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全国64店舗のパチンコ店から出禁のパチプロ。怖い人に絡まれるぐらい‟勝ち過ぎた台”を暴露

 パチンコには、格闘技でいうところのパンチとキックのような基本の技がある。それが、無駄な玉の打ち出しを削減する「止め打ち」と、複数の玉を固める「捻り打ち」だ。  たとえば止め打ちにも「タイミング打ち」とか「間引き打ち」といったジャンルがあり、これらを組み合わせると、ハイレベルな「大当り直撃打法」という大技がうまれる。ただし、顔が利かない土地で大技を繰り出すと、地元のパチプロから「おい、ナワバリを荒らすなよ!」と、その地域を追い出されてしまう。そんなことが過去に何度もあった。  そしてなにより、経営者も店を守るのに必死。だから、すぐに飛んでくる。そんなわけで出禁勧告を受けた総数は、いまや全国64店舗にも及んでいる。

約3年に1機種ペースで導入される「ガチプロだけが稼げるマシン」

 

 

 攻略効果がズバ抜けて高いマシンは、おそらく3年に1機種くらいのペースで導入されているんじゃないだろうか。たとえば2009年に導入された「CR蒼穹のファフナー」は凄かった。上部に位置する羽根が「パカッ!」と開く瞬間に、タイミングよく打ち出せばそれだけで大当りが狙えた。

雑誌のDVD企画で実演したことがある

 手順が簡単で挑戦する人が多かったから、いまでも酒の席では必ず盛り上がる話だ。でも実のところ、設置されていた期間は4ヶ月くらい。やはり脚光を浴びない難解なマシンのほうが、長期的に使えて稼ぎやすい傾向にある。

平均投資3000円で約2万円相当の出玉が期待できた「タコラッシュ」

 

 

 2010年に導入され、個人的にもっとも世話になった「CRタコラッシュミニS2」は、羽根モノ(大当り確率が軽くて出玉が少ないジャンル)のコーナーで扱われることが多かったが、いやいやそれはリス小屋でクマを飼うようなもの

平均投資3000円で5000個ほどの出玉が期待できたタコラッシュ。

 こいつの攻略打ちは、えげつない。左側に位置する始動口に玉が入ると両肩の羽根が「パカッ!」と開くので、この一瞬を「捻り打ち」で狙う。釘の上でバウンドさせた遅い玉と、釘に当てない速い玉、これらを同時に羽根の中へと送り込んでやる。サッカーボールを2つ同時にゴール目掛けて蹴るようなものなので、もはやインチキだ。

パンチパーマ&色眼鏡のおじさまに絡まれる…

 

 

末期は、どこもかしこも稼働停止となった……

 タコラッシュの新装オープンを狙い、茨城県で実戦した日のこと。隣の席に座るパンチパーマ&色眼鏡の“いかにも”といった雰囲気のおじさまに、「兄ちゃん、なにかヤッてっぺ。頼むから教えてくれよ~」と、甘えた声で話しかけられた。その声には似つかわしくない深く刻まれた眉間のシワ、そして下からエグる目線に、ゾワワ……と鳥肌が立った。声を振り絞って「まっ、まずは大当りさせますね!」と返答したが、簡単に説明できる打法ではないから、かなり困った。  そこから30分ほどが経過して、鳴かず飛ばずのおじさまが痺れを切らしたらしく、「他の台に移動するから、逃げるなよ~」と言い残し、姿が見えなくなったくらいのタイミングで……大当り図柄が揃ってしまった。

14連チャンで歩み寄ってきた白シャツの店員

 

 

 大当り中に使用する技は「連チャン促進打法」といわれるものだが、基本的には通常時と同じ。羽根の中に多くの玉を入れたら、その数だけ抽選確率がアップする。だからバットを振るみたいに、ハンドルを「クイッ!」とまわす。野球もパチンコも、バントの構えだけじゃ勝てない。スイングすることで、ようやく客側に優位性がうまれるのだ。  好調に連チャンを伸ばし、14回目の大当りの最中。ここで白シャツの店員さんが、歩み寄ってくる。そして「当店は変則打ち禁止ですので、ご注意ください」と、警告を受けてしまった。ようするにハンドルを捻るな、バットを振るな、ということだ。ことを荒立てる気はないので、すぐに従い、何も考えずにハンドルを握り続けることにした。

出禁に昇格したのにホッとしたワケ

 

 

 それなのに、運だけで20連チャンを突破してしまったところで、再び白シャツの店員さんが現れ、「なにをされているかはわかりませんが、当系列店を全店出入り禁止とさせていただきます」と、出入り禁止への昇格を言い渡されてしまった。  ただ、この出禁によって寿命が延びたような気もする。‟いかにも”のおじさまからの「逃げるなよ!」という強引な約束から、見事に逃げ切ることができたのだから……。白シャツの店員さんは、景品交換に付き添ってくださり、さらには車まで送り届けてくれた。あのまま打ち続けていたら、無事に帰れなかった気がする。だから今回ばかりは、退店する口実ができたこと、出玉を交換させてくれたことに、感謝することにした。

7年後にまさかの出禁解除

 

 

 あれから歳月が経ち、パチンコのライターという肩書きも板についた。新台リポートもするし、そのための勉強だって欠かさない。  

パチンコ雑誌のDVDやYouTubeなどで、パチンコ台の解説の仕事も行っているミネッチ氏

 そんな活動を認めてくださったのか、もはや記録に残っていないのか、嬉しいことに出禁になった店からTwitterをフォローしていただいた。  それだけでは終わらず、異例中の異例。ついに、収録をすることになったのだ。番組のディレクターから過去にあった経緯を伝えてもらったところ、「そんな昔の話は気にしてないよ~」と、エリアマネージャーは笑っていたのだとか。出禁は永久的なものではなく、真面目に生きていれば解けることもある。また、新店長が就任すれば経営方針が変わることもあるので、「これまでは大丈夫だったから」は通用しない。結局は、人付き合いなのだ。  そしていま、「パチンコライターという道を進んで良かったな」と改めて思っている。 文/ミネッチ

 

ミネッチ

技術と釘読みで凌ぐパチプロ生活が20年。その稼働内容を、雑誌(パチンコオリジナル実戦術、必勝ガイドMAXなど)に寄稿し始めて10年が経つ。YouTubeの密着シリーズ(パチダンTV)は特に人気があり、70万回再生を超えた。

X(旧Twitter):@minetch YouTube:ミネッチのパチンコ日記