であった。そして70年以上の長いスパンと壮大なスケールにおいて描き出した一冊。
中国はどの様に対日工作を展開してきたか、自民党議員内部の大物政治家がこれだけ中国に取り込まれてるのか、分かってはいたもののこの本を読んで改めて驚愕しました。 
今の自民党の親中派の数が減らない限り、あの国への強固な外交は無理なのだろう。
かと言って野党にも期待できない。
本書はまだまだ中国侵略史の除幕みたいなもの、次作はマスコミが中国に汚染されている事実を暴露した本を書いてほしい。
アナタ、ミサイルばっかり
お撃ちになるんですって?(笑)😂‼️
【18歳の回天特攻隊員の遺書】
https://yuru2club.com/wp/?p=4536
太平洋戦争末期、最初の特攻兵器として開発された人間魚雷である「回天」。
「天を回らし、戦局を逆転させる」という願いを込められて命名されました。
八丈島で終戦を迎えたKさんは、「特攻最後の証言」の中で、
若者たちが、自主的に特攻に臨もうとする心情をこう説明しています。
「日本はもう防波堤のない状態になっていました。
 アメリカはいつでも日本本土に上陸できる。
 もし本土で陸上戦闘になれば、日本の国民も国土も文化も
 全てが失われると思いました。
 人間魚雷の一言で、
 これこそアメリカの上陸を阻止しなければと思いました。
 我々は命を失わなければならないが、
 その代わりに千倍、何千倍の日本人が生き残る。
 それができるなら命は惜しくないと、その瞬間に悟りました」
このような背景を踏まえて、たった18歳で人間魚雷「回天」により、
散っていった特攻隊員の手紙をご紹介します。
お母さん、私は後3時間で祖国のために散っていきます。
胸は日本晴れ。本当ですよお母さん。少しも怖くない。
しかしね、時間があったので考えてみましたら、
少し寂しくなってきました。
それは、今日私が戦死した通知が届く。
お父さんは男だからわかっていただけると思います。
が、お母さん。
お母さんは女だから、優しいから、涙が出るのでありませんか。
弟や妹たちも兄ちゃんが死んだといって寂しく思うでしょうね。
お母さん。
こんなことを考えてみましたら、私も人の子。やはり寂しい。
しかしお母さん。
考えて見てください。

18歳の少年の手紙は続きます。

かしお母さん。

考えて見てください。

今日私が特攻隊で行かなければどうなると思いますか。

戦争はこの日本本土まで迫って、 この世の中で一番好きだった母さんが死なれるから私が行くのですよ。

母さん。

今日私が特攻隊で行かなければ、 年をとられたお父さんまで、銃をとるようになりますよ。

だからね。お母さん。

今日私が戦死したからといってどうか涙だけは耐えてくださいね。

でもやっぱりだめだろうな。

お母さんは優しい人だったから。

お母さん、私はどんな敵だって怖くはありません。

私が一番怖いのは、母さんの涙です

『真珠湾攻撃隊』
隊員と家族の八十年
大島雄之・講談社現代新書(2022年)
NHK BS1スペシャル『真珠湾 生きて 愛して、そして』(2021年12月5日放送)の書籍化です。
放送では紹介できなかったことや放送後の取材でわかったことも盛り込まれています。
著者はNHKエンタープライズのディレクターで戦争や災害をテーマにしたドキュメンタリを作っている人です。
太平洋戦争は1941年12月の真珠湾攻撃で始まりました。このとき日本海軍の六隻の航空母艦から真珠湾へ飛び立ったのは350機で搭乗員は765人。この他に空母上空で防空任務についた戦闘機や予備の航空機を含めると搭乗員の合計は900人近くになり、著者が氏名等を把握している人だけで871人になります。
彼らの半数近い406人が開戦後の一年間で戦死しており、最終的には八割近くが戦死しています。
著者はこれらの真珠湾攻撃隊員で住所のわかる人に「どんな些細なことでも教えてほしい」と手紙を出すことから取材を始めています。
宛先不明で戻るものや返事のないものが多く、連絡があったのは少数でしたが、その少数の中には遺族が攻撃隊員の日記や手紙を保管していたり、隊員を記憶している親族がいるケースがあり、そういう人たちへの取材で番組とこの本ができました。
読んでいて思うのは、取り上げられた攻撃隊員にドラマになりそうなエピソードが多いことです。
例えば「日本海軍の至宝」とまで言われた爆撃の名手である金井昇さんです。
この人は真珠湾からわずか二週間後のウェーク島攻撃で戦死しています(1941年22歳)
金井家は昇さんの兄からその息子に受け継がれ現在は息子の妻が家を守っています。
取材に訪れて遺品を見せてもらうと、昇さんの手紙や写真が残っており、その中には戦死時に山本五十六連合艦隊司令長官から送られた手紙もありました。
しかし他の資料で存在していることがわかっている日記が見当たらず、著者は「探してみてほしい」とお願いして金井家を後にしています。
すると二年後に遺族から見つかったと連絡がありました。(「忘れたころに連絡があった」とナレーションが入りそうなところです)
この日記を読むといろいろなことがわかります。
航空機搭乗員になる道はいくつもありますが、士官養成のための海軍兵学校から搭乗員になるのは別格として、有名な予科練にもふたつのコースがあり、その他に一般の兵隊として海軍に入ってから搭乗員になるコースがありました。
昇さんは最後のコースであったため、海軍での在籍は長いのに昇進の遅いことに不満があったことが日記から読み取れます。
そんな昇さんに1941年初めに縁談が持ち込まれます(開戦は年末)
紹介者は中尉で縁談の相手は少佐の娘ですからどちらも将校です。ちなみに昇さんは下士官最上位の一等飛行兵曹でした。
中尉と少佐といってもこの二人はどちらも兵隊からの叩き上げです。一兵卒で入って少佐になるのは高卒の一般職国家公務員が本省の課長になるような感じですから、叩き上げの超エリートということになりますが、そんな人たちから縁談を持ち込まれるだけ昇さんは評価されていたのだと思います。
昇さんは紹介された相手と1941年4月に婚約しますが、この頃には何度も相手の家を訪ねて単なる見合い以上の好意を持つようになっています。
ところがここへ来て昇さんに迷いが生じます。搭乗員の仕事は平時でも殉職が珍しくなく、まして戦争が近いと思われる時期ですから、それで結婚していいのかという思いが出てきたらしいのです。
当時のことですから相手の女性には迷いはなかったようですが、こちらの迷いが見えてくると相手の親もそういうことならと迷いだして、結局は開戦直前の11月には破談になってしまいます。
そしてその年末に昇さんは戦死するのですが、ここまでの話だけで一本の映画ができそうな気がしてきます。
昇さんは戦争のために結婚をあきらめたケースですが、家とか跡取りという意識が強かった時代ですから結婚にまつわる話はたくさんあります。
ある攻撃隊員の妹は、自分の友達には「女学校を出てすぐに結婚して、すぐに夫を戦争で亡くした人が二人いました」と語っています。
真珠湾攻撃隊員の中には結婚から間もなく戦死した人が六人ありますが、残された妻の全員が再婚している中で三人が夫の弟と結婚しているのも時代を感じさせます。
この本で初めて知ったのですが、戦争中に政府は戦死者の妻の生活を保障するために医学部に戦争未亡人の特別枠を設けています。
1944年2月にパラオ方面で戦死した布留川泉さん(海軍兵学校卒)は真珠湾攻撃時に8ミリカメラで動画を撮影した人ですが、この人の妻であった照子さんは泉さんとの子どもである滉子さんを布留川家に残して医学部の未亡人枠を使って医師になります。
さらに戦後の照子さんはアメリカ軍の大佐と結婚して離婚、その後は小学校五年生の滉子さんを残して渡米、医師として働きながら何度かの結婚をして二人の子どもを得ます。
残された滉子さんは成人して結婚、その娘のまり子さんはアメリカへ渡って日本語教師になります。1991年に滉子さんは娘のまり子さんに会うために渡米。そのときに三十七年振りに母の照子さんに再会します。
これもまたドラマになりそうなお話です。
この本には、こんなドラマチックな話だけでなくもっと地味だけれど面白い話もあるのですが、いずれにしてもそんな話を読めるのは日記や手紙が残っていたことが大きいと思います。
そしてそういうものが残ったのは、古いものが残る蔵や物置のある家、祖父やその兄弟の記憶を語り継ぐ古い家があればこそで、この本でも記録の残る家について「茅葺の家」「三十畳の大広間」「いかにも農家という構えの家」といった形容が並びます。
現在の核家族が次々と住み替え建替えるような環境、何代か前の縁者を意識することの少ない生き方では、このような記録も記憶も残らないだろうと思います。
そんな紙の情報に比べて現在の電子化された情報は朽ちることも燃えることもないかもしれませんが、パソコンやスマホは十年も経たずに捨てられるでしょうし、どこかのサーバに残るとしても利用者が老いたり死んだりすればアカウントもパスワードもわからなくなってしまいます。
ですから個人単位の電子情報というものは案外残らないもので、紙よりも脆いかもしれません。
昭和の皇后さま、良子(ながこ)様。
表情が美しく温かいお方でした。その微笑みはご訪問された欧州でも米国でも
「エンプレススマイル」と大いに賞賛されました。本当に自然体でありながら気品と温かさが伝わってくる素晴らしい笑顔でした。佇まいも装いも素敵な貴婦人でした。
日本画家としての良子さまは、「桃苑」という雅号で、最初は川合玉堂、それから前田青邨を
師となさって長く学んでいらっしゃいました。
前田青邨の弟子だった平山郁夫は「良子さまの絵は雅格に満ちている。何回もお目にかかったが、いつも非常に優しいお声で「平山さん」と呼ばれたが、変な違和感を感じさせないお方だった。その慈愛に満ちたお人柄はまさにご自分の絵のようだ。」評価していました。
写真は76歳の良子さま。
吹上御苑で梅をスケッチなさっていらっしゃいます。愉しそうな笑顔です。

【速報中】G7広島サミット開幕前に 岸田首相 広島に到着

19日のG7広島サミットの開幕を前に、岸田総理大臣は、18日、アメリカのバイデン大統領との首脳会談に臨みます。日米同盟のさらなる強化を確認するとともに、サミットの成功に向け、最終的な論点のすりあわせを行いたい考えです。

岸田総理大臣は午前10時ごろ、総理大臣官邸で記者団に対し「今回のG7広島サミットは、国際社会が歴史的な転換期にある中で開催される重要なサミットだ。議長として、G7をはじめ、国際社会をけん引する強い決意と覚悟を持って臨みたい」と意気込みを述べました。岸田総理大臣は正午に広島空港に到着し、アメリカのバイデン大統領などG7各国の首脳との会談に臨むことにしています。

※18日の動きを随時更新してお伝えします。

《速報中》

G7広島サミットの開幕を前に18日、日本自動車工業会が記者会見し、自動車の脱炭素化について、EV=電気自動車に限らず、それぞれの国や地域の特徴を踏まえてさまざまな技術で取り組むべきという考えを示しました。

日本自動車工業会ではG7の期間中、広島市でEVやハイブリッド車、それに燃料電池車など日本メーカーの車を展示することにしていて、豊田章男会長は「世界を見てもこれだけ多様な自動車会社がそろっている国はなく、G7を通じて日本らしいカーボンニュートラルへの山の登り方を提案したい」と述べました。

12:10ごろ 平和公園も立ち入り規制に 祈りささげる人も

広島市の平和公園では、18日から立ち入りの規制が始まりました。平和公園は原爆ドームの周辺も含めて今月21日まで立ち入りが制限される予定です。

平和公園のそばを通って通勤しているという50歳の女性は「ふだんは人の多い公園に入れなくなりさみしいです。ただ、安倍元総理大臣の銃撃事件や岸田総理大臣が狙われる事件もあったので、何事もなくサミットが終わればいいなと思います」と話していました。
立ち入りが正午から制限されるのを前に、平和公園の原爆慰霊碑の周辺や公園近くの橋の上では、多くの人たちが祈りをささげていました。

大阪から訪れた58歳の男性は「各国の首脳がこの場所に訪れることを原爆で亡くなった人たちに報告しました。まさにここで核兵器が使われたということを想像してほしい。核兵器がなくなっていくことを願っています」と話していました。

12:00ごろ 宮島口でも立ち入り制限

首脳らが訪れる予定の宮島では18日正午から立ち入り制限が始まり、廿日市市の宮島口にあるフェリーターミナルでは、正午になると制限を知らせる看板が設置されました。正午以降に訪れた人は住民であることなどを示す識別証を係員に見せながら手荷物検査を受けて乗り場に向かっていきました。

広島空港に警備犬 厳戒態勢に

各国の首脳が利用する広島空港は、テロなどの不測の事態に備えて厳戒態勢となっています。ターミナルには多くの警察官のほか、警備犬も配置されています。また、ふだんはエプロンや滑走路の様子を見ることができる展望デッキは18日から閉鎖され、一般の人の立ち入りはできなくなりました。

一方、サミットに伴う交通規制の影響で、空港と広島市内などとを結ぶバスが運休となる中、到着ロビーでは学生ボランティアが外国人に英語で広島市内への行き方などを案内する様子も見られました。

12:00 岸田首相 広島空港に到着

正午、岸田総理大臣が広島空港に到着しました。このあと、広島市内に移動し、アメリカのバイデン大統領などG7各国の首脳との会談に臨むことにしています。

12:00 政府 危機管理センターに「情報連絡室」設置

政府は、19日開幕するG7広島サミットに向けて、テロやサイバー攻撃への警戒を強化するため、18日正午、総理大臣官邸の危機管理センターに「情報連絡室」を設置しました。

高速道路 一部区間で交通規制 始まる

このうち山陽自動車道は、午前10時50分から広島県内の本郷インターチェンジと広島東インターチェンジの間の下り線で通行止めが始まり、サービスエリアも閉鎖されました。

小谷サービスエリアでは午前9時半ごろから警察やNEXCOの社員が利用するドライバーに声をかけ「施設を閉鎖するので早めにご退出お願いします」と呼びかけていました。サービスエリアの管理者によりますと、山陽自動車道の下り小谷サービスエリアの再開は19日の午前4時ごろを見込んでいるということです。

広島市で交通規制 通勤・通学時間帯に混雑も

サミット開幕を控え、広島市内では交通規制が始まりました。広島電鉄では18日から22日までの平日は路面電車とバスの便数をいずれも通常の半分程度に減らしているため、18日朝の通勤・通学の時間帯は利用者で混雑しました。一方、それ以降は目立った混雑は起きておらず、広島市中心部では、午前11時現在、車の交通量もふだんより少なくなっています。

広島電鉄は夕方以降、帰宅ラッシュで再び混み合う可能性があるとして、最新の運行状況を確認し時間にゆとりを持って利用するよう呼びかけています。

11:00ごろ 松野官房長官「核兵器ない世界へ機運を」

松野官房長官は18日午前の記者会見で「G7広島サミットでは、国際的な機運が後退している中で『核兵器のない世界』に向けた機運を盛り上げるとの思いを形にしたいと考えており、力強く実効性のある取り組みにつながるようなメッセージを発信したい」と述べました。また、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4か国の枠組み=クアッドの首脳会合の開催については「現在4か国間で調整中だ」と述べました

10:50 岸田首相 政府専用機で羽田空港出発

午前10時50分、岸田総理大臣が政府専用機で羽田空港を出発し、広島に向かいました。岸田総理大臣は、19日開幕するG7広島サミットに先立ち、広島に到着したあと、午後にはアメリカのバイデン大統領との日米首脳会談に臨むほか、ほかのG7のメンバー国の首脳とも会談を行う方向で調整を進めていて、サミットの成功に向けて、最終的なすりあわせを行うものとみられます。

10:00ごろ 岸田首相 官邸出発「強い決意と覚悟を持って」

岸田総理大臣は、午前10時ごろ、総理大臣官邸で記者団に対し「今回のG7広島サミットは、国際社会が歴史的な転換期にある中で開催される重要なサミットだ。議長として、G7をはじめ、国際社会をけん引する強い決意と覚悟を持って臨みたい」と意気込みを述べました。その上で「開催される広島という街は、原子爆弾によって壊滅的な被害を受け、力強く復興して平和を希求する街であり、こうした広島でG7や各地域の主要国が平和へのコミットメントを示すという取り組みを歴史に刻まれるものにしたい」と述べました。そして、サミットの開催地広島に向け、官邸を出発しました。

10:00前 国際メディアセンター開設

G7広島サミットの取材拠点となる「国際メディアセンター」が広島市中区の県立総合体育館に開設され、センターの運用が始まる午前10時を前に、施設の入り口には国内外から集まった報道関係者が長い列を作り、入念な荷物検査を受けて入場していきました。

イタリアのテレビ局の男性は「ロシアのウクライナ侵攻や環境問題などで議論が進むことを期待しています。各国首脳の原爆資料館への訪問は、過去に何が起こったか知り今後の正しい行いにつなげるために大切なことだと思う」と話していました。

9:20ごろ 宮島への立ち入り制限前に 金属探知機設置

18日正午から宮島への立ち入りが制限されるのを前に、広島県廿日市市の宮島口にあるフェリーターミナルには、午前9時20分ごろから金属探知機などの機械が設置されました。

8:30ごろ 広島市 人通りはふだんより少なく

広島市では午前8時30分ごろ、歩く人や通行する車の数はふだんより少なくなっていました。県内の企業はG7広島サミットの開催にあたり、18日から臨時休業や出社人数を制限するなどの対応を取っています。

1:47ごろ 伊 メローニ首相 広島空港に到着

G7広島サミットに出席するイタリアのメローニ首相を乗せた専用機が、18日午前1時47分ごろ、広島空港に到着しました。今回のサミットに出席するG7の首脳で広島に到着したのはメローニ首相が初めてです。

1:00ごろ 米 バイデン大統領 日本へ出発

G7広島サミットに出席するため、アメリカのバイデン大統領は日本時間の18日午前1時ごろ、大統領専用機で首都ワシントン近郊の空軍基地を出発しました。

バイデン大統領は日本時間の18日午後、広島に到着したあと、岸田総理大臣との日米首脳会談に臨み、19日から21日まで開かれるG7広島サミットに出席します。

バイデン大統領としては、一連の協議を通じて、各国と連携してロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの支援を維持し、ロシアに対する圧力を強化するとともに、インド太平洋地域をはじめとする世界各地で影響力を拡大させる中国に対抗するための結束を確認したい考えです。とりわけアジアの同盟国・日本が議長国を務める7年に1度の機会をとらえて、各国の関心をインド太平洋地域に向けさせ、中国を念頭に経済的威圧に一致して対抗するための方策を打ち出したい考えです。

バイデン大統領は当初、G7広島サミットに出席したあと、オーストラリアなどを訪れる予定でしたが、アメリカの債務上限の引き上げをめぐる協議が続く中、G7後の日程をキャンセルし21日にアメリカに帰国する予定です。

バイデン大統領は出発を前に17日、ホワイトハウスで演説し、アメリカ政府の借金の上限、いわゆる債務上限問題について「合意できると確信している。アメリカは債務不履行にはならない」と述べ、野党側との協議に全力を挙げる姿勢を示しました。

米ホワイトハウス 日米韓3か国首脳会談は「調整中」

バイデン政権は、G7広島サミットに出席するバイデン大統領が、日本滞在中に岸田総理大臣と韓国のユン・ソンニョル大統領と日米韓3か国の首脳会談を行うと今月はじめに発表しています。これについてホワイトハウスのサリバン大統領補佐官は17日、記者団に「3か国とも開催には前向きだ」とした上で「非常に過密なスケジュールの中で時間が取れれば首脳会談を行いたいが確定はしていない。まだ多くの予定を調整している最中だ」と述べ検討を続けていることを明らかにしました。

バイデン大統領は国内の債務上限の引き上げをめぐる協議を行うため一連の外国訪問を短縮するなど予定の見直しを行っていて、日程の調整が続いています。

《G7広島サミット 開幕前に きょう日米首脳会談へ》

G7広島サミットは、19日から3日間の日程で開催され▽ウクライナやインド太平洋を含めた地域情勢に加え▽世界経済や▽食料・エネルギー問題、▽核軍縮・不拡散などをテーマに首脳間の討議が行われます。
開幕に先立ち、G7メンバー国の首脳は、18日来日し、岸田総理大臣も現地入りする予定です。そして、岸田総理大臣は、18日午後にアメリカのバイデン大統領との首脳会談に臨むことにしています。

会談では、中国の海洋進出の動きや北朝鮮の核・ミサイル開発など、東アジアの安全保障環境が厳しさを増していることも踏まえ、日米同盟の抑止力と対処力のさらなる強化を確認したい考えです。また、半導体や重要鉱物のサプライチェーンの強じん化を含めた経済分野での協力などをめぐっても意見が交わされる見通しです。

そして、広島サミットの成功に向けて、ロシアに対する制裁の扱いやウクライナ支援のあり方など、19日からの討議の論点について首脳間で最終的なすりあわせを行いたい考えです。

岸田総理大臣は、ほかのG7メンバー国の首脳とも、サミット開幕に先立って個別に会談を行う方向で調整を進めています。

各国首脳 きょうから広島入りで厳戒態勢に

G7広島サミットにあわせ、アメリカのバイデン大統領をはじめ、各国首脳は18日から広島に入る予定です。警察庁によりますと、G7広島サミットの警備は最大2万4000人の態勢になるということで、国内の地方で開催されるサミットとしては過去最大規模です。

制服の警察官を前面に出すことでテロなどを防ぐいわゆる「見せる警備」を重視していて、警察は18日に日米首脳会談が行われる会場や、各国首脳が宿泊するホテルなどを中心に警備に臨む方針です。また、平和公園沿いなど広島市中心部を流れる川では警備艇などを出動させるとともに、海上保安庁とも連携してサミット会場周辺の臨海部での警備にあたります。

会場周辺は立ち入りが厳しく制限されていますが、ドローンを使った攻撃に備え、不審なドローンの飛行を電波を使って妨害する「ジャミングガン」と呼ばれる機材を備えた部隊を配置しているということです。

電力など重要なインフラをねらったサイバー攻撃も懸念されていて、警察は不審なアクセスがないか情報収集や分析を進めるなど、厳戒態勢で警備にあたっています。

平和公園や宮島 正午から立ち入り制限

G7広島サミットは19日から3日間の日程で行われ、各国の首脳や配偶者などが広島市中区の平和公園や広島県廿日市市の宮島を訪れる予定です。これに伴って、平和公園と日本三景の一つ、宮島はいずれも18日の正午から立ち入りが制限されます。

このうち平和公園は、原爆ドームの周辺も含めて今月21日まで立ち入りが制限される予定で、園内にある原爆資料館や広島国際会議場、レストハウス、それに追悼平和祈念館は休館となります。

一方、宮島は20日の午後2時まで、識別証を持つ住民などを除いて原則として島に入ることができなくなる予定となっています。世界遺産の嚴島神社では、19日の終日と20日の午後2時ごろまで閉門し、宝物館と千畳閣も同じ期間、拝観を取りやめることにしています。

また、宮島水族館と宮島歴史民俗資料館、それに宮島伝統産業会館は、21日まで3日間休館を続けることにしています。

各国首脳一覧ページ

G7 広島サミットに参加する各国首脳の詳しい情報です。年齢は、2023年5月19日時点のものです。

主要7か国とEUの首脳

  • 日本岸田 文雄

    65歳

  • フランスエマニュエル・マクロン

    45歳

  • アメリカジョー・バイデン

    80歳

  • カナダジャスティン・トルドー

    51歳

  • ドイツオラフ・ショルツ

    64歳

  • イタリアジョルジャ・メローニ

    46歳

  • イギリスリシ・スナク

    43歳

  • EU大統領シャルル・ミシェル

    47歳

  • EU委員長ウルズラ・フォンデアライエン

    64歳

アウトリーチ(招待国)の首脳

  • インドネシアジョコ・ウィドド

    61歳

  • 韓国ユン・ソンニョル(尹錫悦)

    62歳

  • ブラジルルーラ・ダシルバ

    77歳

  • インドナレンドラ・モディ

    72歳

  • オーストラリアアンソニー・アルバニージー

    60歳

G7広島サミット 主なテーマは?「首脳宣言」はどうなる?

G7サミットでは、国際社会に協調姿勢をアピールするため、例年、各国の合意のもと、議論した成果を「首脳宣言」としてとりまとめています。広島サミットでは、議長国の日本が、先に長野県軽井沢町で開かれた外相会合の共同声明などを踏まえて原案を作成し、首脳どうしの討議の内容を反映させながら各国と文言調整にあたります。

ロシアによるウクライナ侵攻への対応や中国を含めたインド太平洋地域の情勢、それに物価高騰が及ぼす世界経済への影響などをめぐり、どのような内容が盛り込まれるかが焦点となります。

一方、サミットでは、議長国の意向で特定のテーマを取り上げた複数の成果文書が発表されるのが慣例です。去年、ドイツで開かれたサミットでは「ウクライナ支援」や「食料安全保障」に関する文書がまとめられました。被爆地・広島で開かれる今回は、岸田総理大臣が核廃絶に向けた強いメッセージを打ち出したいとしていて「首脳宣言」とは別に核軍縮・不拡散に関する文書を発表することが検討されています。

広島サミットでの主なテーマは次の通りです。

ウクライナ情勢

ウクライナ東部での激戦

G7=主要7か国は去年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、結束して、ロシアに制裁を科すとともに、ウクライナへの支援を行ってきました。ウクライナ情勢は広島サミットの主要な議題と位置づけられ、初日の19日にゼレンスキー大統領もオンラインで参加し意見が交わされます。そして、議論の成果は、首脳宣言と、それとは別に発表する声明にも盛り込む方向で調整が進められています。

ロシア プーチン大統領

成果文書にはG7としてロシアによる侵攻は明らかな国際法違反だと強く非難するとともに、核兵器の使用や威嚇は決して認めず、軍の即時かつ無条件での撤退を求めることが盛り込まれる見通しです。その上で、対ロ制裁とウクライナ支援を継続し、第三国に対しロシアへの武器の供給などを止めることや制裁を逃れる動きへの対応も明記する方向です。

さらに、深刻な打撃を受けているウクライナの社会経済インフラなどの復興を支援していく姿勢も強調するものとみられます。サミットを前に岸田総理大臣はNHKのインタビューで「力による一方的な現状変更を許してはならない。核兵器による威嚇、ましてや使用は許してはならない。こうしたことを訴え、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していくG7の強い思いを発信するサミットにしたい」と述べていて、国際社会に対してどのようなメッセージを発信するのか注目されます。

中国への対応 覇権主義に繰り返し懸念表明

広島サミットでは中国への対応も主要な議題のひとつとなります。経済成長を背景に軍事力を増大させ、覇権主義的な動きを強める中国に対し、G7各国はこれまで繰り返し懸念を表明し、国際社会の一員として責任ある行動をとるよう求めてきました。

G7外相会議(2023年4月)

広島サミットに先立って先月開かれた外相会合の共同声明では、中国について、東シナ海や南シナ海の状況を深刻に懸念し、力や威圧による一方的な現状変更の試みに強く反対した上で、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調しています。また、新疆ウイグル自治区や香港での人権侵害に懸念を表明したほか、大手製薬会社の日本人男性らが拘束されていることなどを念頭に領事関係に関するウィーン条約に従って行動するよう求めました。さらに、透明性を欠く形で核戦力を拡大させているとして、リスクを減らすためにも、アメリカとの対話に速やかに関与すべきだとしています。

一方、G7各国は中国とは経済的な結びつきも踏まえ、決定的な対立は避けたいとしていて、サミットでは対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築し、気候変動対策など国際社会が直面する課題に共に取り組む必要があるという認識を共有する見通しです。日本としてはG7の議長国として、またアジア唯一のメンバーとして、中国をめぐる議論を主導し、首脳宣言に成果を盛り込みたい考えです。

北朝鮮への対応

広島サミットでは核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応をめぐっても意見が交わされる見通しです。北朝鮮は去年1年間で弾道ミサイルなどを過去最多となる37回発射し、ことしに入ってからもこれまでに12回発射を行っています。

こうした中、先月開かれたG7の外相会合では、前例のない頻度で繰り返されるミサイル発射を強く非難するとともに、国連安全保障理事会の決議に沿った北朝鮮の完全な非核化に向けて関与していくことで一致しました。また、北朝鮮に対して日本やアメリカなどからの対話の申し出に応じるよう求め、国際社会が連携してサイバー攻撃などに対応することも確認しました。

これを踏まえ、日本はG7の議長国として、またアジア唯一のメンバーとして広島サミットで北朝鮮への対応をめぐる議論を主導し、結束して対応する強いメッセージを打ち出したい考えです。

一方、サミットにあわせて、岸田総理大臣とアメリカのバイデン大統領、韓国のユン・ソンニョル大統領による日米韓3か国の首脳会談も予定されています。日韓関係の改善に前向きなユン大統領の就任以降、日米韓3か国は、安全保障分野での協力強化に向けた議論を進めています。具体的には北朝鮮のミサイル発射に関するデータを即時に共有することやミサイル防衛訓練などの定例化が検討されていて、こうした議論に進展があるかも注目されます。

核軍縮・不拡散 国際社会に強いメッセージを

G7広島サミットの開催にあたって岸田総理大臣は、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐって、核の威嚇を行っていることも踏まえ、核兵器による惨禍を2度と起こさないため、国際社会に強いメッセージを発信する場にしたいという認識を示してきました。さらにサミットの開催にあたり、被爆の実相を直接伝えたいとして、G7首脳による初めての原爆資料館訪問や被爆者との面会実現に向けて、最終調整を進めています。

被爆地・広島が地元の岸田総理大臣は、核廃絶を目指すことをライフワークに掲げ、具体的な考えや政策などをまとめた著書『核兵器のない世界へ』も出版しています。外務大臣時代の2016年には、オバマ大統領がアメリカの現職大統領として初めて広島を訪問した際には、その実現に尽力し、安倍総理大臣とともに原爆資料館などで被害の実態を説明しました。おととし10月の総理大臣就任後も、核廃絶や国際政治の専門家との定期的な勉強会を続けるなどしています。

また、去年8月9日に長崎を訪れた際には平和祈念式典に出席したあと、現職の総理大臣としては初めて、長崎市の原爆資料館を訪れました。同じ8月には、アメリカで開かれたNPT=核拡散防止条約の再検討会議で、日本の総理大臣として初めて演説し、核保有国に戦力の透明化を促すことなどを明記した、核廃絶への日本の行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を発表しました。

経済安全保障 安定供給へ向けて

G7広島サミットでは、電気自動車のバッテリーの材料となる重要鉱物のほか、半導体などの安定供給に向け、各国が連携してサプライチェーン=供給網をどう強化していくかといった「経済安全保障」も重要なテーマです。

アメリカと中国の覇権争いやロシアによるウクライナ侵攻などを背景に、去年、ドイツで開かれたG7サミットの首脳宣言に初めて「経済安全保障」の文言が盛り込まれ、今回のサミットでも重要テーマに位置づけられています。

今回のサミットでは、電気自動車のバッテリーの材料などとなる重要鉱物のほか、自動車やスマートフォンなどの生産に欠かせない半導体などのサプライチェーンの強じん化に向けてどのように体制づくりを進めるかや、重要鉱物の産出国でもある「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との協力をいかに深めるかなどが議論される見通しです。

また中国などを念頭に禁輸などの措置で他国の政策や意思決定に影響を与えようとする、いわゆる「経済的威圧」や自国の企業に比べて外国企業を不利な競争条件に置く「不公正な貿易措置」についてもG7で一致して対応にあたることを確認したいとしています。

議長国の日本としては、重要鉱物や半導体などのサプライチェーンは、民主主義や自由貿易体制といった価値観を共有する国々との協調なくして成り立たないとしていて、経済安全保障の強化を今回のサミットの成果にしたい考えです。

気候変動 各国の立場に隔たりも

G7広島サミットでは、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える目標の達成に向けて議論が行われる見通しですが、石炭火力発電の削減や電気自動車の導入目標などをめぐって各国の立場には隔たりがあります。

このうち石炭火力については、去年のG7サミットの首脳宣言で二酸化炭素の排出削減対策が取られていない石炭火力発電を段階的に廃止することが明記されましたが、具体的な廃止時期は盛り込まれませんでした。先月、札幌市で開かれた「G7気候・エネルギー・環境相会合」では、ヨーロッパなどが廃止時期を明記するよう求めたのに対して、日本はアジアの途上国などで石炭火力が利用されている現状を踏まえ反対の立場でした。日本としては、二酸化炭素を排出しないアンモニアを石炭などと混ぜて燃やす技術を実用化できれば、石炭火力の脱炭素化を進められるとしています。ただ、アンモニアの活用については、G7の一部の国から石炭火力の延命策だとして批判する声もあり、今回のサミットで各国の理解がどこまで得られるかが注目されます。

また、G7各国の間では、自動車の脱炭素化に向けた主張にも隔たりがあります。欧米の国々は電気自動車の導入目標を定めるべきと主張しているのに対して、ハイブリッド車が多い日本は慎重な考えです。このため日本としては、「G7気候・エネルギー・環境相会合」での合意に沿って、エンジン車やハイブリッド車も含む各国の保有台数をベースに二酸化炭素の排出削減目標を設定する方向で、合意を目指すことにしています。

このほか、太陽光や洋上風力など再生可能エネルギーの導入拡大に向けても次世代の技術開発や投資を加速させることを首脳宣言に明記する方向で調整が進められています。

エネルギー問題 安定供給と脱炭素をどう両立?

G7広島サミットでは、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化するなか、エネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現をどう両立させるかも焦点となっています。

ロシアの液化天然ガス施設

ウクライナ侵攻のあとG7各国などはロシアへの経済制裁に踏み切りましたが、ロシアが原油や天然ガスの供給を絞り込んだことなどから、エネルギー価格は上昇しました。なかでもLNG=液化天然ガスの獲得をめぐる競争は世界的に激しくなり、日本は火力発電の主な燃料としていることから、電気料金が高騰するなど、私たちの暮らしにも影響が及んでいます。

こうしたなか今回のサミットでは、各国が掲げる脱炭素の目標を実現しながら、どのように資源開発を進め、エネルギーを安定的に供給していくかなどが議論される見通しです。一方、原子力発電については、日本のほかアメリカやフランスなどは、脱炭素やエネルギー確保の観点から活用していく立場ですが、ドイツやイタリアは“脱原発”を実現させ、再生可能エネルギーのさらなる拡大を目指しています。

議長国の日本としては、原発を推進する国々との間で、次世代型の原子炉の研究開発や人材の育成などで協力を確認したい考えですが、立場の違いを乗り越えどのようなメッセージを打ち出せるかが注目されます。さらに日本は、東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画についても、工事の進捗や放出の方法などを説明し、各国の理解を得たい考えです。

食料安全保障 供給不安・価格高騰への対応

ロシアによるウクライナ侵攻で世界は食料の供給不安や価格が高騰する事態に直面しています。このため今回のサミットでは、農業生産の拡大や途上国への支援など、食料安全保障もテーマとなる見通しです。

ウクライナでの小麦の収穫

FAO=国連食糧農業機関は世界の食料価格を指数として発表していますが、2022年の平均は143.7ポイントと、前の年を18ポイント上回り、3年連続で上昇しました。コロナ禍からの経済活動の正常化が進んだほか、ウクライナ侵攻の影響などで小麦やとうもろこしといった穀物、それにパーム油などの価格が高騰したためで、途上国などでは必要な穀物や肥料を調達できなくなるなど、食料危機への懸念も高まっています。

こうしたなか開かれる今回のサミットでは、最新技術を取り入れ、持続可能な形で農業生産を拡大するための対応策やグローバル・サウスと呼ばれる途上国や新興国に対する農業支援などについて議論が行われる見通しです。日本は、食料危機に直面している国も多いグローバル・サウスの国々と食料安全保障の分野で連携強化を図りたい考えで、どのような成果が打ち出せるか注目されます。

国際保健 新型コロナの大流行で大きな課題に

「国際保健」の分野は、新型コロナの世界的大流行を背景に、大きな課題として認識されるようになり、今回のサミットでもテーマの1つとして議論されます。

岸田総理大臣は、先月開かれた国際会議で基調講演し、今回のサミットでは▼医薬品の迅速な研究開発や公平なアクセスの確保を可能にする仕組みづくりに加え▼将来の感染症危機に備えた国際的な体制強化のあり方などについて各国との議論を深めたいという考えを示しました。

そして、今月中旬、長崎市で開かれたG7保健相会合の共同声明には新型コロナ対応では、途上国にワクチンが届かないという課題に直面したとして、将来の危機に備え、ワクチンや治療薬、検査キットなどが公平で速やかに広く行き渡るよう取り組みを進めていくことが盛り込まれました。

また、持続可能な資金調達が極めて重要だとして、去年、世界銀行に設立された「パンデミック基金」を有効に運用できるよう、G7だけでなく、すべての国に対し、財政的、政治的支援を強化するとの約束を求めるとしています。

さらに、すべての人に、質の高い保健・医療サービスを提供する「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」を2030年までに実現するため、新しい行動計画を策定し、取り組んでいくとしています。政府は、これをもとに議論を進めることにしていて、岸田総理大臣としては、地球規模課題を取り上げることで新興国や途上国との連携強化にもつなげたい考えです。

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デジタルへの対応 生成AIのあり方も議論

ChatGPTなど生成AIの開発や利用が急拡大するなか、G7広島サミットでは、活用や規制のあり方などが議論される見通しです。生成AIの活用によって、文書や画像の作成、それに翻訳などの業務の省力化が期待される一方、誤った内容を回答する可能性や、著作権を侵害するおそれなどが指摘されています。

このため各国政府は対応に乗り出していて、アメリカ政府は、マイクロソフトやグーグルの親会社のアルファベット、それにChatGPTを開発したオープンAIなどのCEOに対して、AIの潜在的な危険から社会を守るよう要請しました。また、ヨーロッパではイタリア政府が、膨大な個人データの収集などが法律に違反している疑いがあるとして一時的に使用を禁止したほか、フランスでも複数の苦情がデータ保護当局に申し立てられ、当局が調査を行っていると伝えられています。議長国の日本は、企業の研究開発を重視し、法的な規制には慎重な姿勢で、各国の立場を尊重しながら「信頼できるAI」の普及に向けた議論をリードしたい考えです。

このほか、「DFFT」と呼ばれる信頼性のあるデータを国境を越えて流通させるための枠組みづくりがどこまで進むかも注目されています。ただこのテーマについて各国の立場は異なり、アメリカが経済成長やイノベーションを促すためデータの自由なやり取りを重視しているのに対して、EUは巨大IT企業によって域内の市場が支配されることを警戒しているほか、プライバシーの保護を重視する姿勢を打ち出しています。日本としては、それぞれの立場を踏まえ、国際的なデータのやり取りでの障壁を取り除き、新しい制度づくりに道筋をつけ、サミットの成果にしたい考えです。

【全文】岸田総理インタビュー G7広島サミットに向け 戦争被爆国として

岸田総理大臣はG7広島サミットが5月19日に開幕するのを前に、NHKのインタビューに応じ、サミットについて、ロシアのウクライナ侵攻を許さない立場や、法の支配に基づく国際秩序の重要性を確認し、対ロ制裁の実効性を高めたいという意向を示しました。また、被爆地での開催を通じ、核廃絶の機運を高める転機にしたいなどと決意を強調しました。
インタビューの全文を掲載します。

世界情勢への認識は

Q.いよいよ、広島でのG7サミットとなるが、ウクライナや中国の主張をどう見ているか。また北朝鮮の核・ミサイル開発は止まることを知らず日本国民も不安になっている。いまの世界情勢をどう見ているか。

A.ロシア、北朝鮮をはじめ、さまざまな動きがある。激動の国際社会を見る中では、いままでわれわれが常識だと思っていた国際的な秩序が大きく揺るがされている。今後の状況をしっかり注視していかなくてはならないが、やはり国際社会のありようは歴史的な転換期を迎えているのではないか。またエネルギーをはじめ、食料など、国際的な規模の大きな危機にどう対処していくのかが迫られ、大事な時期にあるのではないか。その中で行われるサミットに大変、緊張感を感じているところだ。

広島でのサミットで何を目指す

Q.総理自身、広島が地元だ。また、これまでの経緯を見ても2016年に総理が外務大臣時代、広島でG7外相会合を開き、当時のケリー国務長官が広島に、その後オバマ大統領の歴史的な訪問と続いた。そうしたことなどがあってのことしの広島でのサミットだが何を目指していくのか。議長としての考えを聞かせてもらいたい。

A.今回、サミットを広島で開催するわけだが、かつて原爆によって壊滅的な被害を受け、その後、力強く復興を遂げた。そしていま世界に向けて平和のメッセージを発している、この広島という場所に、世界のリーダーやG7のリーダーたちが集まる、平和や安定について議論する。この意味は大変大きいと思っている。激動する国際社会が歴史的な転換期を迎えている中で、広島ほど、こうした議論をするのにふさわしい都市はほかにないと思っている。

ウクライナ情勢への対応は

Q.国際社会の激しい転換期という話があったが、続いてはウクライナ情勢にどう対応していくのかという点。総理は3月には首都キーウも訪問したが、今回のG7の場でロシア軍の即時撤退を強く求める考えか。G7としては、どんなメッセージを出そうというのか。

A.今、激動する国際社会の中において「領土や主権の一体性を守る」という国連憲章に基づく極めて基本的な原則、これは守っていかなければならない。こういった思いをどれだけ多くの国と共有できるか。これが、今回の侵略をやめさせる上でも大きなポイントになってくるんではないか。法の支配に基づく国際秩序。国連憲章をはじめとする国際法に基づいて国際社会が活動していく。これはやはり弱い立場、脆弱な国にとってこそ大切なルールであると思っている。これを守っていこうということについては、どんな立場の国であっても共有できるのではないかということを考えている。今回のサミットでは、まずは力による一方的な現状変更は許してはならない。また、ロシアが行っているような核兵器による威嚇、ましてや使用は許してはならない。こうしたことを訴えるとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序をこれからも維持し、強化していく。こうしたG7の強い思いを世界に発信していくサミットにしたいと思っている。

Q.まさに現在、ウクライナの反転攻勢はどうなるのか、世界中が見守っている。大変重要な時期になると思うが、ウクライナへの具体的な支援については、G7でどのような話し合いを行い、とりまとめていこうと考えているか。

A.ウクライナ情勢については、長期化が懸念されている。やはりG7としては、そうした中だからこそ改めてウクライナに対する強い連帯を一致して示さなければならないと思っている。厳しい対ロ制裁と力強いウクライナ支援。これをこれからも継続していく。こうしたメッセージを発していくことが大事だと思っている。

Q.支援の話があったが、ウクライナは武器を支援してほしいという声が強い。一方で日本には出来ることと出来ないことがある。従来の枠を越えて日本が防衛装備品の提供を行う可能性は今後、出てくるか。

A.日本はこれまでもG7各国とも連携しながらウクライナ支援を行ってきた。例えば厳しい冬を乗り越えるための発電施設など、さまざまな人道的支援、また財政的な支援など日本らしい支援を行ってきた。その上で日本として今後ウクライナのニーズもしっかり踏まえながらどんな支援を考えていかなかればならないのかという中で防衛装備品についても、さまざまな議論がある。昨年末にまとめられた国家安全保障戦略の中でも、こうした装備品の支援という部分は、日本にとって好ましい国際環境を作り出すためにも、国際法に違反して侵略を受けたような国に対して支援をするという観点においても重要な政策的な手段になりうるという整理をされている。こういった考え方に基づいて、今、与党において議論を始めているという段階だ。丁寧に議論を行った上で、この部分については、日本としての考えを整理しなければならないと思っている。ただ、今の現状、日本に期待されるさまざまな支援は具体的にたくさんあるわけだから、日本としてできる限りのウクライナ支援は行っていきたいと思っている。

Q.ウクライナ侵攻以後、まもなく1年3か月、日本もG7とともに対ロ制裁に積極的に参加してきている。この制裁の効果どう考えるか。

A.おっしゃるように日本もG7との枠組みを通じて協調して制裁を行ってきた。政策の効果についていろいろな議論はあるが、例えばロシアにおいては、輸入依存度の高い自動車産業で急速に活動が低下しており、半導体不足で武器の製造が滞っているなど、さまざまな制裁は一定の効果は出ていると認識をしている。ただその中で迂回をしたり制裁逃れをしているといった指摘もある。第三国による制裁逃れ、迂回の動きなどに対しては、今後ともG7においても連携して実態を把握した上で、第三国に対する働きかけを行うことによって制裁の実効性を高めていく。こうした努力は行わなければならないと思っている。

東アジア情勢など

Q.続いて東アジア情勢について。日本はG7の7か国のうちでアジア唯一のメンバーで、アジア代表になると思うが、総理は現在のこの日本を取り巻く東アジアの情勢について、どのような認識を持っているか。

A.今回のG7においては、アジア、あるいはインド太平洋地域に対し、欧米各国にしっかりと関心を持ち、関わってもらう。こうした手がかりにもしたいと思っている。今、東アジア情勢については、力による一方的な現状変更の試みが東シナ海あるいは南シナ海といった地域でも起きている。ウクライナにおける侵略行動、こうした力による一方的な現状変更は、決してヨーロッパだけの話ではなく、東アジアにおいても真剣に考えなければいけない重要な課題だ。事実、東シナ海、南シナ海などにおいては、力による一方的な現状変更が行われている。さらには北朝鮮による核・ミサイル開発もどんどんと進んでいる。この東アジアの情勢、まさに戦後最も複雑で厳しい安全保障環境にあると言われている。そうした厳しい状況にあるという認識を持っている。

Q.指摘のように今回のサミットで議論は、日本で行われるということで、中国をかなり意識したものになるんではないかと私たちは考えているが、今回のG7で議長としてとり上げる中国の課題は具体的に何か。

A.中国は国際社会において経済をはじめ、さまざまな分野で大きな存在感を示している。こうした中国に対し、まずわが国としては中国との関係において、さまざまな可能性もある一方で、課題や懸念が存在する。そういった課題や懸念に対して、言うべき、主張すべきことはしっかり主張し、そして中国に対し国際社会の一員として責任をしっかり果たしてもらう。しかし一方で、対話は大事にしながら気候変動をはじめとする、協力すべき課題については、協力をしていく。こうした建設的で安定的な関係を中国と双方の努力によって築いていきたい。このように日本は思っているわけだが、こうした考え方については、これまでもG7各国とすり合わせを行い、中国に対して主張すべきことはしっかり主張する、懸念、課題についてわれわれの思いはしっかり伝えていく。そうしたうえで中国に責任ある国際社会の一員として振る舞ってもらう。こういった思いは伝えていこう、一致して伝えていこうという思いについては、これまでも確認をしている。ぜひ今回のサミットにおいても中国に対して、こうしたわれわれの考えている課題や懸念については率直に伝え、そして国際社会の一員としての責任を果たしてもらう。こうしたメッセージをしっかり伝えていくことが重要であると思っている。私も去年11月の日中首脳会談で、そういった思いを習近平国家主席に直接伝えたが、G7のサミットにおいてもG7各国とも連携しながら一致したメッセージを発していきたいと考えている。

台湾情勢は

Q.台湾をめぐる情勢については中国がどんどん強硬になってくる。軍事力も見せながらということになっているが、台湾をめぐって戦争をさせない。それから戦争に巻き込まれないということが日本にとっても世界にとっても大事な点だと思うが、この点についてはG7の中で議論をどうリードし、どんなメッセージを出していきたいと考えているのか。

A.台湾海峡の平和と安定は、わが国のみならず、地域や国際社会全体の平和と安定にとっての重要な課題であると思っている。そしてわが国のこれまでの一貫した立場として、台湾の平和と安定については、対話により平和的に解決されるべきでというものだ。こうした考え方については、従来、習近平国家主席をはじめ、各レベルで中国に伝えているわけだが、こうした思いはG7各国ともこれまでさまざまな形で共有してきた。こういったわが国の考え方は日米首脳会談をはじめ、各国との二国間会談においてもしっかり伝え、そしてG7として、この思いを一致させるよう努力をしてきた。今回も台湾に関しても、そういった思いをG7として発するメッセージを出していきたいと考えている。

G7内の対中温度差への対応は

Q.中国に関して議長としてG7の議論をまとめていこうと考えておられるが、G7の中で、日本とアメリカ、一方、フランスを中心にヨーロッパの中で、中国に対する姿勢や問題意識に温度差があるのではないかという指摘もある。これをどう見ていて、どのように議論をリードしていこうと考えているか。

A.おっしゃるようにG7各国それぞれ地政学的にも置かれている立場が違うので、中国との間において、具体的な関係の違いは存在するとは思うが、その中にあってもG7として一致したメッセージを出していこうという努力をこれまでも続けてきた。4月、軽井沢で行われたG7外相会合でも、中国に対して懸念や課題を率直に伝えるとともに、国際社会において責任を果たしてもらう。こうしたメッセージを発していくことで一致をした。中国との課題や懸案についても一致して対応し、連携をしていく。こういった確認をG7外相会合でも行ったところだが、今回のサミットにおいても、その基本的な考え方に基づいて、中国に対してメッセージを発していくことになると考えている。

核兵器のない世界の実現は

Q.被爆地でのサミットだけに、核兵器をめぐる対応は最大の焦点だ。総理は広島が地元で、小さなころはおばあさん、親戚のおじさんの被爆の記憶もあると自身の著書にも書かれている。核軍縮、核不拡散はライフワークだと言っているが、なかなか理想と現実は厳しいところがあるとも思う。世界、そして東アジアでの核をめぐる現状認識や問題意識はどういったものか。

A.まず広島・長崎に原爆が投下されてから今年で78年目になるわけだが、その間、多くの先人たちが核兵器のない世界という理想に向けて、さまざまな努力をしてきた。しかしながら、現在、この10年ほどの動きを振り返ったときに、核兵器のない世界を目指すという機運がどんどん後退している。昨年もNPT(核拡散防止条約)運用検討会議という核軍縮・不拡散で大変重要な、5年に一度開催される会議も開催され、私も日本の総理大臣として初めて出席をした。しかしその場で、残念ながら一致した共同文書を取りまとめるというところには至らなかった。これは2回連続のことだ。こうした状況を見ても、世界が軍縮・不拡散という課題において分裂している。さらに今ロシアによる核の威嚇が懸念されている。あるいは北朝鮮のミサイル・核開発が懸念されている。こうしたさまざまな現実をみても、核兵器のない世界という理想に向けての機運が後退していることを強く心配している。しかしそういったときだからこそ、被爆地・広島で開催されるG7サミットにおいて、今一度核兵器のない世界を目指そうという機運を盛り上げる転機にしたいと思っている。

Q.現状の世界の核をめぐる状況。ロシアのプーチン大統領もそうだし、北朝鮮もそうだが、中国の核の不透明性っていうところもあると思う。広島が地元だけに、それをご覧になると残念だなという気持ちは強いか。

A.広島の人間としては、今の現状を本当に残念に思っている。しかし、それだけ厳しい現実を前にして、ここであきらめるわけにはいかない。そして今、現実に広島でサミットを開催するということだから、このサミットにおいて今一度、国際社会で理想に向けて、勇気をもって努力をしようという雰囲気を作っていく。こうした転機を作りたいという思いはより強く、広島のみならず、核兵器のない世界を願う多くの人たちにおいて、強い思いなのではないか。こんなことを考えている。

Q.G7の中にはアメリカ、フランス、イギリスという核保有国がある。この中でサミットの議長として核廃絶に向けてどういうメッセージを出し、どういう局面にしたいという思いか。

A.まず大きなメッセージとして、今一度、核兵器のない世界という理想に向けて努力をしようという思いを発信したいと思う。その理想に向けて現実をどう近づけていくのか。これを考えるのが外交であり、政治だと思っている。現実と理想を結びつける道筋、ロードマップ。これを考えていかなければならないが、その点については、私は昨年のNPT運用検討会議に出席した際に、総会の演説をさせてもらい「ヒロシマ・アクションプラン」という考え方を明らかにした。その中に5つ項目があるんだが、まず第1に核兵器不使用の歴史を継続しなければならないということ。2つ目として、核兵器の数を減らしていく努力。かつて冷戦期は莫大な核兵器があった。努力によって減らされてはきているものの、今でも1万発以上の多くの核兵器が世界に存在する。この核兵器を減らす努力を続けていかなければならない。その際に、詳しく説明は省くが、CTBT=包括的核実験禁止条約などといった核軍縮の枠組みの中で議論が行われてきた。これを今一度復活させようというような思い。そして、こうした努力の基盤になるのはお互いの信頼関係であると。信頼関係を支えるのは、核を持っている国の透明性。自分たちはどれだけの核兵器を持っているのか。これを明らかにするところから始めようではないかとか、こういった具体的な提案を私はさせていただいた。こういった考え方に基づいて、具体的な取り組みを今一度始めようという呼びかけをしたいと私は思っているところだ。

核兵器禁止条約に日本は

Q.理想と現実の間で日本はNPTを中心に核廃絶、核軍縮を実現していこうということだと思うが、一方で核兵器禁止条約が立ち上がった。この中で世界の唯一の戦争被爆国である日本が、なぜ条約に参加しないんだという批判の声もある。これについてはどう考えているか。

A.私は本の中でも書かせていただいているが、核兵器禁止条約というのは、核兵器のない理想に向けて、まさに出口にあたる大変重要な条約だと思う。ああいった条約を作り、そして法的拘束力を作ることによって、最後、理想にたどり着くんだと思う。ただ、その核兵器禁止条約には、核兵器国は今は1国も参加していない。これが厳しい現実だ。私は外務大臣を4年8か月務めている中で、核軍縮・不拡散の多くの会議に出席し、長年、議論に関わってきた経験の中で、やはり現実を変えるには、核を持っている国、核保有国が変わらなければ現実は変わらない。これが厳しい現実でもあるということも嫌というほど感じてきた。だからこの核兵器禁止条約は、理想に向けての出口にあたる重要な条約だと思うが、核兵器国を、この核兵器禁止条約に参加させてこそ、大きな目標にたどり着くんだと思っている。核兵器国は今、厳しい現実の中、それぞれの安全保障の考え方に基づき、それぞれの核についての考え方を持っている。そして、日本もその厳しい現実の中で、核抑止をはじめとする様々な枠組みの中に存在しているわけだが、この厳しい現実を、さっき言った理想へどう結びつけるかを考えなければいけないわけだ。そのために今、私も「ヒロシマ・アクションプラン」という提案をさせていただいたが、そういった枠組みに参加してくれる国を1国でも増やしていく。こうした努力が大事だと思っている。まずはG7から始め、G7以外にも、ロシア、中国、この核兵器国がある。そして現実は、そのさらに外側に核兵器を現実に持っている国が存在している。これが厳しい現実なので、こういった国々をいかに巻き込んでいけるか。これがこれからの取り組みの大変重要なポイントになると考えている。


Q.中長期的には核兵器禁止条約にオブザーバー参加という道は、日本にはあるかもしれないと考えないか。

A.これは今言ったロードマップをどうか描くか。その中で唯一の戦争被爆国として、核兵器国を多く巻き込むために、どこでどういう役割を果たすのかだと思う。まずは日本にとって唯一の同盟国であるアメリカとの信頼関係のもとに、核兵器のない世界を目指す、こういった方向性を確認するところから始めて、G7、さらには中ロを巻き込んで、そういった取り組みを進めていかなければならないと思う。日本が1国でこの核禁条約に関わる。これはひとつの考え方だと思うんだが、それで結局、核兵器国が動かなければ、現実は変わらない。日本としての具体的な役割を果たすためにはどうあるべきか。これを今後とも考えていきたい。

【詳しく】アメリカ バイデン大統領 G7で広島へ 狙いは?

G7広島サミットに出席するため、日本を訪れるアメリカのバイデン大統領。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア、影響力を拡大する中国に、G7としてどう対応していくのか。

そして、アメリカは日本に何を期待し、日米韓3か国関係の将来は?

バイデン政権の元高官に、広島訪問にあたってのアメリカの狙いについて聞きました。

(聞き手:ワシントン支局長 高木優)

バイデン大統領のG7でのねらいは?

話を聞いたのは、バイデン大統領のもと、去年までホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議で東アジア部長を務めたクリストファー・ジョンストン氏です。

NSC=国家安全保障会議 元東アジア部長 クリストファー・ジョンストン氏

ジョンストン氏は今回のG7サミットについて「バイデン大統領は、G7という枠組みの復活、インド太平洋地域への脚光、そして、広島という特別な場所での開催、この3つの意味で重要だとみている」とした上で、それぞれの意味について次のように述べました。

※以下、ジョンストン氏の話

G7という枠組みの復活

G7は世界の主要な経済大国のあいだで政策を調整する重要な枠組みとして復活しました。つい最近まで、G7は廃れ行き、G20のような枠組みに取って代わられるという見方がありました。


前回のG7サミット(ドイツ エルマウ・2022年6月)

ところがもはやそうした見方はありません。ロシアがウクライナに軍事侵攻したことで、この見方は完全に逆転し、極めて重要な国際問題について政策を調整する、最重要の枠組みとして復活したのです。

インド太平洋地域への脚光

今回は日本が指導力を発揮でき、かつインド太平洋地域に焦点を当てることが可能な7年に1度の機会です。

そしてその最大のテーマが中国です。

バイデン大統領と岸田総理大臣双方にとって、今回は、国益優先で「法に基づく秩序」を変えようという中国に焦点を当て、そうした行動を押し戻し“経済的威圧”と呼ばれる行為などへの対策を調整するうえで大事な機会となります。

広島という特別な場所での開催

初めて原子爆弾が使われた場所である広島でことし、G7サミットを開くということ自体に大きな意義があると思います。

ロシアのプーチン大統領が核兵器使用の可能性をちらつかせ、朝鮮半島情勢が懸念されるさなかにあるからこそ、核の使用がいかに危険で、核のない世界に向けて長期的なビジョンを維持していくことがいかに重要かという、非常に力強いメッセージを発信することになります。

G7とG20の違いとは?

G20の課題はロシアや中国がメンバー国だということです。

ロシアがウクライナに侵攻した今日において、G20が効果的に機能することは非常に難しくなっています。


一方で、私がオバマ政権時にホワイトハウスにいたときは、正直に言って政権内でG7の意味合いが非常に低下していました。

オバマ大統領自身、G7に熱心ではありませんでした。彼はG7はもはや過去の枠組みであり、G20こそが今、そして未来に向けた枠組みだと捉えていました。いま、バイデン政権はそれとまったく逆の考えを持っています。

広島でのG7 バイデン政権のメッセージは?

危険な核の使用に対してG7が強いメッセージを発信することは確実だと思います。

2016年に広島を訪問したオバマ大統領は当時、「核なき世界」の実現を掲げていました。しかし不幸なことに、世界はそこから遠ざかってしまいました。

広島を訪れ 献花をするオバマ元大統領(2016年)

その後、北朝鮮は核兵器開発を続け、中国は核兵器の近代化をはかり、ロシアはヨーロッパで核使用の可能性をちらつかせています。

しかし、私たちが「核なき世界」の実現というビジョンを持ち続け、あきらめないことは重要です。だからこそ、広島で開かれる今回のG7サミットは、重い意味を持ちます。

「グローバル・サウス」への対応は?

G7や先進国のあいだでは、ウクライナでの戦争やロシアへの対応で非常に強い結束がありますが、グローバル・サウス(アジア、アフリカ、中南米などの新興国や途上国)のあいだではそこまでの合意がありません。

グローバル・サウスの中には西側諸国のやろうとしていることは偽善だと見る国もあります。

彼らは、(アメリカなどの軍事侵攻によって始まった)イラク戦争のことを覚えており、ウクライナへの軍事侵攻をめぐって、アメリカなどがどうやったら「法に基づく秩序」などと言えるのか、といぶかしんでいます。

中国やロシアはこの力学を利用して自分たちの利益を拡大しようと動いています。それは東南アジアだけでなく、アフリカやラテンアメリカなどいたるところで起きているのです。

ですから、今回のG7では「法に基づく秩序」が途上国の経済にどんな利益をもたらすのか、という前向きなビジョンを発展させるため、各国が協力すべきです。

それは投資、気候変動対策での協力、グローバルなレベルでの健康といった領域を通じてやるべきです。

グローバル・サウスの繁栄にG7がどのように貢献できるのかを示すことがとても重要になります。岸田総理大臣はこのことにおいて力強い発信力を持っていると思います。

G7のメンバー国であるフランスのマクロン大統領が4月、台湾情勢をめぐってヨーロッパはアメリカと中国の対立から一定の距離を保つべきだという発言をして波紋を呼びました。

マクロン発言 バイデン政権の受け止めは?

マクロン大統領の発言は、実際にはほかのヨーロッパの指導者の考えからは、ずれたものだと思います。

フランス マクロン大統領

イギリスやドイツの指導者の中国をめぐる公の場での発言はまったく異なっています。現実には、中国の振る舞いに対する懸念という点において、インド太平洋地域とアメリカ、ヨーロッパのあいだの認識はますます一体化しています。

中国の習近平国家主席が「無制限のパートナーシップ」と称してロシアのプーチン大統領に同調する決断をしたことや、ことし前半にプーチン大統領に会うためにモスクワを訪ねたことは、非常にマイナスのメッセージを送り、アメリカ、ヨーロッパ、インド太平洋地域が結束することを助けました。

モスクワを訪れプーチン大統領と会談をする習近平国家主席(2023年3月)

中国に対する見方は当然、国によって多少の違いはあります。しかし、サミットの首脳宣言では、台湾海峡をめぐる問題に加え、南シナ海、東シナ海の問題についても、とても力強いことばが並ぶはずです。

中国による“経済的威圧”に対しても、強いメッセージが出されると思います。

バイデン政権は台湾海峡情勢をどう見ている?

切迫したものだと見ています。ただ、良いニュースはアメリカも中国も、台湾をめぐる衝突を望んでいないということです。

中国が台湾統一に向けた、確固たる工程表を持っているとは思いません。中国が軍事的な準備を進めていることは間違いありませんが、中国がいかなる軍事的衝突であってもリスクが伴うことをよく認識していることも確かです。

中国軍による台湾周辺での軍事演習(2022年公開)

だからこそ、抑止力が衝突を回避するうえで、非常に有効な方法となります。

アメリカがインド太平洋における安全保障上の態勢を強化し、日本が防衛費を増額して反撃能力などの新しい能力の獲得に動き、オーストラリアやフィリピンといった友好国や近隣国が行動を起こしているのは、そのためです。

これらすべてのことが抑止力を高め、中国が軍事力を行使した場合に支払うことになる代償を高めることにつながるわけです。

最終的にはわれわれは安定を保ち最悪の結果を回避できると、私は楽観的に見ています。

中国への対抗 日本に望むことは?

第一にわれわれ日米両国は、同盟関係を継続して深化させ一段と統合された関係へと発展させていくべきです。

日米首脳会談(ワシントン・2023年1月)

私はまさにその方向に両国は動いていると思います。日本が防衛費を増額し反撃能力やサイバーへの対処能力などを備えることにしたことは、同盟関係をより深化させる上での扉を開きました。

地域のほかのパートナー国家との関係を強化することも必要です。

日本はオーストラリアと速やかに安全保障面での関係を強化しました。これは大変、歓迎されています。日米豪3か国は多くの共同作業や演習に一致して取り組むことができるでしょう。

安全保障協力に関する共同宣言を発表する岸田首相とオーストラリア アルバニージー首相(2022年10月)

そして、日米韓3か国は非常に重要な関係の枠組みです。

日本と韓国がミサイルの脅威に関するデータの共有に踏み出したことは非常に心強く、こうした動きを加速させるべきです。

日本は地域での経済援助戦略を実行に移しました。そしていま、防衛装備品を東南アジアなどの友好国に移転するという新しい手段も持つようになりました。

日本は、共通の価値観を持つ国々のあいだのネットワークを構築する上でも大事な役割を果たせます。そのことが集団的な抑止力の強化につながるのです。

日本との関係改善に踏み出した韓国 どう評価?

韓国のユン大統領は、正しいことをするために相当な政治的なリスクを負いました。そのことは称賛に値します。

韓国 ユンソンニョル(尹錫悦)大統領

日本の植民地時代の「徴用」の問題を解決しようという行動が、3月の日本訪問を実現させました。そして岸田総理大臣の韓国訪問もとても前向きなものでした。

ユン大統領の決断と、それに対する岸田総理大臣の対応によって、今まさに関係改善のモメンタム(機運)が醸成されました。私が期待するのは、このモメンタムを加速させることです。

日米韓という3か国は、地域で最も重要なグループです。

この3か国のあいだにはたくさんの共通利益があります。それは北朝鮮問題だけでなく、インド太平洋地域における経済安全保障分野での協力しかりです。私たちは多くのことに一緒に取り組めます。

日米韓3か国の関係は格上げされる?

経済安全保障など多くの分野で、日米韓3か国の協力は深まっていくと思います。

3か国の対話がより制度化されていくと見ています。防衛分野で言えば、拡大軍事演習やミサイルの脅威に対する情報共有です。そしてインド太平洋地域をめぐる対話、そして戦略の調整といったこともあるでしょう。

日米韓による共同訓練(2023年4月)

もし、こうした分野での3か国の関係を制度化できれば、この力強い協力の枠組みを後戻りのできない永続的なものにすることができます。

アメリカの核戦力を含む抑止力で同盟国を守る「拡大抑止」をめぐっては、日本と韓国のあいだで考え方に温度差があります。

「拡大抑止」でも日米韓3か国の関係はうまく機能する?

私は「拡大抑止」において3か国が対話を深めていく余地があると強く感じています。

確かに日本と韓国のあいだでは議論に性質の違いがあります。

韓国では核兵器をめぐって非常に深刻な議論があります。ユン大統領のワシントン訪問の際には、アメリカが戦略原子力潜水艦を韓国に派遣することや情報共有の枠組みを新たに設置することで合意があり、多少なりとも韓国での議論が前進しました。

これに対して日本での議論は性質が異なります。しかし、日本もアジア地域における核の脅威に懸念を抱いているという点では同じです。

「拡大抑止」やアメリカによる「核の傘」の信頼性への考え方において、日本と韓国のあいだには一定の共通点もあります。ですので、私は「拡大抑止」についても将来、日米韓3か国の防衛当局者が意見を交わす機会が訪れるものと確信しています。