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旧統一教会の解散命令、東京地裁に請求 証拠5000点提出

政府は13日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を東京地裁に請求した。高額寄付を巡る組織的な違法行為を立証するため約5千点の証拠資料を提出した。教団は全面的に争う姿勢を示しており、司法判断の確定には長期を要するとみられる。

文化庁によると、地裁は請求と証拠を受理した。岸田文雄首相が教団への調査を表明してから約1年。民法の不法行為を理由とした宗教法人の解散の是非が初めて裁判所で審理される。

政府は2022年10月、民法上の違法行為でも「組織性、悪質性、継続性」の3要件を満たせば解散命令を請求できるという解釈を示した。文化庁は教団に対し宗教法人法に基づく質問権を7回行使し、170人を超える被害者らへの聞き取りも進めた。

献金や物品販売の被害が遅くとも1980年ごろからあり、不安をあおって高額な寄付をさせる手法が全国的に共通していることを確認した。違法行為の組織性が認められ、解散命令請求の要件を満たすと結論づけた。

これまでの調査で把握した被害総額は和解や示談した案件を含めて約204億円に上った。文化庁によると、東京地裁には民事訴訟の関係書類や被害者から提供を受けた資料など段ボール箱20個分を提出した。

東京地裁に提出する証拠資料が入った段ボール箱(文化庁提供)

盛山正仁文部科学相は13日、閣議後の記者会見で「解散命令が相当と認めて請求を行った。裁判所において審理が行われるが、文科省として万全の対応を取っていきたい」と述べた。

教団による被害が確認されてから解散命令請求まで40年以上が経過した点については「なぜ十分に(実態を)把握しなかったのか、反省する点は多々あると思う」と話した。

宗教法人法は「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあった場合、裁判所が解散を命令できると定める。

命令が確定すれば法人格を失い、清算の手続きに入る。税制上の優遇措置が受けられなくなるが、任意団体としては活動できる。

法令違反を理由に解散命令が出た宗教法人は過去に2例ある。オウム真理教は請求から確定まで7カ月、幹部が詐欺事件を起こした明覚寺(和歌山県)は3年を要した。今回のケースも最終的な判断の確定まで審理が長期化する可能性がある。

旧統一教会は12日、政府が決めた解散命令請求の方針について「極めて残念で遺憾。今後は裁判において法的な主張を行う」と全面的に争う姿勢を示した。

▼解散命令 宗教法人法は「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」や「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」がみられた場合、「1年以上にわたり代表役員がいない」場合などに所轄庁や検察官が解散命令を裁判所に請求できるとしている。文化庁によると2012〜22年の請求は97件で、多くは休眠法人だった。

戦前に宗教弾圧を進めた反省から、同法は「いかなる規定も宗教上の行為を制限するものと解釈してはならない」と規定。憲法が保障する「信教の自由」の観点からも、手続きに慎重さを求めている。解散命令の要件に該当する疑いがあれば、同法上の「質問権」を行使して資料の提出を求められるが、施設内に立ち入るには法人の代表者などの同意が必要となる。
宗教法人は21年末時点で全国に約18万法人ある。過去に法令違反の行為を理由に解散命令が請求され、確定したのはオウム真理教と明覚寺(和歌山県)の2例のみ。いずれも幹部らの刑事事件が根拠で、最高裁まで争われた。

旧統一教会解散命令、13日にも請求 文科相「損害甚大」

政府は12日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令を13日にも東京地裁に請求することを決めた。かねて問題視されていた高額寄付を教団による組織的な違法行為と結論付けた。刑事事件を起こしていない宗教法人の解散が司法の場で審理されるのは初めて。教団側は全面的に争う姿勢で、結論までは長期化が予想される。

2022年7月に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件後、寄付の被害が注目された教団の存続を巡る議論は最大の節目を迎える。政府は民事の違法行為でも「組織性、悪質性、継続性」の3要件を満たせば厳格に対応する姿勢を明確にした。

政府は11カ月に及んだ調査で、高額寄付の被害が宗教法人の業務として行われ、全国約1550人(約204億円)の被害が1980年以降、最近まで及んでいたことを確認。5000点の証拠を積み上げ、行為が3要件を満たすと判断した。

盛山正仁文部科学相は記者会見し「財産目的で多くの人に多額の損害を生じさせた。宗教法人の目的を著しく逸脱する」と請求の理由を説明した。刑事事件が確認されない宗教法人も、同様の法令違反行為があれば手続きを踏んだ上で請求の対象となる可能性がある。

宗教法人審議会で、旧統一教会の解散命令を請求する意向を表明する盛山文科相(12日、東京・霞が関)

宗教法人法は「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあった場合、裁判所が解散を命令できると定める。過去、法令違反を理由に解散命令が出たオウム真理教など2例は、いずれも幹部らの刑事手続きが進んでいた。

旧統一教会は刑事事件がない中で、政府が先行して宗教法人を調査し、解散命令の是非を司法判断に委ねる初のケースとなる。

政府は2022年10月、旧統一教会を念頭に、民法上の不法行為も3要件を満たせば解散命令請求できるとの新たな解釈を示した。それに基づき、所管する文化庁宗務課は同11月、宗教法人法上の「質問権」を初めて行使。並行して170人超の被害者らに聞き取りを進めた。

日本経済新聞社が22年10月に実施した世論調査で「請求すべきだ」と答えた人は78%に上ったが、政府は「法律に照らして判断した上で手続きを進めていく」(岸田文雄首相)と慎重な立場を維持してきた。

宗教関係者らの意見を聞くなど手続きの正当性も担保。12日も請求に必須でない宗教法人審議会(文科相の諮問機関)を開き、全会一致で請求が相当との意見を得た。

今後の審理は東京地裁が非公開で進める。地裁の決定内容に不服があれば高裁や最高裁で争われる。過去2件は最高裁まで争われ、オウム真理教は解散請求から確定まで7カ月、幹部が詐欺事件を起こした明覚寺(和歌山県)は3年を要した。旧統一教会を巡る判断も年単位で時間がかかるとの見方がある。

裁判所の解散命令が確定すれば、教団の法人格は剝奪され、活動は大きく制限される。選任された清算人が清算手続きを進め、税制上の優遇措置もなくなるが、任意団体としては活動できる。オウム真理教は解散命令確定後、後継の「アレフ」などが任意団体として活動を続けている。

政府は調査と並行し、いわゆる「霊感商法」や高額寄付に関する被害救済を急いだ。信者を親に持つ「宗教2世」の存在を念頭に、23年1月に不当寄付勧誘防止法を施行。同法は法人や団体による寄付勧誘を禁止したが、自ら信じて寄付した場合は対象にならないなど予防や救済の実効性がなお課題とされている。

旧統一教会「極めて残念」、争う構え

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は12日、政府が示した解散命令請求の方針について「極めて残念で遺憾。偏った情報に基づいて政府がこのような重大な決断を下したことは痛恨の極み」とコメントを発表した。

「今後は裁判において法的な主張を行っていく」として司法の場で争う構えを示した。

「2009年のコンプライアンス宣言以降、改革に積極的に取り組んできた」と活動の正当性を強調。「解散命令を受けるような教団ではないと確信している」と主張した。