デコトラでよく目にする「●●丸」
日本独自の文化として知られる「デコトラ」。きっと、ほとんどの人が派手にデコレーションされたトラックと遭遇した経験をお持ちのことだろう。荒れ狂う怒涛や虎、龍などの絵を描いていたり、数多くの電飾パーツで飾られたデコトラは、1970年代から今日に至るまで広く浸透しているジャパニーズカルチャーである。
デコトラとは、いわばオーナーの分身のような存在。現在では趣味で楽しむ人も増えているが、その原点とは日本列島を駆け回っていた長距離ドライバーたちに由来する。一日の大半をトラックとともに過ごしていた彼らは、愛機を綺麗に飾り立てて可愛がっていたのだ。職人が仕事道具を大切にメンテナンスするのと同じように、トラック乗りたちも相棒となるトラックに情熱を注いで飾っているのである。
トラックは「陸の船」という扱いを受けてきた
トラックとは、もちろん荷物を運ぶために存在しているもの。船舶もまた然りで、外国と日本を行き来する重要な荷役業務を担っている。それゆえに、トラックとは旧くから「陸の船」という扱いを受けていた。そのため、デコトラの世界でも「●●丸」という愛称をつけることが、1970年代にはすでに定着したのである。そして、「●●観光」という愛称も人気が高い。これも理由は単純で、由来となっているのは観光バス。
「バスは人を運ぶものだから、荷物を運ぶトラックとは関係がない」。
そう思う人が多いのは道理だろう。しかし、ここにもきちんとした理由が存在している。
デコトラがブームとなったのは、1975年から1979年にかけて公開された映画『トラック野郎』による影響が大きい。しかし、それ以前からトラックを飾るという文化は日本に存在していた。しかし当時はトラック専用のパーツなどは存在していなかったため、バス用のヘッドライトやテールランプ、そしてシャンデリアなどをトラックに取り付けていたのである。
デコトラは車内をも絢爛豪華に仕立てる傾向が強いのだが、これも往年の豪華なサロンバスがモチーフとなっている。そして、現在でもデコトラ野郎たちの間で豪華なサロンバスを所有することがステイタスとなっているのである。
男たちが大枚をはたき、燃費や実用性などを犠牲にしてまでトラックを飾り立てるということは、傍から見れば愚の骨頂だと捉えられてしまうことだろう。しかし、彼らには彼らなりの意地や誇りがある。そんな彼らだからこそ、トラックを大切にしている。マナーが悪く事故を多発させているノーマルトラックたちよりも、見た目の印象が良くないデコトラのほうが、きっと筋金入りのトラックドライバーであるといえるのではないだろうか。
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