
そして40歳も間近に迫ったころ、 福井さんは釣竿を改良した棒を使って、 車いすに乗ったままアルミの空き缶を拾うという、 自立への第一歩を踏み出しました。
平成2年のことでした。
周囲からの好奇の目に晒されました。 また心無い人たちから中傷を受けることもありました。
もういやだ、…いったん動き始めた福井さんですが、 あきらめかけようとしていました。
そんなとき、弱気になる彼女を、その都度叱咤してくれたのは、 じっとそばについている母親でした。
母親も一緒に朝の5時からごみ収集場所を回り続けます。
そのうち彼女の活動に賛同した酒店が、 アルミ缶をまとめて出してくれるようになりました。
また周囲の人たちも、彼女の一途な気持ちを理解して、 空き缶を貯めておいてくれるようになりました。
活動をはじめてから半年が経ち、 約36,000個のアルミ缶を業者に引き取ってもらい、 そのお金であの老人ホーム「新生苑」に 車いすを1台寄付することができたのです。
目に涙をためて「ありがとう」を言ってくれるスタッフの方々。 入所の高齢者の方々からも「ありがとう」の声をたくさん受けました。
でも、誰よりも嬉しかったのは、 福井さん本人でした。 「ああ、私でも誰かに”ありがとう”を言ってもらえるのだ」
福井さんの気持ちに火が付きました。
その後も彼女の活動は続けられ、 5年後には、100台を超える車いすが、 全国の福祉施設に寄付されました。

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