あなたはネット上の「いい話」を信じますか? 美談に振り回されないSNSリテラシーを

SNSは世の中に十分に浸透し、ユーザー数の増加や投稿の量はかなり落ち着いてきた感がある。皆さんも、一時期のようにフェイスブックに毎日、友達リクエストが来たり、自分で小まめに投稿するようなことはなくなりつつあるのではないだろうか。

 しかし、サービス提供者側は、何とかしてサイトを活性化させ続けなければならない。そこで、投稿されている記事の見せ方を変えたり、繰り返し表示するなどの工夫を講じるようになる。

 同時に増えているのが広告表示であり、どこからか探し出されてきた「珍しい動画」へのリンクや、いわゆる「美談」系のコンテンツなどだ。

■美談を信じるのは「いい人でありたい」から? 

 先日、客先で雑談をしているとき、「最近の若者は」という類の話になった。その際に「でも、最近の女子高生は結構しっかりしているからね」といった話が出た。

 まあそうかもしれないなと思いつつ、筆者は、SNSで拡散していたある話を思い出した。電車のなかで女子高生がマナーの悪い大人の女性に対して正論をぶつけてやり込め、周りはスッキリした、といった話である。

 ネット上にはたまにこういう「いい話」「泣ける話」が現れ、拡散する。その女子高生の言動は確かに称賛に値するものであり、多くの肯定的なコメントが寄せられていた。しかし、「話ができすぎている」と感じた人も多かったのではないだろうか。ここで真偽のほどを問うつもりはないし、それを確かめるのは不可能だ。しかし、それを実話だと信じている人が大勢いるらしいことが筆者にとっては意外だった。

 どうでもよい内容や笑いを取る類のものは、どこの誰が書いたか分からない話でも「バカだね」「笑える」で済まされる。しかしこの手の、いわゆる「美談」のコンテンツへの反応は難しい。

 人間は誰しも、「いい人でありたい」「嫌われたくない」「性格が悪いと思われたくない」という気持ちを抱いている。だから、誰かがこんなに泣かせる行動をとった、いいことをした、といった話を聞かされると、「信じたい」「疑うのは性格が悪いと思われる」という心理が働く。結果的に「いいね! 」が押され、拡散してしまう。

 SNSを誰もが使うようになった結果、ユーザーの情報に対するリテラシーも様々だ。その人の性格もあると思うが、美談は無条件に信じてしまうという人がいてもおかしくない。

■美談を投稿する人の意図とは

 だが筆者は、現代のネット社会において美談に安易にコメントをしたり拡散に関わってしまうのは慎重になった方がいいと考えている。その手の話をもっと聞きたい、もっと人に伝えたいとアクションをしてしまう人は要注意だ。

現実問題として、なかには、そこを起点に他のアプリ連携を促し、個人情報をごっそり持っていくものもある。そういった明確な悪意がないとしても、投稿者は何らかの理由で情報の拡散を望んでいるわけだ。広告への誘導はもちろんのこと、注目を浴びたい、反応を楽しみたい、自己満足など様々である。

 本当の美談がないとは言わないが、ネット上の美談には創作がかなりの割合で混ざっている。美談には投稿者の何らかの意図があると考えたほうがよい。最近では、口の悪さや「壊れキャラ」が売りの芸能人たちが実は思いやりがあり、優しい人だった、などという美談が拡散し、本人たちが「事実無根だ」「営業妨害だ」と躍起になって否定したという話もあった。

 SNSはそもそも、ユーザー同士が繋がり、仲間同士がお互いのことを知るためのツールだった。だが、最近は第三者による情報操作の場になっていることを認識しておかなくてはならない。

 ビジネスの世界にいる人間でも、怪しげな情報を信じてしまう人は少なくない。また、有名経営者に関する「伝説」のような美談もよく耳にする。それを鵜呑みにして、あとあと恥ずかしいことにならないよう、リテラシーを磨いておきたいところだ。

■「ネットとテレビの融合」はこれでいいのか? 

 最近もう1つ気になるのが、テレビのニュースソースとしてネットの割合が高くなってきていることだ。

 SNSで流れていた情報や動画が、翌日の朝の情報番組やワイドショーなどに取り上げられることがよくある。ツイッターでつぶやかれているキーワードのランキングを見せ、それに対してコメントするようなコーナーも定着している。

 しかし、そこで取り上げられるものは、はっきり言ってたわいもない話がほとんどである。APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会談の集合写真が「スタートレック」に似ている、とか、不良グループの抗争の顛末など、そんなことまでネタにしているのだ。

 「ネットとテレビの融合」も結構だが、そもそも分かる人だけ分かってくれればよい、というネット上の情報交換の場の話を、公共放送の場で伝えるということに違和感を持つ人も多いのではないだろうか。

 フェイスブックは基本的に実名なので、情報の信頼性は高いかのような錯覚を受ける。しかし、決してそんなことはない。むしろ広告ビジネスとしての側面が強くなるに従い、巧妙なガセネタが増えてきていると言ってよいだろう。ネット普及期に言われたような「使う側の見る目、判断力」がますます問われるようになってきているのだ。

 メディアから得られる情報は、日々のビジネスの意思決定にも影響するし、顧客との雑談の材料にもなる。そこで恥をかいたり、品格を下げたりしないためにも、常に最新のメディアリテラシーを身につけておきたいものである。

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コメント: 1
  • #1

    七色仮面 (木曜日, 18 12月 2014 19:00)

    いい話で、悪徳商売しやがって、ふざけた会社ばかりだ。騙されないで下さい。