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「どうする家康」最終回 天海役に小栗旬のワケ「懐の深さ」番組CP感謝 意を決し打診→老けメーク快諾

 俳優の小栗旬(40)が明日17日に15分拡大で放送されるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)最終回(第48回)に高僧・南光坊天海役でサプライズゲストとして出演することが16日、番組公式SNSで発表された。大河出演は北条義時役で初主演を務めた前作「鎌倉殿の13人」に続き、2年連続9回目。最終回あらすじで天海登場が予告されたため、SNS上でキャスト予想合戦が繰り広げられていた。大河主演俳優が翌年作品最終回に登場するのは異例。「…家康」の主演を務める嵐・松本潤(40)は「鎌倉殿…」最終回に徳川家康役でサプライズ出演し、親友2人による大河バトンタッチが実現。今回はその逆となり、「…家康」制作サイドから小栗への“恩返し”オファーとなった。

「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となった。

 最終回は「神の君へ」。徳川家康(松本潤)は豊臣との決戦に踏み切り、乱世を終える覚悟で自ら前線に立った。真田信繁(日向亘)らは家康の首をめがけて攻め込む。徳川優勢の中、千姫(原菜乃華)は茶々(北川景子)と豊臣秀頼(作間龍斗)の助命を訴えたものの、家康が下した決断は非情だった。翌年、江戸は活気に満ちあふれ、僧・南光坊天海は家康の偉業を称え、乳母・福(のちの春日局)(寺島しのぶ)は竹千代(のちの徳川家光)に“神の君”の逸話を語る。そんな中、家康は突然の病に倒れ…という展開。

天台宗の高僧・南光坊天海は“神君家康”のシナリオを描いたフィクサー。卓越した知識と教養を持ち、家康に取り立てられて暗躍、遺言を託された1人。家康の死後、「東照大権現」として神格化を図り、久能山東照宮から日光東照宮に改葬したと言われる。

 「鎌倉殿…」最終回「報いの時」(昨年12月18日)の冒頭、鎌倉幕府が編纂した公式の史書「吾妻鏡」を読む若き家康が事前告知なしのサプライズ登場。「いよいよ承久の乱の始まりか。ドキドキしてきた。一回落ち着こう」と視聴者をいざなった。

小栗の起用理由について、制作統括の磯智明チーフ・プロデューサーは「『鎌倉殿の13人』では、最終回に松本潤さんが徳川家康役で出演させていただきました。そこには、小栗旬さんとの間で長年にわたって築かれた特別な関係があったと思います。そのお返しをせねばならぬという思いは、この時からずっとありました」と説明。

 ただ「物語にどっぷり浸かる役柄をお願いするのも違うように思い、印象的でピリッとした役はないものか…。とはいえ、古沢さんに無理をさせるわけにはいかず、そんなことを考えているうちに、あっという間に台本作りは終盤に差し掛かりました」。ここでクローズアップされたのが天海。「家康の半生を偉業の数々と称え、神として日光東照宮に祀った謎多き天台宗の高僧です。一説には、明智光秀ではないかとも。このドラマは家康が“神の君”となって終わるので、天海は当初から登場することになっていました。か弱き殿を伝説の人物として祀り上げるあたり、北条義時が源頼朝に行ったことを連想させて、小栗さんに演じていただけると、とても魅力的な人物になりそうな感じがしました」と明かした。

しかし、問題が1つ。「天海の年齢です。諸説ありますが、天海は1616年当時、80歳と言われています。その後も長生きして、107歳まで生きたとも。果たして、この老年の役を引き受けてくださるのか…。意を決して、台本を読んでいただき、反応を待ちました。内容については好感触だったのですが、やはり『この役は、老けメークですよね?』と。『家康と同年代の人物なので、相当な老けメークになります。特殊メークをつくるのに最低3週間、当日も3時間かかります…』とお答えしました。結果は…OK!そうした役柄も含めて面白がっていただけたのが、小栗さんの俳優としての懐の深さなのかと思いました。ありがとうございました!」と感謝した。

 古沢氏の台詞やチーフ・村橋直樹監督の演出には“遊び心”もあるという。「天海は徳川幕府のフィクサーとして暗躍した人物。食えない男だと思いますので、小栗さんの怪演はとても説得力があると収録現場で感じました。是非お見逃しなく。1年ぶりに大河ドラマに戻ってきた小栗さんにご期待ください」とアピールしている。

「どうする家康」最終回 天海・小栗旬1シーンも「いい経験」老けメークに自虐「私であるべき役?(笑)」

嵐の松本潤(40)が主演を務めたNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は17日、15分拡大で最終回(第48話)「神の君へ」が放送され、完結した。俳優の小栗旬(40)がサプライズゲストとして高僧・南光坊天海役で登場。大河出演は北条義時役で主演を務めた前作「鎌倉殿の13人」に続き、2年連続9回目となった。大河主演俳優が翌年作品最終回に登場するのは異例。前日16日に出演発表されたものの、かつら制作に3週間、当日3時間かかるという老けメーク(特殊メーク)を施した小栗の姿に、SNS上には「誰?w」などと驚きの声が続出。出演は一連の1シーン約2分ながら大反響を呼んだ。小栗が同局を通じてコメントし、撮影の舞台裏を明かした。

最終回は、徳川家康(松本潤)は豊臣との決戦に踏み切り、乱世を終える覚悟で自ら前線に立った。真田信繁(日向亘)らは家康の首をめがけて攻め込む。徳川優勢の中、千姫(原菜乃華)は茶々(北川景子)と豊臣秀頼(作間龍斗)の助命を訴えたものの、家康が下した決断は非情だった。翌年(元和2年、1616年)、高僧・南光坊天海(小栗旬)は家康の偉業を称え、乳母・福(のちの春日局)(寺島しのぶ)は竹千代(のちの徳川家光)に“神の君”の逸話を語る。江戸が活気に満ちあふれる中、家康は突然の病に倒れ…という展開。

 家康は“神の君”か、はたまた腹黒の狸か。「我らは、有象無象の声に惑わされることなく、正しく、君の偉業を伝えてゆかねばなりませぬ」(語り)。江戸城の一室。天海は、役人たちが覚書にした“か弱き家康”の証言をチェックし「駄目!」「ロクなのがねえ」とボヤキ。稲(鳴海唯)が、家康と鳥居元忠(彦右衛門)(音尾琢真)が“涙の盃”を交わしたエピソードは「駄目ですかね?」と尋ねると「そういうの。こういうやつをもっと集めよ、皆の衆」と指示を出した。

徳川秀忠(森崎ウィン)は「天海よ、立派な話ばかり残すというのも、いかがなものか」。天海は「世間では、狡猾で恐ろしい狸と、憎悪する輩も多ございます。かの源頼朝公にしたって、実のところはどんな奴か分かりゃしねえ」と「源氏物語 夕顔」「吾妻鑑」を手に取りながら「周りがしかと称えて、語り継いできたからこそ今日(こんにち)、すべての武家の憧れとなっておるわけで」。秀忠が「だがのう、人は誰しも間違ったり、過ちを犯したりするもので…」と語るのを制し、天海は「人ではありませぬ。大権現!」――。

 ――大河ドラマの撮影スタジオは1年ぶり。

 もちろん、スタジオは同じなので「懐かしいな」と感じましたけど、当然ながら中のセットの感じはずいぶん違うので、何だか不思議な気持ちになりました。

 ――「どうする家康」の感想。

ドラマの前半は、自分がやってきた義時もそうだったように、いろんなことに翻弄されながら、それでも乱世を生き抜くところが描かれてきましたが、最近は年も重ねて、徳川家康として「修羅の道を行く」という話まで進んできたので、ここから先がさらに楽しみだなと思いながら見ていました。それにやっぱり1年以上やってきた中で、役に対する深みとか重みとか、経験してきた人にしか出せないお芝居が出てくるので、そこはいち視聴者として楽しみに見たいなと。

 ――天海役について。

 僕が主演を務めた「鎌倉殿の13人」の最終回、松本潤くんに出てもらったので、以前から制作陣に、何かしらの形で出てくれたらうれしいとは言われていたんです。ですから、最後の最後でオファーを頂いて出演できるのはうれしいなと思ってお受けしました。

ただ実を言うと、天海がこの時代にはかなりの高齢だということを、僕がいまいち分かっていなくて。かつらやメークを合わせていくうちに「果たしてこれは、私であるべき役なんだろうか?」っていうクエスチョンが浮かんだまま、撮影当日にたどり着きました(笑)。でも、お気づきになった方もいらっしゃると思いますが、劇中で「源氏物語」と「吾妻鏡」を持たせていただけたので、大河と大河の橋渡しと言いますか、何かしらつなげる役割も果たせたのかなと思っています。

 ――思わぬ老け役。実際に演じて。

 見た目、ほぼほぼ誰だか分からない感じだったので、その見た目を利用するというわけではないですけど、自由に楽しくお芝居させてもらいました。その方が面白くなるかなと。義時は役柄上、我慢の芝居の方が多かったから、今回は当時できなかったほうの振り幅で演じさせていただきました。果たして、皆さんが思い描く南光坊天海だったかどうかは分からないんですが(笑)。

 ――視聴者へのメッセージ

 脈々と受け継がれてきた時代の中で、鎌倉時代に生きる人間を演じた僕が、今度は戦国時代に、また全然違うキャラクターで出させてもらったことは、感慨深かったです。1シーンでどんなことができるか分かりませんでしたが、連綿と続いてきた時代や人のつながりを感じさせる役を演じて、いい経験をさせてもらいました。

 それに、最終回に向けて重い展開が続いてきた中で、ああいうシーンがあるのもよかったんじゃないかと思っていて。きっと、天海に対して深い思いを持つ視聴者の人たちもいらっしゃるとは思うのですが、それは一度忘れていただいて(笑)、今回、天海は箸休めとして出てきたんだなと思って楽しんでもらえていたらいいですね。

「どうする家康」壮絶最期「茶々はようやりました」ネット&演出も北川景子絶賛!ラストの台詞に込めた思い

 嵐の松本潤(40)が主演を務めたNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は17日、15分拡大で最終回(第48話)「神の君へ」が放送され、完結した。女優の北川景子(37)が怪演し、新境地を開拓した“ラスボス”茶々は自刃し、壮絶な最期。SNS上には拍手喝采の声が相次いだ。同回を担当したチーフ演出・村橋直樹監督に撮影の舞台裏を聞いた。

最終回は、徳川家康(松本潤)は豊臣との決戦に踏み切り、乱世を終える覚悟で自ら前線に立った。真田信繁(日向亘)らは家康の首をめがけて攻め込む。徳川優勢の中、千姫(原菜乃華)は茶々(北川景子)と豊臣秀頼(作間龍斗)の助命を訴えたものの、家康が下した決断は非情だった。翌年(元和2年、1616年)、高僧・南光坊天海(小栗旬)は家康の偉業を称え、乳母・福(のちの春日局)(寺島しのぶ)は竹千代(のちの徳川家光)に“神の君”の逸話を語る。江戸が活気に満ちあふれる中、家康は突然の病に倒れ…という展開。

 徳川VS豊臣の最終決戦「大坂夏の陣」(慶長20年、1615年)が描かれた。

大坂城が炎に包まれる。秀頼、家臣たち、大野治長(修理)(玉山鉄二)が自刃。最後に残った茶々は「日ノ本か。つまらぬ国になるであろう。正々堂々と戦うこともせず、万事長きものに巻かれ、人目ばかりを気にし、陰でのみ妬み、あざける。優しくて、卑屈なか弱き者たちの国。己の夢と野心のために、形振(なりふり)構わず力のみを信じて戦い抜く!かつて、この国の荒れ野を駆け巡った者たちは、もう現れぬ。茶々は、ようやりました」――。

 家康は合掌した。

 SNS上には「茶々ロス、北川景子ロス」「間違いなく後半のMVP」などと絶賛の視聴者が続出した。

村橋監督は「北川景子さんの怪演もあって、強烈なイメージで物語後半を牽引してくれた茶々というキャラクターでしたが、最期には<一人の人間>に戻してあげたいな、という想いが個人的にありました」と述懐。

 「(脚本の)古沢(良太)さんがお書きになった、周囲のすべてが自決した後、茶々が最後に一人でこぼす台詞『日ノ本か。(戦国の世が終わり)つまらぬ国になるであろう』がとても素晴らしかったのですが、彼女個人の想い以外を背負っての台詞だったので、『最後に彼女が<一人の人間>に戻る瞬間をつくりたい』と古沢さんにお願いして書いていただいたのが、おそらく亡き市(北川の1人2役)との会話であろう『茶々はようやりました』という最後の一言でした」と秘話を明かし「彼女も戦国という時代の被害者の一人として死んでいくことは、最終回の中盤以降に家康の贖罪意識を描いていくためにも、必要なことだったと思います」とした。

第39回「太閤、くたばる」(10月15日)、豊臣秀吉(ムロツヨシ)のラストも強烈だったが「この想いは、秀吉の最期を撮っていて生まれたものです。『あとは任せよ、猿』という言葉を叩きつけて看取った後、涙をこぼして抱き締める茶々。これは台本のト書きにあったものではなく、お芝居の中で出てきた感情でした。母との約束のために“茶々”という存在を演じている茶々と、秀吉を恨みながらも愛情も感じている本当の茶々が、北川さんの中に同居している…演じ手の中で芽生えていた感情も大切にしたいと思った瞬間でした」と振り返った。

 「ラスボス、という記号的になりやすい物語上の役割を全うしながら、演じている上での感情のリアリティーを我々撮る側に訴えかけてくる。その両方を行き来することができることが、北川景子さんの凄さだと思っています」

 総集編(4章構成)は今月29日(後1・05~5・49)に放送される。

「どうする家康」異色の最終回!後半25分キャスト再集結&新撮回想「本来のテイストに」古沢良太氏の思い

 【「どうする家康」作・古沢良太氏インタビュー 】 嵐の松本潤(40)が主演を務めたNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は17日、15分拡大で最終回(第48回)「神の君へ」が放送され、完結した。齡70の主人公・徳川家康は、豊臣との最終決戦「大坂夏の陣」(慶長20年、1615年)に勝利。“戦なき世”の宿願を果たした。翌年、天に召され…時は永禄10年(1567年)へ。ラスト約25分が“走馬灯&新規回想”という大河最終回としては極めて異例&異色の展開となった。第24回「築山に集え!」(6月25日)と第36回「於愛日記」(9月24日)に登場した「松平信康と五徳が祝言を挙げた時の鯉」の伏線を最後の最後に回収。大河初挑戦となった脚本家・古沢良太氏(50)に最終回に込めた思い、作劇・執筆の舞台裏を聞いた。

最終回は、徳川家康(松本潤)は「大坂夏の陣」に勝利。翌年(元和2年、1616年)、高僧・南光坊天海(小栗旬)は家康の偉業を称え、乳母・福(のちの春日局)(寺島しのぶ)は竹千代(のちの徳川家光)に“神の君”の逸話を語る。江戸が活気に満ちあふれる中、家康は突然の病に倒れ…という展開。

 元和2年4月16日。病床の家康が趣味の木彫りをしていると、最愛の妻・瀬名(有村架純)の声が聞こえる。愛息・松平信康(細田佳央太)とともに現れ、安寧の世を成し遂げた最愛の夫を褒めた。家康は「立派なことなんぞ…。やってきたことは、ただの人殺しじゃ。あの金色の具足を着けたその日から、望んでしたことは、一つもない。望まぬことばかりを、したくもないことばかりをして…」と懺悔を口にした。瀬名は「みんなも待っておりますよ。わたくしたちの白兎を」――。

ブラックアウト(暗転)。時は永禄10年(1567年)。家康は25歳。幼き松平信康(寺嶋眞秀)と五徳(松岡夏輝)が祝言を挙げる日。数日前、織田信長(岡田准一)自ら選んだ3匹の鯉を、木下藤吉郎(ムロツヨシ)が届けた。織田・徳川両家の絆と繁栄の証しとして、1匹は信長、1匹は家康、1匹は信康を表している。

 その鯉が夜のうちに3匹とも姿を消し、魚の骨が見つかる。一体、誰が食べたのか。信長の耳に入れば…。岡崎城は大騒動。家康による犯人探しが始まった。

鯉に目がない鳥居忠吉(イッセー尾形)が最も怪しい。家康は刀を振りかぶる。どうする、家康――。「大事な家臣を、鯉と引き換えにはできぬ」「鯉は所詮、鯉じゃ。食うて何が悪い」――。すべては家臣団の戯れ。信長の岡崎入りも嘘だった。家臣団は最初から家康が忠吉を手打ちにしないと信じていた。本多忠勝(平八郎)(山田裕貴)は「皆、よう分かっておるのでござる。殿というお人を、そのお心を」――。

 家臣団1人1人が礼を述べる。家康は「こちらこそじゃ。心より、感謝申し上げる」「わしは、幸せ者じゃな」と感涙。その思い出とともに、76年の生涯に幕を下ろした。

忠次が音頭を取り、信康と五徳も皆と一緒に宴会芸「えびすくい」を踊る。

 瀬名「何とよき光景でしょう。こんなよき日は、二度ありましょうや。まるで戦などないみたい」

 家康「わしが成したいのは、今日この日のような世かもしれんな」「わしは信じるぞ。いつかきっと、そんな世が来ると」

 “走馬灯&新規回想”パートは本来の出番を終えた各キャストが再集結。新たに撮影に臨んだ。

 家康が夏目広次(甲本雅裕)の名前を間違い続けるなど、大河でも視聴者を幻惑、魅了し続けてきた“古沢マジック”が最後の最後も炸裂した。

 終盤は老境を迎えた家康の苦悩や葛藤、孤独や悲哀が浮き彫りに。本来は戦を好まぬ“白兎”が幾多の出会いと別れを繰り返し“狸”に変貌。ついには“神代の昔の大蛇(オロチ)”とまで畏れられた。

 「今回の作品は家康の成長物語と思われがちですが、僕はそうは思っていないんです。そもそも『成長』という言葉も、あまり好きじゃありません。人間の内面的な変化を成長と呼ぶのは傲慢だと思っていて、誰かにとって都合のいい方向に変化した人に対しては『彼、彼女は成長した』と言うけれど、都合の悪い方向に変化した人に対しては『彼、彼女はダメになった』と言ったり。それは、その人にとってそう映るだけであって、本人にとっては全然別の話じゃないですか。家康が狸や大蛇と呼ばれるのも、同じことだと思います。こういう戦術を覚えたといった類のものは成長ですが、この物語の家康は耐え難い喪失と挫折を経験して変化しています。それは決して成長じゃなく、彼本来の優しさや弱さ、人間らしさや幸せを捨てていっている、心が壊れていっている、と僕は解釈して書いてきました。でも、この物語の家康が本当はどんな人だったのか、視聴者の皆さんは知っているよね、と。そう感じていただける人が多ければ、こんなに幸せなことはありません」

 自らも含め“乱世の亡霊”を葬り去った「大坂夏の陣」。南光坊天海や春日局が語る“神の君”。そこから、家族や家臣団、そして視聴者しか知らない“本当の家康”へ。鮮やかなまでに一気に反転した。

 織田信長と濃姫(帰蝶)を描いた映画「レジェンド&バタフライ」が今年1月に公開されたが、時代劇の連ドラは今回が初挑戦。2021年5月から約半年、複数回に分けてスタッフとシナリオハンティング(脚本作りのための取材)。「三河一向一揆」「三方ヶ原の戦い」と並び“3大危機”に数えられる「伊賀越え」のルートも実際に辿るなど、徳川家康ゆかりの地ほぼ全部に足を運び、先に全48話のプロットを練り上げてから脚本執筆に取り掛かった。

 「大坂夏の陣→南光坊天海&春日局→新規回想」という最終回の構成は、実は2年前のプロット通り。“神の君”としての家康を描くため、語りの“正体”=春日局は「割と早い段階で決まりました。春日局が家光に語っている設定が一番適しているかな、と。天海は日光東照宮の造営も任されていて“家康の神格化”事業の一端を担った人。そういうブレーンが最終回に出てくると、より際立つかなと思いました。でも、天海については決断したのは直前です(笑)。ビッグゲストが決まりそう、ということになったので(笑)」と明かした。

 “本当の家康”の集大成となった「鯉のエピソード」は、講談「鈴木久三郎 鯉の御意見」にもなっている逸話(江戸中期の兵法家・大道寺友山の著書「岩淵夜話」)を見事にアレンジした。

 恐ろしい相手(信長)からの贈り物ならば、鯉1匹と家臣1人、どちらが大切かも分からなくなる、という“忠臣・久三郎の諫言”。数々の歴史小説を生んだ作家・山岡荘八のベストセラー「徳川家康」(全26巻)第4巻「葦かびの巻」にも登場し、同作を原作とした83年の大河においては石川数正(江原真二郎)の諫言(第11回「興亡の城」)として描かれた。

 “戦なき世”と引き換えに失われていった家康の日々の、ささやかな幸せが、家族や家臣団と一緒に笑う光景とともによみがえった。

 「岡崎時代に戻る終わり方にして、この作品本来のテイスト、本来の家康に戻して幕を閉じようと(笑)。どのキャラクターも自分の想像を超える働きをしてくれましたが、やっぱり一番は家康ですかね。こんなにも可哀想な人になるなんて、書き始める前は思っていなかったので。書いているうちに辿り着いた、自分の想像を超える境地です。天下を獲っても可哀想と思われる家康なんて、今までいなかったんじゃないでしょうか。そういう意味で、自分なりの新しい家康像は出来上がったんじゃないか、そこへの大きな挑戦はやり切れたんじゃないかなと我ながら思います」

「どうする家康」最終回は12・3% 全話平均11・2%は大河歴代ワースト2位 前作「鎌倉殿」下回る

 嵐の松本潤(40)が主演を務めたNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は17日、15分拡大で最終回(第48話)が放送され、平均世帯視聴率は12・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことが18日、分かった。全48話の期間平均は11・2%。前作「鎌倉殿の13人」の12・7%を1・5ポイント下回り、大河歴代ワースト2位に沈んだ。視聴率は苦戦したものの、新しい徳川家康像をはじめとした新解釈の作劇やデジタル技術「バーチャルプロダクション」を本格導入した撮影手法など“新しい大河”への挑戦には一定の評価があった。 【写真】最終回にサプライズゲストとして南光坊天海役で出演した小栗旬。老けメークを施したため、誰だか分からない?  期間平均の大河歴代ワーストは2019年「いだてん~東京オリムピック噺~」の8・2%。「どうする家康」の11・2%は、これに次ぐ過去2番目の低視聴率。従来のワースト2位だった12年「平清盛」と15年「花燃ゆ」の12・0%を0・8ポイント下回った。  最終回は第28話「本能寺の変」(7月23日)の12・7%以来の12%超と盛り返した。番組最高は初回(1月8日)の15・4%。世代別に見ると、主要ターゲットの「F4層(女性65歳以上)」「M4層(男性65歳以上)」はテレビ朝日「ポツンと一軒家」(日曜後7・58)を、ファミリー層は日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」(日曜後7・58)を下回る放送回が続いた。  個人視聴率は初回の9・6%が番組最高。最終回は7・7%。全48話の期間平均は6・7%。  配信全盛の時代となり「リアルタイムの世帯視聴率」は急激に低下。ゴールデン帯(午後7~10時)の総世帯視聴率(HUT、関東地区)は21年(年間)=58・0%、22年(年間)=52・8%、23年(上半期)=50・0%。2年前から8・0ポイントも激減し、これに伴い、全番組の数字が低下しているものの、今年度前期の連続テレビ小説「らんまん」や7月期のTBS日曜劇場「VIVANT(ヴィヴァン)」のように数字を上げた作品もある。  第10話「側室をどうする!」(3月12日=7・2%)がテレビ朝日「2023ワールドベースボールクラシック1次ラウンド・日本×オーストラリア」(後7・08~10・00=43・2%)、第38話「唐入り」(10月8日=7・4%)が日本テレビ「ラグビーワールドカップ2023 日本×アルゼンチン」(後7・45~9・59=21・5%)など、スポーツのビッグイベントと放送時間が重なる“不運”もあった。  「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛けた大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描いた。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となった。  最終回は「神の君へ」。徳川家康(松本潤)は豊臣との決戦に踏み切り、乱世を終える覚悟で自ら前線に立った。真田信繁(日向亘)らは家康の首をめがけて攻め込む。徳川優勢の中、千姫(原菜乃華)は茶々(北川景子)と豊臣秀頼(作間龍斗)の助命を訴えたものの、家康が下した決断は非情だった。翌年(元和2年、1616年)、高僧・南光坊天海(小栗旬)は家康の偉業を称え、乳母・福(のちの春日局)(寺島しのぶ)は竹千代(のちの徳川家光)に“神の君”の逸話を語る。江戸が活気に満ちあふれる中、家康は突然の病に倒れ…という展開。  「鎌倉殿…」主演の小栗がサプライズゲストとして2年連続9回目の大河出演。一目見ただけだと誰だか分からない老けメークが視聴者に驚きをもたらし、SNS上で大反響を呼んだ。  「本能寺の変」を家康と織田信長(岡田准一)の“ブロマンス”(男性の熱い友情、精神的なつながりを意味するBrotherとRomanceの合成語)として描くなど、斬新な展開をしつつ史実に着地。家康が家臣・夏目広次(甲本雅裕)の名前を間違い続けるなど“古沢マジック”による伏線回収も連発した。  「バーチャルプロダクション」は新しい映像表現を求めつつ、働き方改革と酷暑などロケのリスク回避を目的に本格導入。お市の方&ラスボス茶々の1人2役に挑んだ北川らキャストの熱演も光った。

「どうする家康」最終回 松本潤ラストメッセージで感謝 老けメークも経験 家康役全う「自信につながる」

 ――撮影を終えて

 長かったなとも思うし、まだまだやりたいなという気持ちもあるし、いろいろな感情が複雑ではありました。ただ、撮影を終えてみて、ここまでやってこられたのは見てくださっている視聴者の方をはじめ、一緒に作品を作ってくれた出演者・スタッフの皆さんのおかげだなと。本当に皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいでした。

 (出演者・スタッフの皆さんと)家族以上に毎日顔を合わせて現場でいろいろな話をしながら撮影する日々が、僕の中で日常になっていたので。それが最後までやり遂げられてよかったなと思っています。

 ――家康の一生を演じて

13歳から亡くなるまでなので、60年間くらい家康公の人生を演じさせていただきました。老けメークや体の使い方も徐々に変えていくとか…家康公を通して、いろいろな経験をさせていただいたなと。(今後の)自信につながるんじゃないかなと思います。

 ――去り行く人々(物語上、順に退場していく登場人物たち)への思い

そのシーン(各登場人物のラストシーン)が終わると、それぞれの方がいなくなっていく、離れていくというのが、“お疲れ様でした”という思いと、寂しさと…いろいろな思いがありました。何より徳川家康という人物は、それぞれの登場人物から託される思いみたいなものが凄く強かったので、役者さんたちからも(思いを)頂きながら最後まで演じるというのが、自分のやるべきことだなと思って演じてきました。

 ――「どうする家康」が現代に送るメッセージ

現代も、今なお争いごとがある世の中だと思うから…戦国時代がどういう時代で、その時代をどんな思いで生きていた人達がいたのかというのを受けて、今を生きる人たちがどういうことを感じてくださるかというのが一番のメッセージだと思うので。見てくださった方それぞれが感じてくださることが答えなのだと思っています。

 ――視聴者の皆さまへ

 大河ドラマ「どうする家康」をご覧いただいた方、応援してくださった方、本当にありがとうございました。

 この作品が、皆さんにとって何か心に残る作品だったら自分たちは作品をつくった意味があると思いますし、何年か経って見返していただくとまた違ったふうに感じるかもしれないので、これからもこの作品を愛していただけたらと思っております。

 1年間、長きにわたり支えていただきありがとうございました。