ぼんやりしていた僕の頭の中に、 いきなり稲妻が光りました。
目をこすり、こすった目じりには うっすら涙が滲んでいました。
父さん・・・ そう見えた姿は弟だったのです。
成長するごとに、顔、声、体格、なぜか仕草まで、 父さんに生き写しと誰からも言われるようになっていた弟。
弟が着用していたのは、父さんのスーツでした。
「これ父さんの服」と弟に言われるまで、気づきませんでしたが。 弟はただ、ピッタリだからというだけの理由で着たようです。
しかし、それを知ったが最後、弟にばかり気を取られた僕でした。
どう見ても、若かりし頃の父さん、あなたに生き写しです。
繰り返しになるけれど、 父さんに、今日のこの場所にいてほしかった。
そして「育ててくれてありがとう」と言いたかった。 初めてネクタイを締めた弟の姿も見せたかった。
様々な思いが去来する中、僕に「おめでとう」と言った弟の声、 それがまたあまりにも父さんに似過ぎていて、 涙を堪えきれなくなったのです。
「男は人前で泣くものではない」 父さんの言いつけを守れなくてすみません。
けれど、本日だけは父さん、許してください。 まだ甘ちゃんの僕ですが、これからみんなを守っていきます。
コメントをお書きください