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サンマはもはや高級魚? 水揚げ減 小ぶりになった 変わるおすすめの食べ方とは

秋の味覚の代表格「サンマ」。近年は不漁で大衆魚と呼びづらくなった=東京都青梅市(関勝行撮影)

秋の味覚、サンマ。昨年は水揚げ量が最盛期の20分の1にまで落ち込み、価格が高騰。食卓から遠のいた感がある。小ぶりになったともいわれる今、定番の塩焼きよりもおすすめの食べ方があるという。

1尾213(税抜き198)円。東京都青梅市のスーパーマーケット「ベイシア青梅インター店」の店頭に9月下旬、やや小ぶりのサンマが並んだ。近所の70代の女性は、パックを手に取り、わずかに逡巡(しゅんじゅん)した後、そっと元に戻した。

「秋といえばサンマ。当たり前に食べていたのに、高すぎたり小さくて細すぎたりで、ここ数年は一度も食べていない。今年こそはと思って見にきたのに」

この日の鮮魚コーナーの目玉商品で、じっと眺めたりパックを手に取ったりする人は少なくないものの、すんなり買い物かごに入れてはもらえない。

同店の鮮魚担当、長井克弥さん(33)は「5年前までは1尾78~98円で売っていたうえに、そのころよりも魚が小さく細くなっていて、割高感があるのだと思う。庶民の味方の大衆魚だったサンマが、今では高級魚になってしまった」と肩を落とした。

少なく小さく

サンマの水揚げ量は、令和に入り激減した。全国さんま棒受網漁業協同組合(東京都港区)の調べでは、最盛期の平成20年には34万3225トンあった水揚げ量が、令和元年以降は5万トンを切る落ち込みぶり。4年は過去最低の1万7910トンだった。

近年はサイズも小ぶりだという。サンマを主に扱う水産加工会社「上野台豊商店」(福島県いわき市)の上野台優社長(47)は「平成の時代まで1尾150~160グラムあったが、令和以降は120~130グラムになり、昨年は110~120グラムまで小さくなってしまった」と明かした。

 

上野台さんによると、不漁の原因は、サンマが日本近海で回遊しなくなったこと。冷たい水を好むため、地球温暖化に伴う海水温の上昇や潮流の変化が影響していると考えられる。外国船との競合や獲(と)りすぎも一因。小ぶりになったのは、海の環境の変化で餌が減ったためとみられている。

価格安定への工夫

小売り側も手をこまねいているわけではない。ベイシアでは市場を介さず産地と直接取引して、価格と入荷量の安定をはかってきた。さらに昨年から、これまでスーパーでは扱わなかった小ぶりのサンマの販売を開始。今月中旬からは一部店舗で魚の大小を選別せず仕入れ、コストカットにつなげている。

同社広報室の松田詩織さん(30)は「サンマは旬を感じられる重要な魚。秋といえばサンマと思っている人は多いので、気軽に楽しめるよう食卓に届けたい」と話す。

今年はこれまでのところ、昨年よりも水揚げ量は増え、サイズも以前の程度までとはいかないが、回復しているという。さらに、夏の猛暑の影響で、例年なら旬の名残を迎える11月になっても一定の水揚げが期待できるとの見方も。今年こそはこの季節に欠かせないサンマを心ゆくまで味わい、駆け足で去ってしまいそうな短い秋を堪能したい。

 

煮付けてみては

小ぶりのものが目立つ最近のサンマ。上野台豊商店の上野台さんによると、短くてもずんぐりと太っているものを選ぶとよい。目が澄み、表面が銀色に輝いていると、鮮度がいい。

スーパーでは主婦らがサンマの品定めをしていた=東京都青梅市の「ベイシア青梅インター店」(関勝行撮影) 

塩焼きが定番だが、「小ぶりなら煮付けがおすすめ」。身が薄いと、塩焼きでは物足りなさを感じてしまうが、ぶつ切りにして時間をかけて煮れば、骨までやわらかく食べられて、満足感が高まる。味付けを濃いめにすると、脂の乗りが足りなくても気にならない。

「刺し身にできる新鮮なサンマなら、たたきにすれば小さくてもおいしくいただけますよ」