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製紙6社の業績は値上げ・コスト低減で大幅改善も、解消しないリスク

2社黒字転換

製紙6社の2023年4―6月期の連結決算は複数回の値上げの効果とコスト低減で2社の営業損益が黒字に転換し、4社は営業増益となった。ロシアのウクライナ侵攻によって石炭など輸入原燃料が高騰した前年同期から大きく改善した。ただデジタル化の進行や諸物価高騰による経費削減で紙・板紙の需要回復は遅れており、コスト上昇要因も解消していない。生産効率の向上や高付加価値品の販売強化で黒字体質を確実にする考えだ。

4―6月期は大王製紙の営業利益が前年同期比9・5倍の27億円、日本製紙の営業損益は8億円の黒字(前年同期は29億円の赤字)、三菱製紙の営業損益が3億円の黒字(同7億円の赤字)と収益が改善した。

原燃料価格のマイナス影響は王子ホールディングス(HD)と日本製紙がそれぞれ200億円前後、大王製紙で約149億円に上ったが、複数回に及ぶ販売価格への転嫁、石炭使用の削減などで影響をはね返した。王子HDは競合より海外比率が高く事業構成も異なり、営業利益は前年同期比39・8%増の217億円だった。

日本製紙の原燃料価格のマイナス影響198億円の内訳は石炭が53億円、チップが38億円、パルプが13億円など。同社は「マイナス影響は四半期を追うごとに改善する見通しだが、原燃料価格はリスク要因ととらえていく」と慎重だ。

大王製紙の同149億円のうち、石炭が45億円、チップが30億円、パルプが9億円など。コスト上昇分を反映・改定した「価格は今後も堅持していく」(同社)としている。

北越コーポレーションの原燃料価格の営業利益へのマイナス影響は55億円。うち30億円はチップで、燃料は9億円にとどまるなど企業により状況は異なる。

24年3月期の業績見通しについては、全社そろって据え置いた。

日刊工業新聞 2023年08月17日