· 

「誰とでもうまくやれる人」がしている “苦手な相手” への工夫。人間関係は「好きか○○か」で判断する

「なぜ同僚は “あの人” とうまく付き合えるのだろう。自分にとってはすごく苦手な相手なのに……」
「自分は苦手な人に対しつい嫌な態度をとってしまう。だからいつまでたってもいい関係が築けない……」
「誰とでもうまくやれている同僚がうらやましい」

職場や仕事の人間関係において、“どうしても苦手な相手” との付き合い方に悩んでいませんか? 無理をして「受け入れなきゃ」「仲良くしなきゃ」と思うと、ストレスになってしまうもの。とはいえ、仕事をスムーズに運ぶには、苦手な人ともうまくやれるほうがいいですよね。

では、どうすれば苦手な相手とも上手に付き合えるのでしょう。今回は、誰とでもうまくやっていくためのヒントをご紹介します。

【ライタープロフィール】
橋本麻理香 
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

「考え方」を変える

プライベートなら、どうしても苦手な人とは距離を置けばよいですが、ビジネスではそうはいかないのがつらいところ。ストレスなく職場の人間関係を良好に保つためには、考え方を変えてみるのがおすすめです。

たとえば、苦手な上司や気の合わない同僚に対する「嫌い」という感情を、少し緩めてみましょう

精神科医の樺沢紫苑氏は、「『嫌い』という感情を減らすだけで、人間関係はものすごくうまくい」くとし、こう述べています。

「好き嫌い」の二者択一は、原始的な脳の「扁桃体」の条件反射です。

(中略)

最近の脳科学研究では、言語情報(大脳からの入力)が「扁桃体」の興奮を抑制することがわかっています。「言語」で、扁桃体をコントロールできる。つまり、「じっくり考える」ことで、「好き嫌い」のレッテル貼りを修正することが可能なのです。

人を判断する場合は、「好き」か「普通」で判断していきましょう。

(カギカッコ内および枠内引用元:ダイヤモンド・オンライン|精神科医が教える「嫌いな人をなくすワーク」

あなたが相手を「嫌い」と感じていたのは、じつは脳が勝手にレッテル貼りをしていただけのこと。自分自身の考え方をコントロールすれば、その感情は「普通」と置き換えることが可能なのです。

感情の置き換えがうまくいかない場合は、苦手な人を “観察対象” としてみるのはどうでしょう。キャリアコーチでコミュニケーション研修講師の菊池啓子氏は、苦手な人を「『観察』する気持ちで接する」メリットをこう説明します。

植物や虫などを観察する感じで、事実情報だけに注目をするようにしていきます。意外と受け入れられる特徴が見つかるものです。

(カギカッコ内および枠内引用元:Oggi.jp|苦手な人との付き合い方は?「なんとなく苦手」を解消する方法【キャリアコーチ監修】

苦手な上司や気の合わない同僚を「嫌い」と感じた途端、相手の “よい面” まで受け付けなくなってしまう……ということはよくあるもの。そんなとき、感情をいったん脇に置いて苦手な相手を観察してみれば、そこには発見や学びがあり、相手をよりよく知ることができるかもしれません。相手に対する興味も少し湧いてきそうですよね。

じつは、筆者にも仕事上で苦手な人がいて、接するたびに不快な思いをしています。その人は、業務の関係でどうしても関わらざるを得ない相手……。うまく付き合えないことで悩んでいたため、その人を観察することにしました。具体的には以下のことを考えながら、相手を見てみたのです。

  • なぜ、嫌な言い方をするのか?
    → 思ったことを口にしないと気がすまないようだ。相手がどう思うかなどの想像力が欠けているのではないか。だから、ひとりで長くしゃべり続け、こちらがうんざりさせられるけれど、率直な意見が的を射ていることもあるから、素直に耳を傾けてもいいかも?

  • なぜ、こちらが嫌な気分になっているのがわからないのか?
    → 共感性があまり高くないのではないか。私に対してだけではなく、どのような場においてもあまり空気が読めていないようだけど、ズバッと物を言えるところは長所でもあるのかも?

相手を観察してみると、自分の抱えているモヤモヤが明確になりました。ただ「苦手だ」とだけ思っていたときと比べ、自分が何に困っていたのかを言語化しただけでもスッキリした感覚が。相手の “よい面” にもちょっとだけ目が向き、うまい付き合い方が見えてきた気がします。

また、相手を以前より理解できたと同時に、「自分はどういう相手が苦手なのか」「自分は相手の話を聞きすぎてしまう。そのせいで疲れてしまうのではないか」など、それまで気づいていなかった自分自身のこともわかったのは思わぬ産物でした。

自分の “感情” ではなく相手の “言動” にも意識が向くため、気持ちの疲労度もいつもより少ないように感じましたよ。みなさんもぜひお試しを。

「接し方」を変える

苦手な人とは、なるべく関わりをもちたくないし、顔も合わせたくないと感じますよね。ですが、会社で働いている以上は、苦手な人ともよい関係を築いていきたいもの。

そこでおすすめしたいのは 、少しだけでもいいので “相手に自分から近づいていく” こと。苦手な人に対しても自分から心を開いていくことで、人間関係は好転していきます。

「そう言われても、苦手な人に近づくなんて無理!」と思うなら、次の4つのなかから、実践できそうなものを見つけてみてください。人材育成コンサルタントの守谷雄司氏が、苦手な人と心の距離を縮めるコツとして次の4つを挙げています。

  1. 「先手を取って挨拶をしてみる」
  2. 「とにかく頻繁に近づく」
  3. 「似ていることを話題にする」
  4. 「相手の弱点に役立ちたいと申し出る」

(カギカッコ内引用元:幻冬舎plus|「苦手な人」と上手につき合う4つのコツ まずは自分から挨拶してみよう

なぜ、こうまでして苦手な相手に近づくべきなのでしょう? その理由は「接触理論」にあります。心理学者の内藤誼人氏が、次のように説明しています。

人は接触する回数が増えるほど、その相手への好意も信頼も高まる。これは「接触理論」と呼ばれるもので、テキサス・クリスチャン大学のドナ・デスフォーゲスの研究で、「嫌いな人でもやりとりをした後には、偏見や差別の心が減る」ことが確認されている。

(カギカッコ内および枠内引用元:プレジデントオンライン|信頼される人のコミュニッケーションは”質よりも総量” ※太字は編集部が施した)

たとえば、お昼休みに声をかけてみる。仕事に関して質問をしたり、フィードバックを求めたりしてみる。仕事の合間に雑談をしてみる——。こうして接触回数を増やすことが、良好な人間関係や協力関係を築く助けになります。

この章で説明してきたような “自分から働きかけることで関係が良好になっていく現象” は、「返報性の原理」でも説明できます。返報性の原理とは、「他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱く」という心理のこと(カギカッコ内引用元:Wikipedia|返報性の原理)。

つまり、人は好意を示された際には「好意を返したい」と感じるものなのです。

苦手な相手に対してこちらからあいさつをすれば、相手も返してくれる。こちらから声をかければ、相手も自分に話しかけやすくなる。自己開示すれば、相手も大切なことを話してくれる――というように、接触する回数が増えるほど、相手から信頼されやすい状況をつくれるのです。

苦手な人とも良好な人間関係を築いていければ、「苦手だ……」というネガティブな感情が和らぎ、仕事がスムーズに進みやすくなるでしょう。あなたもまずは気軽に笑顔であいさつすることから始めてみてはいかがでしょうか。

***
苦手な相手ともうまくやるための「考え方」と「接し方」を紹介しました。ぜひ、できることから試してみてください。きっと、あなたも「誰とでもうまくやれる人」になれますよ。