マスク製造を委託した下請け業者への発注の一部を不当に取り消したのは下請法違反に当たるとして、公正取引委員会は15日、紙パルプ加工品等製造販売大手の王子ネピア(東京都中央区)に再発防止を勧告した。
公取委によると、王子ネピアは下請け1社と2021年度で委託を終了することで合意し、1年間の発注書を交付した。だが、途中の21年12月に発注の一部取り消しを通告。当初の発注数量の約3割に当たる製品は、製造しても受け取らないとした。 下請けは既に製造に必要な不織布や内装袋などの資材や人員を手配していたが、王子ネピアはこの不利益分を負担しなかった。
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、マスクの発注の一部を一方的に取り消した行為が下請法違反にあたるとして、公正取引委員会は2024年2月15日、紙加工大手の王子ネピア(東京都中央区)に対し、勧告したと発表しました。下請事業者が発注取り消しで被った約2622万円の損失について、王子ネピアは2023年11月に支払ったといいます。
王子ネピアとは
王子ネピアの公式サイトよると、王子ネピアとは、王子ホールディングスに所属する企業で、1971年に王子製紙の全額出資により、
家庭紙の総販売会社として王子ティシュ販売を設立し、春日井工場(愛知県)で生産を開始したのが始まりです。
ティシュ、トイレットロール、赤ちゃん用品紙おむつなどを取り扱っています。
王子ネピアが下請法違反と認定された事実
公取委によると、王子ネピアは、自社が販売するマスクの製造を委託していた下請事業者に対し、2020年12月ごろ、2021年度分のマスク製造を委託する発注書面を下請け業者と交わしました。
王子ネピアは、発注書面で、月ごとの納品数量については相談の上で決定するとしており、毎月、マスクの品種別の納品数量を決定し、自社が納品を希望する月の約半月前に、翌月までの納品数量を下請事業者に伝えていました。
下請事業者は王子ネピアに対し、発注書面記載の数量にほぼ相当する数量のマスクの納品が可能であることを連絡していました。
しかし、王子ネピアは、下請事業者に対し、2021年度のマスクの合計納品数量が発注書面に書かれた数量の7割程度となり、納品数量を超えて生産したとしても受領する意向はないとして、マスクの発注の一部を取り消しました。
これにより、下請事業者は、すでに手配していた資材費用(仕入代金、倉庫までの運送料、倉庫保管料、廃棄費用)と人件費で合計2622万7735円超の額を負担することになりました。
王子ネピアの違法根拠
公取委によると、王子ネピアの行為は、下請代金支払遅延等防止法第4条第2項第4号(不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止)の規定に違反するといいます。
下請法では、下請事業者に責任がないのに、費用を負担せずに、発注の取消しや内容変更、やり直しをさせることにより下請事業者の利益を不当に害する行為を禁止しています。
王子ネピア「再発防止に努める」
王子ネピアは、下請事業者に対し、2023年11月22日に、手配していた資材に係る費用と人件費分に相当する額を支払いました。
そのうえで王子ネピアの公式サイトで以下の通りコメントしています。
当社はこれまでも法令遵守に努め、「取引先との誠実、健全な関係の維持」、「独禁法、下請法関連諸法令の遵守」を行動規範として取り組んでまいりましたが、本勧告を真摯に受け止めて、勧告内容について役員および従業員への周知徹底を図るとともに、下請法遵守の社内研修を実施し、コンプライアンスの一層の強化と再発防止に努めてまいります。
王子ネピア公式サイト
春闘の時期に明るみに出た、大企業による“搾取”の実態に憤った人も多かったに違いない。 【写真】賃上げを阻んできた「A級戦犯」はこちら
読売新聞オンラインは3月4日、「日産が下請けに減額を強要、公取委が勧告へ…部品30社以上で計30億円」の記事を配信した。記事によると、日産は遅くとも数年前から30社以上の下請け業者に代金の数パーセントを減額。その額は合計30億円に達し、業者の中には10億円を超える額を一方的に減らされたケースもあったという。
こうした行為は、当然ながら法律で禁止されている。公正取引委員会は7日、日産の下請法違反(減額の禁止)を認定し、再発防止や順法体制の整備を求める勧告を出した。日産はすでに下請け業者に減額分を返金したという。
2023年6月、生鮮食品を除く食料品の物価上昇率は同年前月比で9.2%に達し、約47年ぶりの高水準と伝えられた。そんな状態で日産の“下請けいじめ”が報じられたこともあり、SNSも炎上し「これでは賃上げなど無理」との批判が相次いだ。 一連の報道について、「日産一社だけの問題ではありません」と指摘するのは、経済評論家の三橋貴明氏だ。
「日産と下請け業者が共に利益を増やすことで初めて、GDP(国内総生産)はプラスに転じます。ところが今回の場合、日産は下請け業者の利益を不当に削ることで、自社の利益だけを確保しました。日産はもうかったかもしれませんが、下請け業者はもうかっていません。これではGDPはプラマイゼロか、場合によってはマイナスになってしまいます」
■大企業は似たようなことをしている だが、人件費抑制の手段として、多くの大企業が似たことを行っていると三橋氏は言う。その実態は、人件費と株主配当の推移を見ると浮き彫りになってくるという。
「1997年以降のデータを見ると、日本における人件費はほぼ横ばいです。一方、株主に対する配当は7倍に膨れあがっています。この30年間、特に日本の大企業は発言力の強い株主の利益を最優先とし、社員の給与は押さえつけてきました。政権与党である自民党もさまざまな労働規制を緩和し、『安く買いたたける人材』を企業が確保しやすいように後押ししてきました。日産の“下請けいじめ”も人件費抑制と株主配当の増額という視点で読み解くことが可能です」
企業が利益を増やすには、売り上げを増やすのが王道だ。ところが近年の大企業は原価を削って利益を出すことを選んできた。売り上げを増やすのは難しいかもしれないが、人件費のカットは簡単で確実に利益が増える。下請け業者への支払額を減らすことも同じ効果を生むのは言うまでもない。
「日産の減額により、下請け業者の利益が減少します。経営を維持するため、下請け業者も人件費を削ります。この悪循環で、多くの日本人は低賃金に押さえつけられ、ごく一部の株主だけが利益を得るという社会になってしまいました。実際、日本人における貧富の差は拡大を続ける一方です。ここで注意すべきは、適切な賃上げが行われていないのは中小企業の社員だけでなく、大企業の社員も同じだということです。日産の社員も“被害者”だということです。」
■働き方改革が進み残業が抑制 改めて確認しておくと、「良いインフレ」とはわれわれの収入が増え、購買意欲も増すことで需要が増加し、結果として物価が上がるという好循環を指す。だが今は物価は上がっているものの、収入は増えるどころか減っている。これは「悪いインフレ」である。
「人件費の抑制だけでなく、社会保険料の増額も実質的な増税ですから、われわれの手取りを減らしてしまっています。個人事業主にはインボイスの実施が追い打ちをかけました。実質賃金が下落しているのですから、消費意欲は減退して当然です。企業は商品増産や設備投資に及び腰となり、供給不足が続いています。今の日本がインフレなのは供給不足が原因です。本来、供給不足によるインフレは、資本蓄積が不十分な発展途上国で見られるものです」
三橋氏によると、1997年、一般企業が取引先である金融機関に預けた預金額は170兆円だったが、2023年には、340兆円にまで膨れあがってしまったという。企業の利益が株主に配当され、余っても投資には向かわなかったことが一目瞭然だ。 今後、日本人の年収は物価上昇に見合う分だけ増えるのか。三橋氏は「今年が正念場だ」と言う。
「『物流の2024年問題』が話題となっているように、今年は働き方改革が進むことで残業が抑制されます。労働者の健康や安全を守る施策だとはいえ、供給不足を悪化させる要因にもなり得ます。供給不足を改善するには、企業の投資を促進させるため、国の手厚いバックアップが必要です。熊本県菊陽町に半導体工場が完成しましたが、国は最大で1.2兆円の補助を行うと発表しています。だからこそ台湾のTSMCは安心して投資を行えたのです。物流だけでなく、国はさまざまな産業に対して同じ施策を行い、全国各地で『第2、第3の菊陽町』を誕生させることが求められています。官民一体となって早急に供給不足を解消しなければ、日本人のさらなる貧困化が猛烈なスピードで進行してしまうでしょう」
日本が“1億総貧困化”に陥らないためには、すぐに手を打つ必要がありそうだ。 (井荻稔)
井荻稔
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名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:04)
こんな事が日本全国の大手企業でまかり通っているから、中小企業の利益が出ない。だから賃金が上がらない原因の一つになっている。
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:32)
食品の価格が高騰する中
なんでもお客さんに価格転換すれば良いと言うものではないので、一年間は自社の努力を取り組みました。
そして、一年後にお客さんに値上げの相談に行きました。なんとなく濁されて時間が過ぎ、再度相談に行くと、上司と話ししてくれと。
話ししたところ前向きに考えると。
その間に弊社かミスを何回かして、その度に延期、延期。確かにミスはしたが、値上げとは別問題かと。毎月100万円の損してます。
あれこれ、相談してから1年経ちます。
行政の調査で社名を報告したら、弊社とわかってしまうので、報告できません。
コロナでたいへんだった時に、頑張って支えたのに、業績が回復してきたら、酷い仕打ち。
やめれるなら、辞めたないけど、辞めれない。。。
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:33)
円安、東証改革など、海外から投資マネーを呼び込みやすくなってきている。
貯蓄に代わる新ニーサが国民大多数に浸透すれば
しばらくは景気良くなりそう。
あとは裾野を広げた賃上げ。
日産が下請けいじめでスケープゴートになったが、大企業にはかなりの抑止力になりそう。ジャイアニズムは改善すべきて、株価上昇などから、賃上げしやすいお膳立てはできている。
お金が滞りなくきれいに循環すれば必ず明日は良くなる。
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:33)
業種は違いますが、下請け業者の知人から聞いたことがあります。見積もり3割引き、支払い1割引きは普通だそうです。
この知人は自己防衛のため見積もり額を予め値引き分だけ高くしておくそうです。
業者は基本的に値引き額を想定して見積もりを出しているそうです。つまり見積もりに対して値引き交渉は必須だそうです。
知らないと損をする世の中なんだなという感じです。
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:34)
自分たちの利益のために下請け企業をこのような扱いをする大企業がなくならない限り日本経済はよくならない気がします。
このような企業が格差社会を生み出してる。国政・行政がいくら頑張っても国民が豊かにならないのはこのせい。
これがカルロス・ゴーンの教えなのか。
そりゃGDPランキングどんどん転落するわけですよ。
政治家の納税も問題だけど、法人税も問題あり。日産の法人税は22年実績(799億円)は2019年実績(1561億円)の半分です。
売上高はトヨタの半分程度ですが、法人税は1/3ってことが納得いかない。
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:35)
これも景気浮揚を妨げてる原因、下請けが談合しようものなら、下請けには国から罰則付きの制裁が来る、国が大企業の奴隷になれという誘導しているとしか思えん、消費税の還付等、格差が広がるのも仕方ない、この構造は国が手を入れて正すしか方法が無い、放置ならこのまま衰退するだけだよ、故に衰退しか道が無い、国は言い訳だけして現状維持に務めるだろうから。
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:35)
今回は一旦取り決めた報酬の減額だからアウトやけど、同じ部品が年次を経るごとに合理的な理由なく自動的に単価を下げられるトヨタなんかの自動車会社の商慣行も取り締まったほうがいいんじゃ?
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:36)
何故毎年下請けには安くしろと言い、車の価格が上がるんだよ。
部品が安くなるなら車も安くしろよ。
この構図だと儲かるのは大企業だけだ。
下請けなんて毎年改善して得た微々たる利益を大企業に持っていかれて儲かるわけがない。
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:37)
日産が勧告を受けたが、他にもたくさんあるのだろう。困ったね。
そこで政府がすぐにできることとして。
中小企業庁の権限を強化せよ。そして、「下請けGメン」を増やして、徹底した調査と告発をしたらよい。とにかく、下請けイジメの「優位取引」を何とかせよ!!
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:37)
この問題は日産も悪いが、根源は自民党がこんな悪行をやってきた結果です。全ては自民党が悪いと言っても過言ではない。金持ち優遇政策1本槍で、平民は知らん顔政策。その結果世界でも格下な三流国会かなり下がりました。派遣法も最悪の施策です。法人税厳格も最悪政策。やる事なす事が負の遺産ばかりです。オマケに自分の私利私欲と私服を肥やす事にかけては法を曲げてでもやりなく始末の自民党議員達。此奴らを落差にさせて日本の復興を目指しましょう!
名無し (木曜日, 21 3月 2024 21:39)
思うのは、こいつら下請けいじめして原価縮減したのに、最終製品の値段は下がるどころか上がってるよな?その不善ぶりが信じられない。許せない。
原価縮減して浮いた分、どこに行ってんだよと思ってたが、やっぱ株主配当か……。絶望しか無い。