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今年、創業150周年を迎えた王子HD。森と共に歩んで150年超。今改めて森の機能に目を向ける

今年、創業150周年を迎えた王子HD。2022年には自社の存在意義を見つめ直し、改めてその根幹には「森」があることを再認識したという。新たに存在意義(パーパス)も制定し、森を軸にした取り組みを加速させている中、環境フォト・コンテスト2024では募集テーマを「森と仲間たち」に変更した。同社が求める森の機能に焦点を当てた作品とは。

森を育て、森を活かし、そして時代を動かす

――創業150周年を迎え、新たに存在意義(パーパス)も制定されました。

 

村松和人さん
王子ホールディングス株式会社
コーポレートガバナンス本部・広報IR部マネージャー

【王子HD】王子グループは、近代日本経済の祖・渋沢栄一の提唱による「抄紙会社」の設立以来、森林の健全育成と森林資源に根づいたものづくりを続け、おかげさまで今年の2月、創業150周年を迎えました。当社にとって、この大きな節目を迎えるにあたり、改めて会社としての「存在意義」を見つめ直した結果、「森林を健全に育て、その森林資源を活かした製品を創造し、社会に届けることで、希望あふれる地球の未来の実現に向け、時代を動かしていく」というパーパスにたどり着いた次第です。このパーパスの下、「2030年度にGHG排出量を2018年度比で70%以上削減する」「2050年のネット・ゼロ・カーボン」といったグループとしての目標達成を実現していきたいと考えています。

――目標達成に向けた取り組みについて教えてください。

池田 和さん
王子ホールディングス株式会社
コーポレートガバナンス本部・広報IR部長
(※所属・肩書は取材当時のもの)

 

【王子HD】「木を使うものは木を植える義務がある」という理念の下、木を育て、受け継いできた社有林「王子の森」の面積は、今や国内外で約57.3haに及びます。この広大な森林の管理育成に努めることで、再生可能な森林資源を生産すると同時に、水源涵養やCO2の吸収、生物多様性保全などにも貢献。また、バイオマスプラスチックやセルロースナノファイバーなどプラスチックに代わる木質由来の新素材開発も推進しています。

近年では、2030年までに国土の30%以上を自然環境エリアとして保全しようとする国際的な取り組み「生物多様性のための30by30アライアンス」に、国内ではトライアル段階だった昨年4月より参画しています。この取り組みの一環として、絶滅危惧種・ヤイロチョウの保全に取り組んでいる高知・木屋ヶ内社有林のOECM登録を目指しているところです。

――紙を使う=木を伐採するからサステナブルではないという誤ったイメージを持つ方もいらっしゃいます。

【王子HD】実は木には、成長している若い木の方がCO2の吸収量が多く、成木になって成長が止まると吸収量が減少していくという特徴があります。日本の木の多くは、すでに伐採期に入っているため、CO2吸収による気候変動問題への貢献度を高めるという意味でも、適切に伐採してその資源を有効活用し、代わりに新たに植林するという活動が重要になります。木は石油などの化石燃料と違って育てることができる資源。適切に森のリサイクルを進めることは、持続可能な社会の実現に欠かせないものだと考えています。

森の機能に焦点を当てた想像を超えるような写真を

――長年、環境フォト・コンテストにもご協賛いただいています。

【王子HD】事業そのものが自然環境と密接に結びついている私たちにとって、次の世代に美しい自然と資源を残すことは昔も今も変わらない普遍的なテーマです。環境フォト・コンテストは、そのような私たちの想いを一般の方々と共有できる貴重な舞台。当社の募集テーマに思いを馳せて写真を撮影される際には、あらゆるものが森とつながっていることを改めて実感いただけると思います。その森と共にある当社グループの理念にご理解、ご賛同いただける方が一人でも増えれば、これ以上のことはありません。今後もより積極的な環境フォト・コンテストとのコラボレーションの方法を模索していきたい考えです。

――今回の環境フォト・コンテスト2024から募集テーマを変更されました。テーマ理解へのヒントを含め、最後に読者へのメッセージをお願いします。

【王子HD】150周年記念の取り組みの一つとして、1998年から2001年にかけて世界に広がる王子の森に足を運んでカレンダー用の絵を描いた磯野宏夫さんの原画展「王子の森の仲間たち」を開催しています。このタイトルに改めて注目し、また前テーマ(森の力で未来を変える)よりも応募の間口を広げたいと考えた結果、「森と仲間たち」という新テーマができました。

王子ホールディングス(株)北海道猿払山林

王子ホールディングス(株)北海道留辺蘂山林

前回優秀賞の「木は友達―コロナに負けるな―」は、新緑萌える木々と子どもたちに降り注ぐ日差しが、困難を乗り越える生命力と希望あふれる輝かしい未来を象徴しているかのような素晴らしい作品でした。このような切り口の作品はもちろん、森に生息する動植物の営みといった作品も変わらず募集対象としつつ、CO2の吸収・固定、洪水リスクの低減、水質浄化、生物多様性保全、人類の癒やしや健康増進など、森の本質的な機能にまで焦点を当てた作品も見てみたいと考えています。私たちが想像もしていなかったような「森と仲間たち」のシーンとの出合いを心待ちにしています。

●募集テーマ:森と仲間たち

●前回の入賞作品(前テーマ「森の力で未来を変える」)

優秀賞「木は友達―コロナに負けるな―」白木勇治さん

佳作「森のしづく」田島 仁さん

佳作「復活の木」神原圭治さん