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パチプロが「海物語」を好む理由。‟絶対に負ける人に共通している4つの特徴”とは

 なぜパチプロは海物語を好むのだろうか。魚群が熱い、オモシロそう、マリンちゃんが好き、そんな感情論は愛くるしく思えるけれども、常勝理論とは程遠い。月単位で負けることのないゼニゲバたちは決まって計算オバケで、口を開けば「回転率、出玉、期待値」、こればかり。論理的というか、理屈くさい。そんな思考の先に、行き着くマシンが海物語なのだ。
◆負ける人に共通している4つの特徴

 そもそもパチンコ屋は、慈善事業じゃなくて営利目的。ようするに、負ける客がいなければ商売が成り立たない。じゃあ、たくさん負けるのは、どんな客なのだろうか。

① 釘のメンテナンスによって投資金額や出玉率が変わるのに、釘を見ない。
② ボーダーライン(損益分岐点となる回転率)を下まわる台に手を出す。
③ 遊タイム(規定回数まで大当りしなかった場合に時短に突入する機能)について、理解していない。
④ 負けたことを遠隔のせいにする(この手の記事を多く見かけるけれど根拠のないガセ情報)。

 パチンコは楽しんだ者がエラいので否定する気はないけれど、①〜④に多く当てはまるのは、ほとんど高齢者。そんな太客たちに人気があるのが、単純明快な海物語シリーズなのだ。

 店側からすれば、利益が取れるから還元できる。水曜日(水にまつわる海の日)などの特定日に、赤字コーナーとして扱われるケースが多い。

◆パチプロがもっとも打ちたい海物語の機種は?

 タイトルに「海物語」とつくマシンは、現行機だけで10タイトル以上ある。おおよそ1年間で3タイトルくらいのペースで導入されており、これらは当然ながらに釘の配置が違うし、ベストなストローク(玉を打つ強さ)だって違う。

 スペックが違うだけの姉妹機も含めると恐ろしい台数になるわけだが、そのなかでもプロが主戦力として選んでいるのは「大海物語5」。このマシンは技術介入要素の宝庫、その要素が沢山あるのだ。

◆「大海物語5」の“4つの攻略要素”を解説

①アタッカーへのオーバー入賞狙い

 アタッカーに入賞すると、15個の賞球が得られて10カウントで閉鎖する仕組み。そこへ無理矢理11個目の玉をねじ込んで、店の想定していない出玉を得る技。

②確変&時短の止め打ち

 パカパカと開閉を繰り返す電動チューリップの、開放タイミングだけを狙い打つ技。具体的には「電動チューリップが閉じたら4個打ち出す」、これを繰り返す。さらに、テクニシャンたちは「強→強→弱→弱」といった緩急の差をつけて、電動チューリップへと流し込む。

③回転スピード

 1時間あたりの変動効率は「スーパー海物語IN地中海」が約135回転、「スーパー海物語IN沖縄5」が約200回転、「大海物語5」が約230回転。たとえば1変動あたりの期待差玉が3玉だとしたら、大海物語5の期待時間差玉は「230回転×3個=690個」となり、圧倒的に期待値が高くなりやすい。

④ストローク自由度

 近年の海物語は右の釘配置が冷遇される傾向にあったが、このマシンは左右対称の釘配置であるため右打ちにも可能性がある。

◆「大海物語5ブラック」にも期待できる
 
 ボーダーライン(損益分岐点)は、①&②の技術介入によって千円あたり16.7くらいまで下がる。千円17回転であってもプラス差玉が見込めるのだから、めちゃくちゃ甘い。とくに③&④は、大海5ならではの長所といえる。

 そのため、2023年12月4日に導入予定の「大海物語5ブラック(スペック違いの姉妹機)」も、打ち込む価値のあるマシンである可能性が高い。導入されたら、まずは冬休み前(いわゆるエサ巻きといわれる期間)までが狙い目となりそうだ。

◆他の機種に比べて約2倍の止め打ち効果が見込める

 電動チューリップ1個賞球機が主流となっているのに、2個賞球の海シリーズは単純に約2倍の止め打ち効果が見込める。だから腕利のプロにとって、これ以上に魅力のあるシリーズはないのだ。

 店長の立場からすると、「止め打ちを放置すると赤字になってしまう」と分かりながら放置するわけにいかない。釘をメンテナンスするか、注意するか、出入禁止にするか、そんな選択に迫られる。変に悩むよりも「海物語で止め打ちをしたら一発で出入禁止」といった方針の方が、手っ取り早いのだろう。

 さらに出玉と貯玉カードを没収してしまえば、店の評判は下がるだろうけれど“一石三鳥”。それを「大海物語4SP」で喰らったときは、かなり落胆した。

◆リスクがあっても「海物語を追い続けるワケ」

 止め打ちをするのは怖い。どれだけリスクが高いのかを分かっているから。それでも、このシリーズを避けて納得のいく期待値をあげるのは難しい。

 初代ファフナーのV直撃打法、モンスターハウスの通常時右打ち、パチスロのコピー打法、そんな必然的に勝てるマシンに巡り合う日まで、ボクたちは海物語を追い続ける。



【ミネッチ】
技術と釘読みで凌ぐパチプロ生活が20年。その稼働内容を、雑誌(パチンコオリジナル実戦術、必勝ガイドMAXなど)に寄稿し始めて10年が経つ。YouTubeの密着シリーズ(パチダンTV)は特に人気があり、60万回再生を超えた。

27歳パチプロ男性が「経営者目線」で語る違和感 アルバイトやリゾート派遣で食いつないできた

編集部あてに「おもしろそうなので取材を受けさせて」というメールを送ってきたフミヒロさん。その意味を尋ねると「インタビューを受けるのも初めてだし、自分もパチプロのおもしろい話をできるんじゃないかと思って」と話していた(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「ひと月程度、ホームレスをしていました」と編集部にメールをくれた、27歳の男性だ。

日給1万5000円に「昇給」

パチプロの朝は早い。

フミヒロさん(仮名、27歳)はある地方都市のパチプロ軍団のメンバーだ。起床は朝6時。“親”といわれるリーダーの補佐をしているので、軍資金の管理や台ごとのデータのとりまとめなどやるべきことは多い。玉を打つ“打ち子”たちにどの店のどの台に座るかの指示を出し、開店後は自身も12時間近くハンドルを握る。閉店後に新人の打ち子にデータのとり方を教えたり、報酬を支払ったりしていると、帰宅は夜中の0時を過ぎる。

「(軍団のもうけは)“期待値”の高い台を探し、その台に打ち子を座らせることができるかどうかにかかっています」

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期待値とは、いくらつぎ込めばどれくらいプラス、もしくはマイナスになるかという理論上の見込みのこと。当然、高いほうが優良台である。期待値は大当たりで獲得した出玉数や1000円当たりの回転数(大当たりを出すための抽選回数)などをもとにはじき出すのだが、その計算方法は結構複雑だ。

フミヒロさんの軍団は、多いときで打ち子ら30人で構成。リーダーである親以外は、フミヒロさんも含めて勝っても負けても決まった報酬を受け取るシステムになっている。フミヒロさんは入団直後は1日7000円で、軍資金の管理などの仕事を任されるようになってからは同1万5000円に“昇給”。多い月で35万円ほどを稼いだ。打ち子らは口コミやTwitterで募集。親の名義で借りたワンルームマンションなどに入居させる。フミヒロさんも家族向けの3LDKの1室に家賃2万円で住んでいるという。

パチプロは意外にも勤勉だった。収入も安定しているように見える。もしどうしても食いぶちに困ったら1日打ち子とかやってみたりしてもいいのではないか――。

私がそう言うと、フミヒロさんは「いや。それは、ほんとにやめといたほうがいいです」と即答した。

よく考えてみてほしいと、フミヒロさんは言う。例えば1日7000円で終日玉を打ち続けた場合、時給換算すると600円を切ってしまう。また月20万円を稼ごうと思ったら29日は“出勤”しなければならない。それに打ち子は1時間おきに回転数や出玉数などを親にLINEで報告するので、慣れないとトイレや食事の時間を取ることもままならない。フミヒロさんの月35万円の稼ぎも、連日18時間近く働いてようやく得られる金額である。

なにより不安定で、いつ収入が途絶えるかわからない“仕事”だという。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年4月に緊急事態宣言が発出された際は、ほとんどのパチンコ店が休業。フミヒロさんの収入はゼロに。このときは水道代とガス代を払うことができなくなり、近くの公園でくんだ水を電気ポットで沸かし、カップラーメンで飢えをしのいだ。

実はフミヒロさんは最近、新人の指導方法をめぐってリーダーの親ともめて軍団を離れた。自動的に住まいも追い出されるので、ほどなくホームレス状態になった。昼間は終日マクドナルドで過ごし、夜は路上に出るという暮らしを1カ月ほど経験した後、現在は別の軍団で打ち子をしている。ただし報酬は1日9000円。「収入はかなり落ちました」。

パチプロ歴6年。そろそろ潮時かなと思っている。「ちゃんと就職したい。できれば正社員でと考えています」。

 

父親は会社員だったが、酒癖が悪かった

フミヒロさんはなぜパチプロになったのか。

フミヒロさんの父親は会社員だったが、とにかく酒癖が悪かったという。「父が物を投げつけて壊したテレビを何度買い替えたかわかりません」。小学生のときに愛想をつかした母親がフミヒロさんを残して家を出た。中学生のときに父親が失業。再就職したものの、子どもながらに家計が苦しくなったことがわかったという。高校中退後は、アルバイトをして貯めたお金で1人暮らしを始めた。以来10年、父親とは一度も連絡を取っていない。

「高校を辞めたのは、勉強についていけなかったから。家を出たのは、このまま父親と暮らしていたら僕のメンタルが死ぬと思ったからです。母に頼んで緊急連絡先になってもらい、家賃3万円のアパートを借りました」

この間、複数の飲食店や雀荘でアルバイトをした。いずれの職場も社会保険はなかった。雀荘では業務のひとつとして賭け麻雀を打つこともあったが、負けた場合はすべて自腹。半月働いた給料が7000円だったこともあったという。

アルバイトは、次第に寝坊による遅刻が続き「出勤しづらくなってブッチして、そのまま辞めてしまいました」。最後は家賃を4カ月ほど滞納した結果、強制退去に。初めての1人暮らしは2年ほどで終わった。

その後は友人の家に身を寄せながらファミレスでアルバイトをしたり、スキー場や温泉街などでリゾート派遣をしたりした。パチプロになったのはちょうど仕事を辞めたタイミングで、知り合いに声をかけられたのがきっかけだったという。

パチプロに“転職”した理由について、それまでに就いたさまざまな非正規労働の劣悪さに嫌気がさしたのかと尋ねると、そうではないという。

「住み込みのリゾート派遣ではいろんな人と仲良くなれました。家賃もかからないし、朝晩と弁当が出るところもある。(派遣先のひとつだった)温泉宿では途中からアルバイトになり、年末年始バリバリ働いて、1週間でチップ込みで20万円稼いだこともあります。仕事は探せば何かしらあるんです。社会に文句を言うくらいなら、自分で行動して適応していくべきです。自分で選択した結果に文句を言うのはお門違いだと思います」

派遣も悪くはないし、働きぶりを評価されてアルバイトに引き抜かれたと言いたいようだった。ただフミヒロさんが就いてきた仕事は、いずれもILO(国際労働機関)が実現を目指す「ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」とは到底いえない。

社会保険がないのは違法の可能性が高いし、賭け麻雀の負け分を給料から天引きするのは完全にアウトだ。派遣契約期間中に直接雇用に切り替えるのも違法。瞬間的にいくら稼げても、継続的に働けるかどうかわからない働かされ方は典型的な不安定雇用である。私にはフミヒロさんは労働搾取の被害者に見えたし、まともな仕事がない中で「自分で行動」「自分で選択」といっても、それは下手をすると劣悪な職場を渡り歩くだけの結果になりかねない。そう指摘すると、フミヒロさんはこう反論した。

「非正規が増えたのは事実です。でも、経営者の目線に立つと、正規社員をかかえることのリスクは大きいし、すべての企業が法律を遵守していたら日本は立ち行かなくなるのも事実です」

経営者目線に立つ――。実は本連載でも、何人もの非正規雇用の当事者が同じ主張をするのを耳にしてきた。しかし、社長でも、CEOでもない働き手がなぜ経営者目線に立つのか。その発想が私にはまったく理解できない。

資本主義社会において、労働者が商品として提供できるのは労働力だけである。従って労働者と企業の力関係は対等ではない。その格差を補正するためにさまざまな労働関連法が整備されてきたのだ。労働者と企業の間にはアリとゾウほどの力の差があるのに、なぜアリがゾウの目線に立つのか。その忖度が劣悪な非正規雇用や不当な解雇、雇い止めにはしる一部の企業の増長を許してきたといったら、言い過ぎだろうか。

パチプロを辞めたい理由

しかし、フミヒロさんは「(企業側のやり方を)受け入れる代わりに何も考えない“楽さ“を得てきたんだと思います。そしていったん受け入れたなら、文句を言うなというのが僕の考え」と譲らない。パチプロになったのも、文句や不満を言わずにすべてを受け入れてきた結果というわけだ。

そのうえで、フミヒロさんには普段から自らに言い聞かせていることがあるという。「才能がないならないなりに努力をしろ、すべての責任は選択した自分にある」。 これもまた典型的な自己責任論の内面化のように、私には思えた。

フミヒロさんはパチプロを辞めたい理由について「パチプロには社会的信用が一切ないからだ」と説明する。たしかにこれから就職活動をするにしても、履歴書にパチプロとは書けないだろう。そのほかにも終日台に座り続けるのでパチプロを始めてから体重が50キロ増えてしまった。「このままではどんどん社会との距離が広がって、いつか後戻りができなくなるような気がするんです」とフミヒロさんは話す。

結局、フミヒロさんとの働き方をめぐる議論は平行線だった。一方で取材後、フミヒロさんからはこんな趣旨のメールが届いた。

「『才能がないならないなりに努力しろ』という言葉ですが、本当に強い人はそういうことは言わないかもしれません。強がる人が言う言葉だと思います。これは、強くあろうとする自分を鼓舞するため、自分を肯定するための盾でもあるんです」

フミヒロさんが望む正社員。そこでは今以上に自らを鼓舞しなければならないだろう。そんな社会のいびつさを一番身に染みて感じているのは、フミヒロさんなのかもしれない。

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。

《一晩で100万円》普通の主婦も通う“闇スロ”の危険すぎる実態「ハマって大負け、人生崩壊」「ヤクザの資金源に」

「お遊びはどうですか、ギャンブルありますよ」

 ホストクラブの煌びやかな看板が連なり、キャッチが道行く人に頻繁に声をかける新宿の中心・歌舞伎町2丁目。夜には多くの酔客が行き交う区役所通りから、たった50メートル先、雑居ビルの地下にあった「違法賭博店」の摘発が、密かに波紋を呼んでいる。

身を持ち崩すまでのめり込む客も

 警視庁は10月6日、“闇スロ”を運営していた違法賭博店「バカボン」の責任者ら2人を常習賭博容疑、店内にいた20~30代の客12人を賭博容疑で現行犯逮捕した。

 闇スロとは、正規のパチスロ店で設置が認められていないハイリスク・ハイリターンの台を取りそろえた違法ギャンブル店で、バカボンは初心者でも入りやすいと評判の有名店だったという。

「正規店のメダルの交換相場は1枚20円ですが、バカボンは1枚20~100円。つまり最大で正規店の5倍の高レートで、客に賭けさせていました。膨らんだ負けを取り戻そうと身を持ち崩すまでのめり込む客も多かったようです。新宿の闇スロのなかには1枚500円と、通常より25倍の高レートの台を置いた店もあり、バカボンのレートが特別高かったわけではありません。

 ただ、押収された店の携帯電話からは3000人分の顧客データが見つかるなど、集客が派手で悪い意味で目立っていたため、見せしめで摘発されたと言われています。一般的に、“ケツモチ”にはヤクザや半グレが絡んでいると言われ、彼らの収益源になっている可能性も高い。警察も闇スロの隆盛について危険視しています」(全国紙社会部記者)

「一晩で100万…とにかく射幸心を煽られる」

 高レートで知られる闇スロだが、一晩でいくら稼ぐことができるのか。バカボンの元常連客が語る。

「バカボンには『裏ジャグラー』と『麻雀物語』という1枚100円の“100スロ”が2台ありました。1回大当たりをひけばバックは1万円を超えます。『裏ジャグラー』には通常のジャグラーにはない、決められた回転数に達すると必ず当たりが出る“天井”も設定されており、とにかく射幸心を煽られるんです。他の店では、一晩で『100スロで万枚』、つまり100万円を稼いだという話を聞いたこともありますよ。

 また、闇スロの台には、『オートプレイ』と呼ばれ、機械が自動でスロットを回して自動で止める違法改造がなされ、1人で複数台を掛け持ちできるので、正規店では考えられない額を一晩で稼ぐことができます」

 新宿の別店舗の闇スロ関係者によると、コロナ禍で居酒屋やカラオケが夜に開いておらず、娯楽に飢えた人や終電を逃した人々で溢れ、闇スロは大盛況。昨年の1回目の緊急事態宣言中は閉める店も多かったというが、それ以降は宣言下に関らずほとんどの店が開けていたという。

客は「普通の人」ホストやキャバ嬢、中年のおばちゃん…

 捜査関係者によると、バカボンは伝票などから「少なくとも昨年6月以降で1億7000万円を荒稼ぎしたことがわかっている」という。

「バカボンは確かに人気店で稼いでいたようですが、新規客の取り込みを優先したためか、セキュリティが緩すぎました。普通は重厚な扉がまず入口にありますが、バカボンは横にスライドさせる白い戸だけ。摘発逃れのため、1年ぐらいで物件を移すのが普通ですが、場所も変えませんでした。

 また、他の店なら、警察関係者か見極めるために保険証などの身分証を提示させ、コピーを取って確認してから入店させます。一方、バカボンは電話番号を伝えるだけで、身分証の確認は一切なし。客からすれば、摘発されても足がつく心配がありません。

 入店の心理的なハードルが低いため、初心者の客も多く、いつも賑わっていました」(闇スロ関係者)

 違法ギャンブルといえば、“ツワモノ”が集うイメージがあるが、闇スロは正規のパチスロを打ち慣れていれば勝手が分かり、特に入場料金がかかるわけでもないため、客にとっては敷居を跨ぎやすい“入門ジャンル”だ。前出の元常連客が語る。

「客は、仕事終わりのホストやキャバ嬢もいれば、スーツ姿のサラリーマン、中年夫婦、学生まで様々です。私の印象に残っているのは、散歩のような恰好で毎朝ふらりと来店し、2~3時間打ち帰っていく中年のおばちゃん。闇スロが朝の日課になっていたんでしょうね」

“懐かしい”と喜ぶ昭和生まれの客

 他の闇スロ店は朝9時には閉店するのが一般的だというが、バカボンの営業は午前12時までと長く、他の店舗から流れ込んでくる客も多かったようだ。店内には47台しかないが、毎週月曜日の“イベ日(イベントが開催される日)”になると、開店前から店内に50人ほどの列ができることもあったという。行列の秘密には、昭和世代の心をくすぐる工夫もあったという。

「バカボンの台は、大当たり時の枚数が多く射幸心を煽り過ぎるという理由で2000年代に姿を消した4号機や、その後の5号機がメイン。“懐かしい”と喜ぶ昭和生まれの客も多いんです。

“イベ日”になると、当たりが出やすい『設定』の台にバカボンパパ、トト子、ウナギイヌなどの絵柄が描かれた札が付いています。こういう煽り方も、今のパチスロ屋にはない昭和臭さを感じるんですよね。

“遠隔”の噂も…帰ろうとした途端に大当たり

 また、闇スロは喫煙が厳しくなった正規店と違い、咥え煙草で遊べます。バカボンは2、3時間に1度、店員が『煙草は要りますか』と声をかけてきて、要望すればコンビニに買い出しに行ってくれました。客の台が当たれば、『当たりスタートしました!』と盛り上げたり、『今日調子良いですね』とフランクに声をかけたり、常連と話が盛り上がる店員の姿もよく見ましたよ。正規のパチスロよりもサービスが充実している印象でした。

 店内はソフトドリンクやカップ麺は食べ放題です。他の店舗に比べると、カップ麺の種類も多いですし、おにぎり、お菓子もメニューが豊富。油淋鶏や棒棒鶏の丼モノの出前も置いてあり、好きに食べて良いという充実ぶりでした」(同前)

 一方、違法ギャンブルには、常に黒い噂もつきまとう。その代表が“遠隔”で、店側が客の当たりをパソコンで遠隔で操作しているというもの。バカボンもその例外ではなかったようだ。別の元常連客が語る。

「バカボンは客の間で、遠隔が疑われていました。他の店舗でもそうした噂はありますが、私自身の経験でも、遊んで全く当たらず帰ろうとした途端、いきなり大当たりを引くことが多く、人為的な意図を感じることが特に多かった店舗です。

 普通のパチスロであれば、1台に多額の金を注ぎ込んで改造するのはコスパが悪いでしょうが、闇スロなら動く金額が大きいので、元手を回収することもできるはず。取り締まりの目も行き届かないため、“遠隔”のリスクは高いと思います」

中年・若者にも広がる違法ギャンブルの波

 闇スロは都内では新宿、渋谷、池袋の副都心に多いというが、東京以外でも北は北海道、南は沖縄まで、「繁華街があるような街」には珍しくないという。コロナ禍で店舗数が増えたこともあり、今後摘発も増えるのではないかと前出・闇スロ関係者は警戒する。

「身分証のチェックは今より厳格に行い、新規客の呼び込みを減らすかもしれません。ただ、いずれにしても海外のカジノのようにカードゲームを楽しむ“闇カジノ”も好調ですし、日本から違法ギャンブルがなくなることはないでしょうね。

 少し前、“インカジ”と呼ばれる、店内にパソコンを並べてオンラインカジノを楽しむインターネットカジノが流行りましたが、最近はスマホで楽しむ若者も増えています。違法ギャンブルのハードルは、昔よりも随分下がったのではないでしょうか」

 昭和を懐かしむ中年にも、若者にも広がりつつある違法ギャンブルの波。バカボンの“見せしめ”は彼らの心に届くのだろうか。

いじられる確率、遠隔コントロールされるスロット台…元闇カジノ店のオーナーが語る闇スロット店の“秘密”

 闇スロット(以下・闇スロ)店に出入りしたがために身を滅ぼした有名人は少なくない。

 有名人の闇カジノ通いがスキャンダルとして報道されるとき、同時に闇スロも愛好していたことが明らかになるケースも多い。

 例えば2016年に発覚したバドミントン・オリンピック選手の桃田賢斗氏らが闇カジノ店で賭博をしていたことが発覚した事件は記憶に新しい。

 男子シングルスで日本人初のBWFスーパーシリーズ優勝を果たしたバドミントンの桃田賢斗選手と、BWF世界ランキング3位にまで昇りつめた田児賢一選手が闇カジノに出入りしたことは世間に大きな衝撃を与えた。桃田選手は闇カジノ店以外にも闇スロ店に出入りしていたことが後に明らかになっている。

 文春オンラインのスクープで明らかになったジャニーズJr.内ユニット・宇宙SixのY(後に解雇)の場合も、問題となったのは闇スロ通いだった。同記事ではパチンコ店と闇スロ店に出入りし“玄人のように”スロットを楽しむYの様子や、開店と同時に闇スロ店に入り閉店まで滞在した後に朝帰りするアイドルの姿が報じられた。現役アイドルが闇スロ店に出入りしていたという事実は衝撃的だった。Yは後にジャニーズ事務所を解雇となり、宇宙Sixは解散という憂き目に遭う。

 元闇カジノ店のオーナーで、業界に精通している漆原康之氏が語る。

「Yが通っていたのは新宿のKという店だと聞いています。あまりお金を使わない客なのに、報道が大きく出てしまった為にKは大慌てしていたようです。いまは店名をMと変えることを余儀なくされたようです。

 有名人の闇スロ通いが発覚しやすいのは、闇スロに強い『中毒性』があるからだといえるでしょうね。依存性が高いために闇カジノよりも足しげく通ってしまうことになる。だから週刊誌に追いかけられたらバレやすい。

 同じ理由で身を滅ぼす客も多い。大きな金額をかけないだけに通いやすく、つい回数を重ね、借金も重ねてしまう。店のオープン前から並ぶお客さんとかもざらにいますよ」

打ちながら仮眠する客も…

 闇スロ店の営業時間は夜中(21時~翌朝10時)であるから客は朝まで目を血走らせてスロット台に向かうのだ。闇スロ→仕事という生活を何日も続け、オート設定で打ちながら椅子で仮眠するような客もいるという。中毒性が高いゆえに危険だともいえるギャンブルが闇スロなのである。

 じつは闇スロ店には“秘密”がある。今回の記事ではその秘密について掘り下げて行きたいと思う。

 漆原氏は06年に自らの闇スロ店を開業してから、他の様々な闇スロ店の開設に関わるようになった。

「私の店では闇スロはノーマルな形で営業していました。お客さんがちゃんと遊べる店をやりたかった。私が闇スロに求めていたものはみんなでワイワイ語り合える社交場という雰囲気です。前回お話しした野球選手Aもそれを楽しんでくれていたと思います。1万円を握りしめてドキドキしながらスロット台を初めて打ったという感覚を大事にしたいと、常々思ってました。ところが、いろんな店の立ち上げを依頼され協力し、その内実を知っていくにつれ闇スロ店の多くには“裏”があることが分かったのです」

闇スロット“3つの種類”

 闇スロ店には大きく分けて「3つの種類」が存在するという。その3つとは以下のようなものだ。

【ノーマル店】 スロット台に細工をしていない普通の闇スロ店。店側の儲けは10~15%ほどと小幅で赤字になることもある。漆原氏が経営する闇スロ店はノーマル店だった。

 

【ロム細工店】 スロット台に「カットロム」「ダウンロム」と呼ばれる「裏ロム」などを仕込んでいる店。店側の儲けは20~30%と中幅。

 

【ポンコツ店】 スロット台に「遠隔」という確率操作システムを仕込んでいるインチキ店。店側の儲けは遠隔の設定次第。もちろん大幅に利益を出すことも容易い。

 漆原氏によれば、現在、都内に存在する闇スロ店は「ロム細工店」か「ポンコツ店」ばかりであり、「ノーマル店」はほとんど存在しないというのが実情のようだ。

 まず「ロム細工店」について解説していこう。「カットロム」や「ダウンロム」などは「裏ロム」と総称される。

 パチスロ台はメーカーによって、その「設定」や「出率(当たり確率)」が公表されている。パチスロにおける設定とはパチスロ機のボーナス・小役等の確率を変更し、最終的な出率を上下させることができる機能のことだ。 1~6などの数段階の設定があり、例えば設定1だと101%の出率になるなどの数字が、メーカーによって公表されているのだ。

 この出率を上げたり、下げたりするために裏ロムを仕込むのである。例えば裏ロムにより設定1・101%の出率とされているものを、90数%などに落とすことなどが出来るのだ。

裏ロムの極秘仕様書をみると…

 ここに数枚の文書がある。裏ロムの極秘仕様書の数々である。

 例えば1枚目は裏ロムを仕込むことで、“裏モノ”と呼ばれるギャンブル性の高い台に変えるための仕様書だという。「通常設定」をどう「裏設定」に変更するのか、その方法が細かく記述されている。

(1)通常設定変更

 ↓

(2)基盤リールLEDを確認し、第一リールのLEDが消える状態までリールを手で回す。第二、第三は点灯状態

 ↓

(3)電源OFFにして設定キーを回す

 ↓

(4)1BETボタンを押したまま電源ON

 ↓

(5)表側セグ版が設定ボタンにて変化する。・表示1(十の位):1~4(裏設定)・表示2(一の位):1~5(モーニング数)

 ↓

(6)スタートレバーON、設定キーを戻して完了。

 そして裏設定にしたときの当率一覧表も添付されている。その出率は77~238%と大きな波があることが分かる。

 2枚目は“カット系”の仕様書である。「連チャン回数設定」で連続ボーナスの回数が細かく設定できることが明記されていたり、「ベースカット率設定」という項目では出率を10~30%までカットできる、というような事柄が詳細に記述されている。まさに裏ロムを使用することでスロット台の細かい設定変更をすることが可能であることが仕様書からわかるのだ。

「1枚目の仕様書は通称“裏モノ”と呼ばれるもので、裏ロムを入れることで波が荒い超博打台に変えることが出来るのです。ノーマルの台では119%くらいがマックスで238%という出率はありえない。お客さんは射幸心を強く煽られることになり、嵌っていくのです。気を付けなければいけないのは闇スロで『当率238%!』と謳っておいて、裏では96~110%で調整しているなんてこともあることです。

 2枚目の仕様書はカットロムと呼ばれる裏ロムのものですね。出率をカットすることで店の利益率を上げるために使う。当率が下がって当りが来るまでの波が荒くなるぶん、お客さんはかえって射幸心を煽られて嵌るというパターンもあります」(漆原氏)

 裏ロムによって超博打台に変えて集客したり、カットロムによってボーナスや小役を制限したりと、闇スロではあの手この手を使って台に細工を施しているのだ。総じて多いのが通常台よりも店の利益率を上げるために、カットロムやダウンロムを巧妙に仕込んで客を欺くというケースだ。

 裏ロムを仕込むためには、まずスロット台の上部を開けて基盤に裏ロムを設置する。再び蓋を閉めてしまえば、客からはその台にロムが仕込まれているものか、そうではないかを判別することはできない。

 ロムの値段は6万5000円~30万円とピンキリで、値段によって出率をいじれる精度が違うのだという。闇カジノ店の「売上率」を上げるために使用されるのが裏ロムである。しかし確率論の中での調整なので利益幅は絶対ではなく、ブレが出ることもままあるという。

100万円を超える遠隔の機材

 一方で「遠隔」は基盤やサブ基盤に専用ロムを仕込む形や、ハーネス(電線)や電源ボックスにICチップを仕込む形など、いくつかのパターンがある。これらの機材は送受信できる機能を持つことが大きな特徴だ。

 送受信機能によりスロットのボーナスをいつ出すかとか、その台では小役しか出さないなど、スロット台を完全にコントロールすることが出来るようになるのだ。

 遠隔の機材は100万円を超えるものも多く高価だ。遠隔ではスロット台を完全にコントロールすることが出来るだけではなく、客ごとの収支もコントロールが出来る。つまり、その店が完全なイカサマ店であることを意味するのだ。売上を「確実」に取りに行くことが出来るのが、闇スロ店にとって遠隔を導入する大きなメリットとなる。

「裏ロムも遠隔もどのパチンコホールでもやっている」

 前回、闇スロとパチンコ業界の“グレーな関係”について書いた。

 漆原氏によれば闇スロ店で横行している台の細工も「パチンコ店の人間からは『裏ロムも遠隔もどのパチンコホールでもやっているという認識でいい』と聞かされていました。闇スロもその流儀に倣っただけ」と語る。ここでもパチンコ業界から大きな影響を受けていたのだという。

「ロムや遠隔はもともとパチンコ店が確実に儲けるための仕組みだったのです。それを裏スロ店も踏襲している訳です。ロムだとその台に誰が座ってどう遊んでいるかは、見張ってないとわからないのですが、遠隔の店は客収支をパソコンで管理できる。『この客を200万円負けさせる』というようなイカサマも簡単に出来るのです。

 気をつけなければならないのは、遠隔はあるていど業界に長けている人間でないと上手く操作できないということです。客にイカサマだとばれれば警察に密告される可能性もあります。客を大切しているという演出を上手くいれながら適度に勝たせて搾り取っていく。これはパチンコ店も闇スロ店も同じだと思うのですが、遠隔のようなイカサマを店が行っているということは店の一部の人間しか知らない。多くの従業員は知らない“秘密”でなくてはならないのです。

 特に闇スロ店が気を付けないといけないのは、アングラビジネスなのでパチンコ店のような大規模な宣伝が出来ず一見の客を広く集めることができないということです。そこで口コミの評判が大事になるのです。だから客にはイカサマだと絶対にバレないようにやらないといけないのです」(漆原氏)

「おれはハメられているんじゃないか」と言い出す客も…

 ロムや遠隔が存在するという噂は、闇スロに通う客もある程度は耳にしているものだという。だから「おれはハメられているんじゃないか」と言い出す客も少なくない。ポンコツ店では、イカサマだと悟られないよう客の目を逸らす演出が求められるのだ。

 例えばあるポンコツ店では客前にパソコンを設置していた。パソコンで闇スロの収支表を客の目に触れる形で公開していたのだ。

「もちろんそのパソコンで公開しているのは偽収支表です。裏のキャッシャーで本当の収支をキッチリ管理している。どの客がいくら使って、いくら負けているのかをリアルタイムで管理しているのです。まさにキツネとタヌキの化かしあいですよね」(同前)

何が闇スロットを生んだのか

 漆原氏はここで悩まし気な表情を見せた。「本来、遠隔は負けすぎている客を、勝たせてあげるためだったはずなんですけどね。いまでは客を嵌めるために利用されることばかりです」と、小さなため息をついた。ポンコツ店が横行することはギャンブラーの世界にとっても決していいことではない、と感じているようだ。

「渋谷や新宿の各街に手広く出店しているあるグループの闇スロ“ポンコツ”店では、月アベレージで2000万円の純利益を上げていました。遠隔でコントロールして、経費・人件費を差し引いた上で現金2000万を残すことを店として徹底していた。まさに荒稼ぎですよね。この店は警察の生活安全課のOBと癒着していたので摘発を逃れ続けていました」

 漆原氏の証言から浮かびあがってくるのは、パチンコ・パチスロ店が闇スロを誕生させた大きな要因となっているという現実である。パチンコ店と警察の絶妙なバランスで成り立っている表のギャンブルがパチンコやパチスロならば、それらの全てを手本としつつ地下に潜って行ったのが闇スロなのだ。

 その経営手法から、高い射幸性を忘れられない客まで、闇スロを構成するものの全てのベースとなっているものが“表のギャンブル”なのである。