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父が見つめていた家族写真を思って…【青空と向日葵の会】

【父が見つめていた家族写真を思って…】
https://yuru2club.com/wp/?p=10807
俺が小さい頃に撮った家族写真が一枚ある。
見た目普通の写真なんだけど…。
実はその時父が難病を宣告されていて、
それほどもたないだろうと言われていた。
入院前に今生最後の写真はせめて家族と・・・
と撮った写真らしかった。
俺と妹はまだそれを理解できずに
無邪気に笑って写っている。
母と祖父、祖母は心なし固いというか、
思い詰めた表情で写っている。
当の父はというと、どっしりと腹をくくった感じで、
とても穏やかな表情だった。
母がその写真を病床の父に持って行ったんだが、
その写真を見せられた父は特に興味も示さない様子。
「その辺に置いといてくれ、気が向いたら見るから」と
ぶっきらぼうだったらしい。
母も、それが父にとって最後の写真ということで、
見たがらないものをあまり無理強いするのもよくないと思い、
そのままベッドのそばに適当にしまっておいた。
しかし、その後この写真を通じて、
ほんとはそれほどぶっきらぼうでない
父の一面を知ることになった

ばらくして父が亡くなり、病院から荷物を引きあげる時に 改めて見つけたその写真に、母が驚いた。

まるで大昔からあったようなボロボロさで、 家族が写っている部分には、 父の指紋がびっしり付いていたのだ。

普段とても物静かで、 宣告された時も、見た目は普段と変わらずに 平常を保ってる父だった。

だけど人目のない時、病床でこの写真を どういう気持ちで見ていたんだろうか。

今、お盆になると、その写真を見ながら父の思い出話に花が咲く。

祖父、祖母、母、妹、俺・・・。

その写真の裏側には、もう文字もあまり書けない状態で 一生懸命書いたのだろう。

崩れた文字ながら、 「本当にありがとう」とサインペンで書いてあった。