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⓺『おすすめの本・まとめ』Apex product 読書好き 吉田哲隊長より。興味がわいた方、是非読んでみてください。

15歳の叫びあんな大人になりたくない 
-10代の自分を最高に好きになる方法-
松谷咲
2023年
みらいパブリッシング
小・中・高と受験を経験。進学校を退学。
自力で一人暮らしを経験し、
現在タトゥー彫り師。
16歳の赤裸々な声を聴いてみませんか?
著者のお母様を知った時が
丁度この本の出版時でした。
この立派なデンタルクリニックの
娘さんが中卒でタトゥー彫り師??
なんて寛容なお母様と思ったけれど
本を読むと、お母様にも
たくさん葛藤あったよねぇ。
親の「良かれと思って」は、必ずしも
子どもにとってプラスになるわけではない。
わかっているんだけど、親の立場になると
「良かれと思って」の言動になりますよね。
私も子どもの時の選択基準は「母が喜ぶ方」だった。
重要なことは押し付けではなく、
親の背中を見せることですかね。
今はもう「いい学校」「いい会社」の時代じゃない。
「自立と共生」
子ども達は本能でそれを感じ取っているので、
大人のルールで支配される学校へ行かないという
選択をする子どもが増えているのだと思う。
著者も感じていたが、学校(会社)と
家だけだと関わる人は40人程度。
しかも似ている環境の人ばかり。
☆たくさんの人に会うこと。
☆色んな価値観を知り、認め、尊重すること。
これが本当に大切なことだと思います。
著者はこれが出来たことで、一気に世界が広がり、
自分が大好きになり、やりたい仕事が見つかった。
読んでいる間の脳内BGMは尾崎豊。
「この支配からの卒業~♪」
 
16歳が綴る、人生哲学。
老若男女、全ての人に読んで頂きたい一冊です。
 
 
傲慢と善良 辻村深月
控えめな性格に見えて、実は『傲慢』であり、良い子ようで、ただ無知であるだけの『善良』。
痛いところをつかれて、まさに自分の中の傲慢と善良とを振り返りつつ、読み終えました。
何らかのしがらみがあると、人はそこで適応、対応しようとしてしまうのかなと。そして、そこで他者と比較することで傲慢さも生まれるのかなと。この本で言う善良さは、人の言いなりになって何も知らないまま育ったような人の持つ特性で。何も知らず聞き分けがよく、言うことを素直に聞くことのよう。
ラストが良かったです。
近年、やたらと発達障害とあちこちで聞こえて来ます。エジソン、アインシュタインも発達障害のレッテル。
子供は発達途上、未熟で当たり前と思うし、昔はそんなのなかったし、疑問に思うこの頃。そこに見つけた、発達もどきという本。子育て中の親御さんには、是非読んで欲しい。
東野圭吾 「あなたが誰かを殺した」
加賀シリーズの新刊が出ていたので買ってみました
 
ある別荘地にてパーティーをしていた団体のメンバーが次々と殺害される事件が発生した。犯人は逮捕され、死刑になるために誰でも良いから殺害したかったと供述しているが、被害者家族たちはそれに納得できなかった。そこで彼らは再び事件のあった別荘地に集まって真相を探る会を開催することにし、その中の一人が解明の手助けとして長期休暇中の加賀を連れて参加することとなった。
彼自身も事件には興味を持っており「誰でも良かった」と犯人は語っているが多くの中からこの団体を標的にした理由が何かあるはずだと考え、この会でそれを解明しようとする、というお話。
 
シリーズ物のミステリー作品となります。
警察の捜査が一通り終わった後という設定なので新しい手がかりを探すよりもいかに参加者たちから情報を引き出すかと言う部分を中心に描かれています。このあたりはこれまでの加賀シリーズの中にはなかった展開で見所の一つとなっています。
真相の内容なども話が進むにつれて徐々に明らかになったり、予想してない方に向かったりなど話の展開も面白くて最後まで飽きずに読めます。色んな作家さんを読んでから東野さんの作品を読むと、構成や書き方などの上手さはやはり凄いと改めて感じますね。
それとシリーズ物ではありますが前作と特につながりはないので本作だけ読んでもOKです。
 
このシリーズはどれも面白いので気になる方はぜひチェックしてみてください。
原田マハ
「フーテンのマハ」
猫舌じゃなくて熱々大歓迎の鉄舌?を持つ原田マハさんが、親父内蔵型弁天様と呼ぶ編集者、大学時代の同窓生御八屋千鈴さん等々引き連れて、ぽよよんグルメ旅と称する、美味いもの目掛けて、地図もその土地の名勝も頭に入れず、ついでに変な買い物をしがちな、フーテンの旅をした顛末を記した本書。取材旅行先のパリでイケメンに釘付けになるわ、遠野で座敷童に願い事するわ、高知で絶品餃子に出会い前世は餃子と称するわ、八面六臂の見事な食べっぷり。ついでに?作者の処女作「カフーを待ちわびて」の制作秘話にも行き着く、お買い得すぎる一冊。
塚本邦雄『ことば遊び悦覧記』
和漢洋に及ぶ深い教養。一読すぐそれと分かる強靭な文体。小説から評論まで幅広いジャンルを自在にまたいだ旺盛な作品群…もはや達人や巨匠、といったくらいでは収まらない、「日本語の怪物」としか呼びようのない存在がいて、私にとっては石川淳とこの塚本邦雄がそうです。
本書は古代歌謡から現代詩に至る作品群から塚本が選び抜いた言語遊戯の作品をまとめたアンソロジー。いろは歌のヴァリエーション、物の名前を織り込んだ和歌の数々、回文など先人たちの洗練された遊び心がどのページにも躍動しています。
中でも圧巻なのは碁盤や山形に言葉を配した「形象詩」の一群でしょう。いわゆる「カリグラム」や「タイポグラフィ」ですね。塚本自身も本書の中で、藤原定家等の歌を散文詩に翻案し、かつシンメトリカルな幾何学的図形に配置した創作を披露しているのですが、よくぞここまでのものを思いつき、作品化したものだと、感嘆を通り越して畏怖すら感じてしまいます。まさに帯で竹本健治が述べてるように「宝典である以上に毒の蜜」なのです。
佐藤愛子の最後のエッセイということだが、死ぬまで書くということで連載中とのこと。
戦争を経験している人は多かれ少なかれ戦争体験を語ることが多い。彼女のエッセイも戦争の体験が語られている。「我が大君に召されたる いのち栄えあるあさぼらけ…………」などの歌が披露されているが私も歌ったことを思い出した。今日11月5日が彼女の誕生日なので100歳を迎えたことになる。
「あの女」とは…どの女❓
多分"あの人"なんだろう…と途中まで思っていましたが、読んでいくうちに、それは人それぞれの解釈で良いのでは…という思いに変わりました。
登場する全ての"女"に癖あり、悪あり、胡散臭さあり…
この物語に登場する人物で、共感できる人はいません。
"もちろん"女"ですが、そんな"女"にくっついている"男"もです…
"タワーマンションの最上階に暮らす売れっ子作家『三芳珠美』は人生の絶頂。
一方、売れない作家『根岸桜子』は安マンションで珠美を妬む日々。
あの女さえいなければ…
ところが珠美がマンションから転落。
女たちの運命が逆転するのか…"
                                  =一部裏表紙より=
第一章から第五章までありますが、短編ではありません。長編小説です。
"次々現れる怪しい女、女、また女❗️
女がいるところに平和なし…"
                                       =裏表紙より
語り手が細かく変わりながら、物語は進んでいきます。
平和なし…ですが、ドロドロあり…
そしてビックリの結末ありです。
"あの女"、自分なら"どの女"を思うか、是非、確かめてみてください。 
*解説から読まないでください。
ネタバレ注意❗️です。
「あの女」 真梨幸子
「黒い糸」
染井為人
亜紀が結婚相談所でアドバイザーを始めたのは9年前。
5年連れ添った夫と離婚し、当時3歳の息子を女手一つで食べさせていくためだった。
結婚相談所の業務内容はけっして楽ではない。
面倒な会員の相手をしなくてはならないし、理不尽なクレームを受けることも日常茶飯事だ。
そして、今まさに、面倒な客を担当していた。
江藤藤子。
アポもとらずいきなり事務所に押し掛けてきては、何度もしつこく難癖をつけてくる。
事務所で、とうとう亜紀と彼女が言い合いになってからというもの、亜紀の家には、不審な無言電話が度々かかってくるようになった。
そんな亜紀の息子・小太郎が在籍する6年2組では、約2ヶ月前の12月4日、小堺櫻子ちゃんという女子児童が小学校からの帰宅途中に行方不明になっていた。
櫻子ちゃんがどこへ消えたのか、未だ誰にもわからない。
その件のすぐ後、精神的なことからか、担任の女性教師はいきなり辞めてしまい、4年1組の担任を務めていた祐介が、急遽、6年2組の担任を任されることとなった。
それらの出来事から間を置かず、今度は亜紀と小太郎のアパートの玄関の外が、まるでそこが刺殺事件現場であるかのように、血の海と化しているという不気味な嫌がらせが起きる。
その後も、そのクラスではまた女児が暴漢におそわれ、意識不明の重体となってしまうという事件が起こった。
誰がやったのか―――。
2ヶ月前、女児が行方不明になり、今度は男子生徒の家が凄惨な被害を受けた。
加えてまた別の女児が暴漢におそわれた。
まさかこれらの事件が繋がっているなんてことは・・・・・・。
特定のクラスの周辺で立て続けにおきる事件の犯人は同一なのか、またその目的とは・・・❗️
こいつが怪しい。
いや、こいつか❓️んん❓️こっちか⁉️
何度も右往左往しながら、やっぱりこいつか‼️と思った時には、想像の遥か斜め上をいく真相に驚愕させられる‼️
祐介の兄の風介のキャラがかなり独特です~❗️
ラストは、もう、ホラー‼️
怖かった~😂
ゾワゾワしたい方、ぜひ😊
「ラン」
  森絵都
9年前に13歳で家族を事故で失った環、
その後、一緒に暮らしていた叔母も亡くなり
ひとりぼっちになる寂しさよりも
あの世(冥界)の方がリアルに身近に感じ
そしてある日とうとうその境界線を突破してしまった。
そこでは亡くなった家族が楽しそうに暮らしていた。
家族に会いたい一心で自らの足で冥界への道のりを走り抜く決心をするが……
あの世(冥界)とこの世を行ったり来たりとか
現実離れした話ではあるけれど
なんだか納得できちゃったりしてね。
生と死は紙一重なんだよね。
要するに成仏できてないのだけれど
それは亡くなった人が残して来た人への思いばかりでなく
送った側の後悔やら哀しみもあるんだ、と。
哀しみを乗り越え
人間としても成長し
一生懸命に生きていく姿を描いているストーリー。
フルマラソン42.195キロなんて
ただただ苦しい距離
でも
「42.195キロ先でまた会おう!」
なんて清々しいんだろう。
さてさて
みんな無事にゴールできたのかな?
ラーメン赤猫(1)/アンギャマン著
少年ジャンプ+にて連載中の少年作品。
”異色なラーメン屋さん”
珠子、ヒロイン兼主人公。
ある日、ラーメン屋の面接に行った。
そこでは働くのは猫だらけ。
「犬派」というNGワードを言ってなぜか採用されてしまい...ラーメン漫画開幕!!!
子供向けかな?って思ったら意外と楽しめました。
最強ジャンプでもOKなのかな~って思ったが何だか違ったので「(少年ジャンプ)+」で良かったかも
コミックス1~5巻発売中☆
2022年10月に発売された漫画を紹介していきまぁ~す!
「憚りながら」 後藤 忠政
著者は日大最大の暴力団「山口組」直系の舎弟として「後藤組」を立ち上げた元組長です。いわゆる経済ヤクザの先駆者で数々の企業の裏方経済に関わって来ました。引退後に神奈川の某寺で得度、仏門に入り、現在はカンボジアに居を構えているそうです。
不良少年時代の生い立ちは鑑別所との往き来と良くあるパターンですが、彼の祖父にあたる人は桁外れの人物で、静岡県富士宮の駅から2キロ範囲の土地を持つ大地主でした。「駿河銀行」や「現伊豆箱根鉄道」、東電に吸収された「冨士川発電」の創設などに関わり、日本に居た頃の「蒋介石」の世話をしていたり、戦後になって東京湾から旧陸軍が沈めた金塊を引き上げたりしました。この金塊はGHQに持っていかれたそうですが。とにかく大財閥であった訳ですが、父親の代で土地以外は失ったそうです。
ヤクザの世界に入るとすぐ頭角を現し、山口組門下で芸能プロダクションを起こして興行で成功しますが、歌手、俳優、力士の実名がドンドン出て来ます。
政治面では元公明党の大物「竹入義勝」や「矢野絢也」との関わり、そして創価学会との攻防があります。また笹川良一をバックにのし上がった元参議院議員「糸山栄太郎」襲撃事件。「ミンボーの女」の監督「伊丹十三」襲撃事件も後藤組の若い衆がやったと後で知り、ヤクザの理論を振りかざして喝采しています。
消費者金融の大手だった「武富士」が、株式市場からの批判があったにも関わらず上場出来たのは何故か。詐欺グループ「投資ジャーナル」の中江滋樹との関わり。このあたりの話は実際に関与している訳ですから凄く面白いです。
右翼には珍しい理論派の「野村秋介」との友情は読みごたえがありました。朝日新聞東京本社で社長や首脳陣の前で拳銃自殺しましたが、三島由紀夫並みの本物の行動右翼ですね。
すでに反社会的勢力はかつて無い程追いやられつつある現代であり、反社との関わりが少しでもあれば抹殺されかねず、その家族であるだけで「社会の仮想敵」扱いになります。それを「極道」なりの道を説いて、社会の正義を語るのはお門違いも甚だしい事で、得度したからって好き勝手を言うなと最後に思いました。良くある社会に責任転嫁する「いてもいいだろこんな馬鹿」のパターンです。
闇の部分を知る意味で面白い本です。 
「彼女たちの犯罪」横関 大(幻冬舎文庫)
久々に、本格派のミステリーを読みました。この作家さんの本は初読みですが、文章力がある上にストーリー展開も巧みで、一気に読ませる力がありました。
世田谷の高級住宅地に住む神野由香里(じんのゆかり)は、ある日、嫁ぎ先から失踪し、一週間後に伊東の海で遺体となって発見されます。
現場付近には、由香里のものと思われる白いパンプスも残され、警察は「自殺の可能性が高い」とみなして事情聴取を始めます。
一方、大手自動車メーカーの広報に務める日村繭美は、理想的な伴侶と出逢うべく、お見合いを繰り返していました。
ある日、取材先の野球グラウンドで打球に当たった彼女は、意識を失って病院に担ぎ込まれます。そこで彼女を診察した外科医は、偶々、大学時代の一つ先輩の野球部の神野智明でした。
彼女は大学時代にチアリーディング部に属しており、学園祭の夜、一番可愛がっていた後輩のA子が、この神野に乱暴されたのを目撃していたのです。その後、A子は学校を辞めて田舎に帰ってしまい、繭美はずっとA子のことが気にかかっていました。
ところが、その後、神野の方から積極的なアプローチがあり、彼の口から
「実はA子の方から告白され、あの夜のことは合意の上だった」
と打ち明けられます。
現役の医師で魅力的な神野と付き合いだした繭美でしたが、ある時、彼の忘れ物のネクタイを病院に届けに行った際に、彼がすでに何年も前に結婚していた事実を知らされます。
一度は別れを決意した繭美でしたが、智明の妻の由香里を目にした彼女は、
「あんな地味な妻は智明には相応しくない。彼女さえいなければ、私が彼と結婚できるのに」
と思い詰め、由香里に急接近します。ところが、当の由香里の口から出たのは、
「彼とそのまま別れないで欲しい」
という予測も付かない言葉でした。
由香里の葬儀からしばらく経った頃、彼女が崖から身投げしたとされる日に、近くの食堂で男性と一緒に食事をしていたという目撃情報が上がってきます。
そこで、世田谷署の刑事の上原武治は部下の熊沢理子と共に、由香里事件の捜査を開始したところ、彼は医師の智明とOLの繭美が不倫関係にあったことを突き止めます。
ある日、赤坂の超高級ホテルに呼び出された繭美は、ホテルの一室ですでに「亡くなっていた」筈の神野由香里と、大学時代に智明と強引に関係を持たされたA子と再会し、彼女たちからある提案をされます。それは、智明の妻の由香里と愛人の繭美、智明に恨みのあるA子の三人が「全員幸せになれる」という壮大な計画でした。
ともかく、二転三転するストーリー展開と、登場人物たちの複雑な相関関係なども含めて、最初から最後まで目が離せないミステリーの大作でした。
こちらの作品は、2023年の7月から、深川麻衣さん主演でドラマ化されており、すでにご覧になった方も多いかもしれません。しかし、原作とドラマでは微妙に結末が違っているそうなので、是非、本書もお読みになってみてください。
過労死、過労自殺の現代史
熊沢誠著  岩波現代文庫
2018年12月刊
先日から
宝塚歌劇団員の自殺で
遺族、歌劇団が会見を開き
話題になっていますし
医師の働きすぎによる自殺も
遺族が怒りの告発をしています。
働きすぎに倒れる人たち
というサブタイトルが
本書の性格、主張、怒りを表しています。
この本の刊行当時、
著者の熊沢誠さん(甲南大学教授)とは
フェイスブックで繋がってまして、
新刊が出ると予告されたので
5年前に新刊で出たときに買い
大事にしまいすぎて(笑)。
上のような事件を目にして
いざもう一度よみたくなったときに
どこに置いたか分からず借りて来ました。
400ページ超えのゴツイ文庫ですが、
著者の想い、パワーに押されるし、
読みやすくて一気に読める。
長時間の
しかもしばしば深夜にまで及ぶ労働、
しかも強制ではなく自発的な?労働
を事実上強いられる上に
最近の特徴として、
各種ハラスメントが絡む事件が多い。
宝塚の事件でも歌劇団と遺族の主張が
この点で争っている。
ちなみに
宝塚事件でしばしば解説されている
時間外労働が月100時間を超えて
行われたときに過労死が業務と結び付く
という基準が採用されたのは
2001年の新基準からで
それまでは労働時間との関連では
基準がなかったのだ!!
(25ページ(1)参照)
また心因性の精神障害による自殺も
1999年の新基準で業務上と
判断される至る(28~29ページ
心理的負荷評価表参照)。
宝塚事件の事例では
睡眠時間が3時間しか取れなかった
というほどに長時間労働で
心身ともに疲れきっていたと思われ、
心理的負荷は相当にきつかったと
考えられる。
そして宝塚だけでなく
あらゆる職種あらゆる業種で
脳、心臓疾患につながる長時間労働が
行われておりバブルのモーレツを超える
とまで書いており
その構造的な背景事情にも言及している。
あいまいな労働時間管理、要員の不足、
ストレスの多い仕事、上司が抑圧的
厳しいノルマ等等。
いくつかは宝塚の例にも見られる。
本書はこうしたハラスメント付きで
長時間労働が事実上強制されている
日本の労働実態を90年台前半と以降に分け
さらに職種別に詳細な分析をしている。
トラック輸送、工場、事務系、教員等。
次に若者たちの過労死過労自殺を扱い、
ハラスメント、過重労働の実態に入る、
そしてハラスメント付きで自殺の背景には
過酷な労働実態を見て見ぬふりをする
企業別労働組合の実態があるのではないか?
という問題をつきつけている。
また長時間労働ででもガンバル他はない
という決意をせざるを得ない労働者の覚悟は
個人処遇化に抗わず、
個人の受難に寄り添うことを放棄した
労働組合に対する労働者の距離感の表明
でもあったとまで書いている。
そんな困難な状況ででも
めげずに立ち向かう遺族や弁護団の力、
真実究明に向けての監督署や裁判所の役割、
資料としての判決文や裁判資料が
なかなか表に現れてこない
企業労務の実態を明らかにする
手がかりになることが多いし
90年台のある時期までは
働きすぎ、過重労働による死亡を
労働災害とは認めなかったのであり
その開かずの門をこじ開けて
労働災害と認定させたのは
労基署でも労働組合でもなく
真実究明に向けた遺族の執念であり
遺族の想いに応えて闘った弁護団の執念だ
と書いている。
全国で初めての過労死110番の開設が
1988年6月、初日だけで135件
相談の電話があったという。
また宝塚事件の弁護団弁護士は
例の電通事件のときの代理人も務めている。
大学を退職して研究資料にも
簡単にはアクセスしにくい状況で
これだけの資料を集め
ゴツイ告発の書を書き上げた著者の執念も
やはりスゴいです。
絶対のおすすめです!!
なお、今夜19時30分からの
クローズアップ!現代は
職場の死を防ぐには  過労死防止法10年
ご覧ください。
昭和ブギウギ   輪島裕介 NHK 出版新書 
朝ドラ ブギウギの関連書としては最も学術的価値の高い本である。 筆者は大阪大学の芸術学の教授。
この本は笠置シヅ子と服部良一を軸としながら道頓堀 ジャズやスイングからブギウギまでの大衆音楽史を縦糸に、松竹 東宝 吉本などの 関西興行資本の東京進出を横糸とした昭和芸能史である。
朝ドラが笠置シヅ子の出生など事実を踏まえながら 趣里が好演している背景がわかる本でもある。
音楽的にいくつか面白かったことは 当時の淡谷のり子 が正統派のベルカント唱法であるのに対し地声の笠置を配置したことや 昭和モダンの服部が 笠置以外にも 1市丸の三味線ブギウギ  高峯秀子の銀座カンカン娘を 巧みに作曲していることがわかる。
 ちょうど今 数年前の 服部良一カバー集CDを聞いている。福山雅治が東京ブギウギを 陽水が胸の振り子  ラッパと娘を松浦亜弥  蘇州夜曲を小田和正が歌っている。テレビの前のラジオの時代の芳醇な音楽が 素晴らしいことがわかる。
「羊と鋼の森」 宮下 奈都
2016年本屋大賞の大ベストセラーですね。
タイトルを見ると何のことか分かりませんでした。読み進めれば、ピアノという楽器を見事に表現した標題であり、内容であると思いました。
17歳の主人公「外村」が、担任から板鳥さんという「調律師」を体育館にあるピアノに案内するよう言われ、そこで初めて調律作業を耳にします。普段気にも止めなかった古い黒い大きなピアノ。その人が調律を始め鍵盤を叩くと、開いた蓋の下から肌に染みる森の匂いがしました。鍵盤に繋がった鋼の弦を、羊毛のフェルトがハンマーになって叩くと、音の景色が森となって浮かんだのでした。
この衝撃で彼は「調律師」になることを決心、板鳥さんの薦めで調律師養成学校で学び、板鳥さんの居る楽器店に就職します。そこで色んな調律師の技術や考え方を知り、色んなピアノに出会い、色んなピアノ奏者の物語を知るようになります。
ハンマーのフェルトの固さを感じ取り微妙に針を刺して調整する繊細な技術ですが、奏者の思いを聞き理想の音をつくり出せる調律師とは、まるで生物と対峙する自分の哲学を持っているかのようです。
ホールのピアノと家のピアノは、床の固さや脚の向き等で全く別の生きものと知り驚きでした。
外村は挫折を繰り返し、自分が調律師として目指す音を追いながら、厳しいプロの目に揉まれ成長して行きます。
ようやく一人立ちが認められ、ある一軒の新規客のもとに向かいます。長年一人で引きこもり状態だった青年のピアノで、両親を亡くした15年前から調律していないとカードに記してありました。たった一人の15年は辛い思いであったのでしょうが、両親の思い出のためにピアノを弾き直す決意のようでした。調律を終え外村が促すと、一音の鍵盤を叩いた瞬間青年の沈んでいた表情が一変し、15年を取り戻すように忘れていた熱情がよみがえったようでした。
外村の調律師としての真意はきっとここにあるに違いないと思いました。
外村の大切な顧客となった「和音」と「由仁」と言う双子の姉妹がいます。ぶつかり合う才能があり、この二人のための調律が微妙に違うことが物語の深みを作り上げています。ピアノ調律師の職人たる技術の深さに感銘しました。
映画も見ました。上白石姉妹の熱演が素晴らしかった。
読み初めてすぐに、翌年の本屋大賞「蜜蜂と遠雷」を思い出しました。こちらはピアニストの物語でしたが、文章から沸き上がるピアノの音色のイメージが良く似ていると思いました。
 
おもかげ  浅田次郎 /講談社文庫
たくさんの方がご紹介していた作品です!
表紙の写真で「また、この作品?」と思われてしまうかもしれません😆
でも、やっぱり紹介させてください!
読んでいる最中から
〝そうなの?
本当にこんな風に
人生の終焉に懐かしい人や記憶の彼方にいた
人々が会いにきてくれる?
埋もれていた記憶の中から真実を教えてくれるの?
そうだったらいいなぁ。
と、しみじみとそんなことを思いました!
****
65歳の退職の日に地下鉄の中で倒れてしまい
病院のベットの上で〝死線を彷徨う〟主人公。
その主人公の脳内には
病室で本音を語る家族や友人の声が
全て届いていて、思い出が蘇っていく。
そればかりではなく
その危篤状態の、此岸と彼岸の狭間で
誰とも知らない人との信じられないような
出来事や経験が繋がっていって。。。
何度も現れる地下鉄のシュチエーションが意味することは何なのか。。。
あらゆることが
自分の脳内で繋がって、腑に落ちた時に
彷徨っていた彼の魂はどうなるのか、
身体に戻ってくるのか、それとも…。
********
私自身の仕事柄、とても興味深いテーマでもあり〝信じたい〟と強く思いました!
「地下鉄に乗って」とこの作品は
きっと作者自身の思い入れなのでしょうね!
未読の方、おすすめします^_^!
『天皇はなぜ紙幣に描かれないのか』 
 三上喜孝
書名のごとき日本史の疑問が全部で30個、解説されている。堅苦しい実証主義的歴史学から離れて、身近な史物から自由にイマジネーションを拡げている。傍流の歴史、俗史、サブカルヒストリーといったところか。興味の赴くままに、フィールドワークを重ねて「謎解き」を行っている様が、痛快である。
例えば、「源義経 = チンギスハン」説のような荒唐無稽な歴史デマも丁寧に解き明かしている。
面白かったのが、天童市にある若松寺の観音堂の落書きの解読を進めるうちに、同じ定型の落書きが全国のお寺にあることを発見する件である。
ネタばれになるので詳細は言わないが、このしょうもない落書きに書かれた当時の(江戸時代)庶民の風俗や感性が深く読み取れるのだ。この「定型落書き」が全国に流布していった過程が、ツイッターの「リツイート」だったという著者の指摘がスルドイ。
ならば、観音堂は「掲示板」なのだな。と。
内容も文章もライトなので、歴史に興味がなくとも、おすすめです。
中村淳彦
『東京貧困女子』
東洋経済オンラインで1億5千万PVを突破した人気連載の書籍化。女子大生風俗嬢、派遣OL、シングルマザーなど、貧困にあえぐ女性の心の叫びを著者が丹念に聞き続け、「個人の物語」として綴ったノンフィクションです。
貧困なんて他人事だと思っていた。
彼女たちはなぜ躓いたのか..
奨学金という名の数百万円の借金に苦しむ女子大生風俗嬢
理不尽なパワハラ・セクハラが日常の職場で耐える派遣OL
民間企業よりもひどい、まじめな女性ほど罠に陥る官製貧困
明日の生活が見えない高学歴シングルマザー...
貧困に喘ぐ女性の現実…。
個人の資質や心がけなどという単純なものが発端ではない。構造的に貧困を生み出すようになってしまった日本社会。階層化はますます深刻になっていく。
リストラが蔓延し、年功序列もなくなり、将来どうなるか分からないから、親も自分たちの生活の方が大事になる。成人した子どもは自分で何とかしろ、ってなる。
経済的な貧しさの他にも、病気、孤独、希薄な人間関係 … 出るのはため息ばかり。
いま日本で拡大しているアンダークラスの現状。
これは決して他人事ではない。
重いテーマですが、これまでちゃんと話が聞けてない分野の話にまで深く、踏み込んだ内容です。ひどい現状ですが、まだまだ「下り坂の途中」。
共感できたのは、著者の立ち位置。社会の糾弾者でもなく、支援者でもない。「徹底した傍観者」。これまで見ようとしなかった、見ないふりをしてきた現実が克明に語られた今作を、同じ視点で読むことに、まずは大きな意味があると思いました。
今年、読んだ中で、とても印象深く心に残った一冊です。
14歳。徴兵検査など、受けずに徴用。
直接の戦闘には加わらないが、過酷な任務が、付与される。最後は、死ぬも生きるも自分で決めろか。
日本の軍部はプライドと面子にこだわり、国民を悲惨な目に遭わせ、戦禍を拡大させた。
もし、昭和20年3月10日の東京大空襲で、戦争終結に動いていたら・・・
「子やぎのかんむり」 市川朔久子
有名私立女子校に通う夏芽が田舎の山寺でのサマーキャンプへ。
安くて家から遠ければなんだっていい!と選んだサマーキャンプでしたが、なんと参加者は自分1人?
しかし初日からトラブル続きで…
父親に問題がある夏芽、母親に置き去りにされた雷太。謎がありそうな大人達。いい加減に見えて全てを包み込むような住職のタケじい。
これは本当に児童書?大人も読まなきゃもったいない!
問題を抱えた子どもも大人もお互いを癒し、癒される場所。
恩に着ることなんかない。子どもはみんなのうのうと生きてればいい。
心と体の良いバランスを覚えておく。
親子は縁。ただのつながり。それ以上でもそれ以下でもない。
みんな宝だから。
この子達。この人達みんなに宝山寺があって良かった…そして、迷えるみんなにあればいいのに。と思ってやまないです。