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見たことない人が8割以上! どんぐりはどんな花を咲かせるの!?

秋になるとハイキング先の低山などはもちろん、都会の公園でもたくさんのどんぐりが見られるようになります。

子どもの頃からどんぐりの実を拾い集めた経験はだれにでもあると思いますが、どんぐりにも花が咲くことを知っている、あるいは見たことがあるという人は多くないのではないでしょうか。

ウェザーニュースで「どんぐりの花を見たことありますか?」というアンケート調査を実施したところ、「ある」が19%で「ない」が81%という結果でした。

大半の人が見たことないどんぐりの花とはどのようなものなのか、また、「どんぐりの一生」などについて、千葉県立中央博物館の尾崎煙雄(おざき・けむりお)さんに伺いました。

「どんぐり」の名の由来は?

ひと口に「どんぐり」といいますが、実の形や大きさもそれぞれ異なっている印象があります。どんぐりとは、どのような植物なのでしょうか。

「『どんぐり』という名前の植物はなく、厳密な定義も存在しません。広い意味ではブナ科の植物の果実を総称した言葉で、代表的な種類としてはコナラやクヌギ、マテバシイなどが挙げられます。

クリもブナ科ですので、広い意味ではクリの実も『どんぐり』に含まれるともいえます。でも、もともと『どんぐり』という名は、『役に立たない、おいしくないクリ』が由来という説もありますから、クリをどんぐりと呼ぶのは違和感がありますね」(尾崎さん)

どんぐりにも花が咲く!?

どんぐりは花が咲くという話を聞いたことがあるのですが、本当でしょうか。

「どんぐりにも花は咲きます。コナラやクヌギでいうと4~5月頃、枝から数多くのひものようなものが房状に垂れ下がっているのがわかります。

それがコナラやクヌギの雄花で、色合いは地味ですが、よく目立ちます。房は『雄花序(ゆうかじょ)』と呼ばれる雄花の集まりで、よく見ると細長い軸に2~3mmの雄花がたくさん付いています。

秋に果実(どんぐりの実)になるのは雌花ですが、こちらは雄花と違ってよほど注意しないと見つけることはできないでしょう。

コナラやクヌギの雌花は2mmほどの大きさしかなく、若葉の付け根に“ぽつん、ぽつん”といった感じで咲いています。雌花の存在を知っていても、虫めがねなどを使って探さないと、見ることは難しいでしょう。

コナラやクヌギは『風媒花(ふうばいか)』といい、雄花の花粉が風に運ばれて雌花に付いて受粉し、どんぐりの実に育つのです」(尾崎さん)

マテバシイもよく見かけるどんぐりですが、どのような特徴をもった植物なのですか。

「マテバシイはコナラやクヌギに対して、花粉が風でなく甲虫類やハチ、アブなどの虫によって運ばれる『虫媒花(ちゅうばいか)』だという違いがあります。

マテバシイの雄花は枝から上へブラシ状に立ちあがり、長さは10cmほどになります。雌花はやはり目立たない存在で、葉の付け根に小さなものが“ぽつん、ぽつん”と見られます。

なお、ブナ科の植物ではスダジイやクリも虫媒花です。クリの木は5~6月に目立つ白い花をたくさん咲かせますので、見たことがある人も多いと思います」(尾崎さん)

花からどんぐりになるまで

ブナ科の植物は花を咲かせてから実を付けるまで、どのような『一生』を送るのでしょうか。

「日本には22種類のブナ科の植物が生育していますが、種によってまちまちです。コナラの場合でいうと春の4~5月頃に花を咲かせ、およそ半年後、その年の秋の9~10月頃に実を付けて、どんぐりになります。

一方でクヌギやマテバシイは4~6月に花を咲かせますが、その後1年間、見かけ上の変化はありません。花が咲いた翌年の夏から秋にかけて急に果実が成長して、どんぐりになるのです」(尾崎さん)

なぜ種類によって、花が咲いてからどんぐりになるのに1年目と2年目という違いが生じるのでしょうか。

「雌花の中には動物でいう卵にあたる、胚珠(はいしゅ)というものがあり、これが成長して種子になります。種類によって胚珠の成熟にかかる時間が異なるため、コナラはその年の秋、クヌギやマテバシイは翌年の秋に果実となるという差が生じるのです。

どんぐりに限らず植物が花を咲かせ果実をつくるのは、種子をつくるため。動物と同様に子孫を残すためです」(尾崎さん)

今年もたくさんのどんぐりの実を目にできる季節がやってきました。この秋にどんぐり拾いを楽しんだら、来年の春にはコナラやクヌギ、マテバシイなどの花を探してみるのはいかがでしょうか。