おじいちゃんは、ボソッと言いました。
「いいからだまって持っていけ」
僕が生まれた年から、1,000円、2,000円と少しずつ、 少しずつですが、じいちゃんは預金をしていたのです。
裕福な家庭とはお世辞にも言えない状況で、 20数年間、僕のためにコツコツ貯めてくれたのかと思うと、 それまで身内の前で泣いたことなかった僕ですが、 そのときだけは、涙があふれて止まりませんでした。
そんなボロボロ泣いている僕をみて、じいちゃんは僕の頭をたたき、 「男が泣くな」とひとこと言って、寝床に戻っていきました。
その数ヶ月後に、じいちゃんはガンで他界するのですが、 家族の誰も気づかず、ずーーっとガンだということを黙っており、 逆算すると、そのときはじいちゃんの身体は もうボロボロになっていたのです。
病院の先生も「普通は立つことも出来ないですよ」と言っていました。
今思うと、もう長くないことをじいちゃん、悟っていたのだと思います。
倒れてからは、病状がひどくなり、 自分の息子(僕のオヤジ)の顔も分からなかったらしく、 じいちゃん子だった僕がショックを受けるからと、 亡くなるまで、そんなこと知らされませんでした。
後から聞いたのですが、病院のベッドで息を引き取る寸前まで、 僕の名前を呼んでいたそうです。
言葉ではなく、行動で示すその姿勢に「男」を感じ、 最期まで僕のことを心配してくれたじいちゃんにありがとうを。
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