いつも通り仕事を終え、 23時過ぎに帰宅してリビングに向かうと、 ソファに娘が腰かけて、まだ起きていました。
「こらこら、何でこんな時間まで 起きているんだ? おばあちゃんは?」
「お帰りなさいパパ。 おばあちゃんと一緒に寝たんだけど、 お部屋抜け出して、パパを待ってたの」
「何時だと思ってるんだ。 早くおばあちゃんの所へ行って寝なさい」
「……」
「どうしたんだ?」
「ねぇ、パパはママと最近いつお話しした?」
「ママは天国へ行ってしまったから、 もうお話は出来ないんだよ」
私は疲れていたこともあり、 少し適当に対応してしまいました。
「天国ってどこにあるか、パパは知ってる?」
「雲のずっとずっと上だよ」
こんな細かいことを今まで口にしなかった娘に、 少し不思議な気持ちでいました。
聞き分けがよく、 それ以上の追求はしてこなかった子だけに、 何かあったのかな・・・と。
すると娘がこう続けます。
「違うよ。パパは知らなかったんだね!」
「え?」
「天国はね、すぐ近くにあるんだよ! ママはね、すぐ近くにいるんだよ! ママはね、新しいパパと、新しい私と近くにいるんだよ!」
いきなり大声で、 泣きながらそう強く訴える娘。
私は、娘が何を言っているのか、 見当もつきませんでした。
あまりの大声に、祖母が驚いて起きてきて、 重い口を開きます。
そして、やっと娘の必死な訴えの意味が分かったのです。
祖母に話を聞くと、 今日、祖母が娘と少し離れたスーパーへ買い物に行った時、 前妻に偶然会ったそうです。
会ったと言っても、 何か会話をしたわけではなく、 前妻は「新しい夫」と「新しい娘」を連れて、 買い物をしていたそうです。
その光景を娘が目にしてしまい、 娘は必死に「ママ!」と叫んで、 駆け寄ろうとしたそうです。
祖母が必死にそれを制止したため、 再会し、”真実”を知らずに済んだそうです。
この話を聞き、私は意を決しました。
娘にできるだけ分かるように真実を話すことを…。
幼いながらも娘は、 私の話が理解できたのでしょう…
今までの素直な娘ではなく、 「ヤダヤダ」と泣き叫びながら、 私の胸を叩き続けました。
娘は、このとき私にストレートな感情を出して、 初めて、私の「娘」になれたのかもしれません。
私も、このことをきっかけに、 娘にとっての”本当のパパ”になることを決意しました。
出来るだけ、仕事を調整し、 必ず一日のうち、一定の時間は娘とともに過ごすようにしています。
まだまだ、娘の心にできた空洞を埋めてあげるには、 不十分かもしれませんが、でも少しずつ少しずつ、 私たちは、本当の父娘に近づいているような気がします。
コメントをお書きください