ここ最近は、お正月の娯楽のひとつとして「芸能人格付けチェック!」や「月曜から夜ふかし」などTVバラエティ番組の特番が人気だが、かつては映画館に新春映画を見に行くというのが定番だった。
【写真】「泣いた数だけ幸せに」「口は弁護士 心は詐欺師」! デコトラの「ロマンチック文句10選」と「オモシロ文句10選」が面白い!
とくに昭和の時代は、松竹「男はつらいよ」シリーズ(主演:渥美清)や東映「トラック野郎」シリーズ(主演:菅原文太)は、それぞれの映画会社において大ヒットしたドル箱シリーズであり、“トラトラ対決”と呼ばれていたという。どちらも物語中盤でマドンナが現れて、終盤でほぼ振られるというオチは同じだが、より娯楽色が強く、派手なカーアクションや「下ネタ」が取り入れられ、コミカルで若い年齢層にも人気が高かったのが「トラック野郎」シリーズだ。
腕っぷしは強いが惚れた女にはめっぽう弱いという、『一番星』こと星桃次郎(菅原文太)と、子だくさんで元警察官という『ヤモメのジョナサン』こと松下金蔵(愛川欽也)が、各地でマドンナと出会い、そして振られ、ライバルと喧嘩をし、最後は誰かのために警察相手に満艦飾を施したデコトラでカーチェイスを繰り広げるのだ。
予定調和ではあるが、ロッキード事件に端を発する政治家の汚職(第4作オープニング)や医療機関による患者のたらいまわし(第7作終盤)などの同時代の時事ネタが盛り込まれ、登場する「一番星号」と「ヤモメのジョナサン号」も飾りやペイントが毎回新調されるなど、映画館来場者を引き付ける楽しさがあった。
1975年8月30日公開の第1作『ご意見無用』は、急遽ボツになったほかの映画の穴埋めとして、1話限りの予定で作られた。低予算映画だったが、意外や興行収入8億の大ヒットとなりシリーズ化が決定。第2作『爆走一番星』は1975年12月27日に公開され、以降、お盆と正月の東映定番作品となった。惜しくも第10作『故郷特急便』を最後にシリーズは終了したが、いまでも根強いファンがいることはご承知のとおりだ。
じつは世界に目を向けると、トラックが題材として使われる映画は珍しくない。油田の火災を消すために500km離れた場所からニトログリセリンを運ぶ1953年公開のフランス映画「恐怖の報酬」や、赤いプリムスに乗るセールスマンが、ハイウェイで追い越したタンクローリーから執拗な煽り運転を受ける1971年公開のアメリカ映画「激突!」、その他にも同じアメリカ映画だけでも、1976年公開の「爆走トラック‘76」、1977年公開の「トランザム7000」、1978年公開の「コンボイ」、1998年公開の「ブラック・ドッグ」など、枚挙に暇はない。
日本映画としては、この東映「トラック野郎」シリーズのインパクトが強すぎるため、メジャーにはならなかったが、劇場公開されたデコトラ映画が他にもいくつかある。そのなかからとくに人気があると思われる5作品を紹介しよう。いずれの作品も、「一番星号」や「ヤモメのジョナサン号」のような映画会社所有の劇用車ではなく、個人所有のトラックを借りてロケを行ったものである。
デコトラの名作映画をピックアップ!
ではここでトラック野郎に勝るとも劣らないであろう、デコトラの名作映画を5つ紹介しよう。 1)『ダンプ渡り鳥』(東映) 1981年4月29日公開 出演:黒沢年男、梅宮辰夫、原田美枝子、ほか
北海道を舞台に、14トン積みダンプトレーラーを駆る『ダンプ野郎の隆』こと菊地隆介(黒沢年男)を中心とした、仕事仲間との友情や男女の愛が描かれている作品。「トラック野郎」シリーズ終了後、東映がシリーズ化を狙い、『河内のオッサンの唄』や『狂った野獣』の関本郁夫さんを監督に、『トラック野郎』シリーズの掛札昌裕さんを脚本に起用してみたものの単発で終わってしまった。DVDなどのソフト化はされていないが、アマゾンプライムで見ることができる。
2)激走 トラッカー伝説(松竹) 1991年6月29日公開 出演:渡辺裕之、小西裕之、浅田美代子、ほか
『北海のハイリマオ』こと宮田慎二(小西博之)やヒッチハイクでインドまで旅をする途中の元・自衛官、勝山猛(渡辺裕之)を中心に、“日本一周を5日間で走破する”という伝説に挑戦する男たちの姿を描く。東映「ダンプ渡り鳥」公開から10年ぶりのデコトラ映画、しかも配給元が松竹ということで当時はかなり話題になった。公開後にVHSでソフト化されたが、DVDやBlu-rayは発売されていない。劇中で主人公の乗るトラックは、千葉にある運送会社・椎名急送から日野の11トン車を借り受け、映画用のペイントを施したものである。
3)爆走トラッカー軍団(ケイエスエス) 1994年9月10日公開 出演:ジョニー大倉、誠直也、幸英二、ほか
1992年からVシネマとして5作品がつくられたシリーズの劇場版。龍のペイントが入った11トン車を駆る、主人公の『竜神丸』こと藤崎竜一(ジョニー大倉)は、いつものように馴染みの「はさま食堂」に出入りしていた。その食堂の土地買収を狙う誠山会は、トラッカー仲間の小畑をクスリ漬けにして食堂主人殺害を企てる。怒った藤崎は仲間とともに組織に殴り込みをかける。昭和色の強い「トラック野郎」とは違う、当時流行したトレンディドラマ仕立ての作品。いまではDVDで見ることができる。
4)爆走!ムーンエンジェル -北へ(東映) 1996年5月18日公開 出演:工藤静香、嶋村かおり、清水宏次朗、ほか
白ナンバーの4トントラックを駆る『カミオンのマドンナ』こと葛西ルナ(工藤静香)は北海道に出稼ぎに向かう。釧路では『幣舞の鶴姫』こと喜代子(永島映子)と息子の治虫に会うのが毎年の楽しみだった。ある日、喜代子のデコトラが検問に引っかかり、改造車として没収されてしまう。釧路警察に取り返しに向かったルナらは、意外な事実を知らされる……。劇中で主人公が乗るふそうの4トン車は個人オーナー所有で、映画用に工藤静香自らが荷台のペイントデザインを手がけたもの。主題歌や劇中音楽も工藤静香が担当した。
5)デコトラの鷲 祭りばやし(フィルムパートナーズ) 2003年10月11日公開 出演:哀川翔、こずえ鈴、柳沢慎吾、ほか
11トン車を駆る飛田鷲一郎(哀川翔)は、一年に一度、三社祭のときにだけ実家のある東京は浅草に帰ってくる。帰省した鷲一郎は、実家の自分の部屋に居候していたルーシー・ヘイワード(こずえ鈴)にひと目惚れし、ルーシーの生き別れた父親捜しを手伝いはじめる。2008年までに全5作が劇場公開され、2021年2月に12年ぶりに新作の第6作「新 デコトラのシュウ
鷲」が公開された。新作の主題歌は東映「トラック野郎」で菅原文太と愛川欽也が歌った『一番星ブルース』で、哀川翔がカバーしている。
トラック魂編集部
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名無し (土曜日, 24 2月 2024 15:40)
3つ目の「爆走トラッカー軍団」以降はほとんどVシネマやん…
昔見たトラック野郎で覚えてるのは、どれかの作品のラストで高速道路を走るデコトラの車列を撮ってて、それぞれの屋根に「あけましておめでとうございます」と一文字ずつ横断幕が掲げてあったことだな。
このシリーズは松竹の寅さんのようなモノをやろうと始まったそうだけど、そこは東映。
菅原文太演じる桃次郎は稼いだカネをすぐトルコに注ぎ込み、旅先で出会ったトラック野郎とケンカになるも仲間になり、無茶なスケジュールの積荷をスピード違反上等で運び、警察の追手を他のトラック野郎が阻止するという、寅さんの人情喜劇とはおよそ違ったものだった。
名無し (土曜日, 24 2月 2024 15:41)
多分、人生初の映画館で見た映画がトラック野郎で、この映画は近くで撮影が行われていたんだと親父が話してた。
今見返してみると見慣れた景色が映ってて昔から殆ど変わっていないんだなと思ったり、山道走ってるはずなのにいきなり晴海埠頭?でのカーチェイスになったりとチグハグだったりするけど、それもまた御愛嬌か
名無し (土曜日, 24 2月 2024 15:41)
石原裕次郎の「錆びたナイフ」ではデコトラではないがボンネットダンプによるカーアクションシーンがある。恐らくは日本映画初のカーアクションシーンではないか?
ノウハウのない当時に撮影されたものと思えない出来で、日本映画全盛期の技術の高さに驚く。
名無し (土曜日, 24 2月 2024 15:42)
私はトラック野郎世代ではありませんが、子供の頃父親がレンタルビデオ屋から借りてきたのをよく一緒になって観ていたので、この作品を観て日本の地理を覚えていったりトラックに乗って運転する人が格好良く憧れたりといった感じで育ったくちです(笑)
トラック野郎は私の人生の中のバイブルです!
名無し (土曜日, 24 2月 2024 15:42)
トラック野郎は今見ても、いつ見ても最高。
前半、桃次郎の破天荒な行動に爆笑し、
後半、窮地に陥った仲間のため一肌脱ぐ男気が胸に刺さりまくる。
トラックがボロボロになりながらも、時間内に荷物や人を送り届けるその姿。
ライバルのトラック野郎や、食堂に集う運ちゃん達も共闘し、桃次郎に協力。
毎度毎度クライマックスでは気持ちのいい涙が止まらないよw
名無し (土曜日, 24 2月 2024 15:43)
トラック野郎に代わる映画はもう出て来ないでしょう。「弱きを助け、強きをくじく」鈴木監督。澤井さん。須賀良さん。過去の人になりましたが、トラック野郎は名作だと思いますね。
名無し (土曜日, 24 2月 2024 15:43)
吉川晃司さんが主演だった映画、ユーガッターチャンスだったかな?
当時の籠原運輸所有だった日野大型KF平ボディが活躍してたね。今見ても渋くてカッコいいデコトラだった。