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リーダーが絶対にやってはいけない「一発で信頼を失う行為」ワースト1

組織・チームを率いる管理職にとって、最も重要な任務は「成果をもたらす意思決定」をすることです。しかし、多くの業務を抱えるリーダーが、「どうすれば意思決定の質が高まるのか」「必要な情報はどうやって集めるべきか」といった根本的な問いについてじっくり考える時間はなかなかとれません。
そこで今回は、大ベストセラーシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』の累計100万部突破を記念し、著者・安藤広大氏(株式会社識学 代表取締役社長)にご登壇いただいた特別イベント『とにかく仕組み化』サミット(ダイヤモンド社「The Salon」主催)より、安藤氏のご講演の模様を全2回のダイジェストでお届けします。(構成/根本隼)

リーダーに権限が足りない場合

安藤広大 組織における意思決定を正しく機能させるには、「責任」の範囲と「権限」の範囲を、きちんと合致させることが最も重要です。

 責任と権限がズレた状態で意思決定をすると、どんなことが起きてしまうのか説明しましょう。

 上図のように、ある人に与えられた責任に対して、それを果たすための権限が不足している場合、責任はあるのに権限がない部分において、「意思決定をする」という仕事から逃れることができます

 つまり、「権限がないからできなかった」という免責(=言い訳)の余地ができてしまうんです。なので、責任に対して権限が足りない状況は、絶対につくってはいけません。

 もしリーダーに権限が足りていないのであれば、自ら獲得しにいくべきですし、部下に意思決定を要求するのであれば、きちんと権限を与えることが必要になります。

「無責任な意思決定」が発生する場合

 逆に、下図のように、責任以上の権限が与えられている場合は、さらに厄介です。負っている責任が小さいのに、社歴が長いという理由で権限をたくさん持っているパターンなどが考えられます。

 この場合は「無責」のゾーンが生まれます。つまり、権限が過剰だと、「無責任な意思決定」ができてしまうんです。そうすると、誰も責任を持たない活動が進行することになるので、組織として大変危険な状態に陥ります。

 これら2つのパターンから、意思決定がなされる際には、責任と権限の範囲が一致していることが非常に大事だということがわかると思います。

意思決定でやってはいけないこと・ワースト1

 意思決定においてリーダーが一番やってはいけないのが、「情報収集に時間をかけすぎる」ことです。なぜなら、ビジネスの現場においては、使える時間と労力に限りがあり、100%完璧な情報収集というのはほぼ不可能だからです。

 しかも、意思決定をせずに情報収集をしている間は、PDCAのサイクルが止まります

 たとえば、すばやく意思決定を下すAさんというリーダーと、情報収集を繰り返して意思決定に時間をかけるBさんというリーダーがいたとしましょう。

 Aさんが率いるチームは、意思決定がスピーディーなので、同じ期間内でより多くの「実行→失敗→修正」というPDCAサイクルを回せます。一方、Bさんのチームは、じっくり考えてから意思決定するので、Aさんのチームよりも実践の場数が少なくなります

 この場合、限られた時間の中でどちらの方がより質の高い施策にたどり着くかというと、当然Aさんのチームです。つまり、意思決定において重要なのは「スピード」だということです。

 「じっくり考える=仕事をしている」と捉えられがちですが、実はその間にライバルに先を越されてしまいます。意思決定に時間をかけすぎて失敗すると、「決断できないリーダー」という評判が立って一発で信頼を失うので、気をつけましょう。

すばやく意思決定をするには?

 では、すばやく意思決定を下すにはどうすればいいか。ここで大事になるのが、「絶対にチームに成果をもたらすんだ」というリーダーの覚悟です。

 そもそも、意思決定におけるリーダーの最終責任とは、組織・チームに成果をもたらすことです。

 この責任を「自分が必ず果たすぞ」という覚悟をきちんと持っていれば、周囲からの反発を必要以上に恐れたり、ためらったりして判断を先延ばしにすることはなくなります。

 時間をかけすぎずに、覚悟を持って「決めるときは決める」。このことを徹底しましょう。

(本稿は、シリーズ100万部突破記念『とにかく仕組み化』サミットの内容をダイジェスト化したものです)

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【今すぐやめて】「仕事ができない管理職」がついやってしまう“浅はかな行動”とは?

組織・チームを率いる管理職にとって、最も重要な任務は「成果をもたらす意思決定」をすることです。しかし、多くの業務を抱えるリーダーが、「どうすれば意思決定の質が高まるのか」「必要な情報はどうやって集めるべきか」といった根本的な問いについてじっくり考える時間はなかなかとれません。
そこで今回は、大ベストセラーシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』の累計100万部突破を記念し、著者・安藤広大氏(株式会社識学 代表取締役社長)にご登壇いただいた特別イベント『とにかく仕組み化』サミット(ダイヤモンド社「The Salon」主催)より、安藤氏のご講演の模様を全2回のダイジェストでお届けします。(構成/根本隼)

情報収集で絶対やってはいけないこと

安藤広大 意思決定の前に欠かせない「情報収集」において一番ダメなのは、リーダー自身がわざわざ現場に下りて情報を集めに行くことです。「仕事ができない管理職」ほどやってしまいがちなのですが、残念ながらこれは浅はかな行動だといえます。

 理由は2つです。1つは、リーダーはマネジメント業務を背負っているので、一次情報まで自ら取ろうとすると、いくら時間があっても足りないから。

 もう1つは、リーダーが情報を獲得しに行ってしまうと、中間管理職が身につけるべき「必要な情報を収集・選別して上に伝える」というスキルが、いつまで経っても伸びないからです。このような組織だと、早い段階で成長が頭打ちになるのは確実です。

 なので、組織にとって理想的なのは、意思決定に必要な情報「だけ」がリーダーに上がってくる仕組みです。このような仕組みは、どうすればつくれるのでしょうか。

「どうでもいい情報」を排除する仕組み

 大切なのは、部下に「責任」「権限」を過不足なく与えることです。より具体的に言うと、部下に対して、「リーダーへの情報提供」という責任と、そのための「情報収集」という権限を付与することです。

 責任を果たすのに必要な権限が部下にあれば、その権限を使って、部下は現場でのトラブルや困りごとなどの情報を収集し、上司に上げることができます。

 責任に対して権限が不足していると、不十分な情報収集しかできません。逆に、責任に対して過剰な権限が与えられていると、上司にとってはどうでもいい情報まで上がってきてしまいます。部下はよかれと思って伝えていても、このような情報は、意思決定においては単なる「ノイズ」でしかありません。

 1人ひとりの部下の責任にふさわしい権限だけを与えて、情報を集めさせることが、スピーディーで良質な意思決定をするために非常に重要です

 また、部下から提供される情報が事実から構成されているのか、それとも部下の意見・感想が混入しているのかという点は、しっかり見極める必要があります。

 なぜなら、意思決定において重要なのは「事実だけ」だからです。事実を伝える情報にフォーカスするように注意しましょう。

意思決定の「よしあし」を判断するには?

 リーダーが意思決定する際、よって立つべき基準とは何でしょうか。それは、組織の「存在目的」であり、「企業理念」だと私は考えています。

 組織・企業が、社会でどんな力を発揮して、どんな役割を果たしたいのか。この究極的な目的と合致しているかどうかで、意思決定の「よしあし」を判断しないといけません。

 この判断軸が確立されると、リーダーの意思決定に「一貫性」が生まれ、部下の間にも安心感が広がります。

 組織というのは、人間の集まりです。みんながまとまって、共通の目標に向けて努力するうえで、トップの意思決定における「一貫性」は極めて重要なファクターとなります。

 意思決定と企業理念との間にズレがないかどうか、常に確認するようにしてください

(本稿は、シリーズ100万部突破記念『とにかく仕組み化』サミットの内容をダイジェスト化したものです)

「管理職に向いていない人」が口にする言葉・ワースト1

人の上に立つと、やるべき仕事や責任が格段に増える。メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多く発生し、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」と戸惑ってしまうだろう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。これまでのシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』でも「自分のやるべきことが見つかった」「日々の仕事に役立ちすぎる」「何度読んでも言葉が深く刺さる」など、多くの賛同の声を集めた。そんな大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「管理職に向いていない人が口にする言葉」をご紹介する。(構成/種岡 健)

属人化を生み出す「リーダーの末路」

 人は、放っておくと、「属人化」します。
 それは、本能だからです。

「あなたがいないと困る」という状態をつくってしまうのは、自然なことなのです。

 だからこそ、その誘惑に「理論」で打ち勝たないといけません

 自分が活躍し、他の人が追いつけない状況をつくったほうが、個人はトクをします。

 スキルを囲い込むプレーヤーが現れるように、管理職の中でも似たようなことが起こります

 たとえば、10人の営業を束ねているマネジャーがいるとしましょう。
 そのチームで売上を達成することが、マネジャーの役割です。
 社内のルールで、「飛び込み営業は禁止」にしているとしましょう。
 しかし、そのマネジャーが治外法権をしてしまうのです。

「社内のルールでは禁止になっているが、売上目標を大きく上回るために、飛び込み営業をOKとします」

 などと伝え、独自のマニュアルを用意してしまいます。
 ここまで大胆ではなくても、各個人に「上には内緒でいいからさ」と、小さいレベルで組織に背くことぐらいはあるのではないでしょうか。
 そうやって、メンバーを囲い込むのも、放っておくとやってしまう「属人化」の悪い例です。

 度々、食品偽装がニュースになりますが、それは、こうしたマネジャーの属人化した管理がエスカレートしてしまったからです。
 その後、良心の呵責に堪えかねたメンバーによる「密告」によって、それが判明し、「責任をとって辞める」「会社の信頼を下げる」という末路を迎えるのです。

「属人化を壊す」という覚悟

 マネジャーは、属人化を壊す存在でないといけません。
 自然状態になるプレーヤーを、仕組み化する立場です。

 数字で管理するルールを決める

 すべて、自然に逆らって社会を形成することが前提になっています。

 これを否定する人もいるでしょう。
「成長しなくてもいい」と決めている人です。
 そういう人は、人の上に立ってはいけないのです

 自然状態を認めるマネジャーは、一見、優しいように見えるかもしれません。
 しかし、個人や会社の成長を止めている存在です。
 優しさの裏側は、残酷です。
 何も言わない人は、優しいからではありません。
 見捨てているのです

 その結果、プレーヤーは自然状態になり、マネジャーは既得権益を享受します。
 それを食い止めるための「仕組み」が必要なのです。

「管理職に向いているかどうか」を試す質問

 では、最後に「質問」です。

 質問:あなたは「ここだけのルール」を許していないでしょうか?

 いかがでしょう。
 どんなに些細なことであっても、

「上には内緒でいいから」
「ここだけの話にしておくから」

 と、組織に背いてルール設定がおこなわれることは避けましょう。
 1人の課長が、

「うちの部長はダメだよね~」

 と、部下を囲い込んでしまうと、一気にその組織は弱くなります

 組織の中にいる一員として、歯車であることを再認識してください。

(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)

 組織の中で、「替えの利かない人」は、今の位置にとどまる。「歯車として機能する人」は、人の上に立てる。

 いっけん、逆だと思ったかもしれないが、残念ながらこれが真理だ。歯車として機能する人には、「仕組み化」の考えが備わっている。

 たとえば、社内でミスが起こったとき、2つの反応に分かれる。
「なぜミスしたんだ?」と、“個人”を責めるか。「どうすれば防げたのだろう?」と、“仕組み”を責めるか。

 その一瞬の判断だけで、あなたの行く末が決まるーー。

 まず今日からできることは、つい、感情が先に出てしまいそうなときに、「とにかく仕組み化」という言葉を心の中でつぶやいてみてほしい。
 スッと冷静になれるだろう。目の前の人のせいにせず、背景にある「ルール」を疑うようになれる。

 このように、本書で仕組み化の「本質」を知り、自らの手で仕組みを変える側の人になってほしい。
「あなたがいないと困る」という感情と早く折り合いをつければ、あなた自身の立場は、どんどん上にあがり、さらに“大きな仕事”を成し遂げられるようになる。