長尺トイレットペーパー・箱なしティッシュ…変革進む紙物流、商品の再設計で無駄なくす

王子ネピアの2倍巻きのトイレットペーパー

紙・板紙業界が総じて需要の回復に手間取る中、家庭向けの衛生用紙は堅調だ。気を吐いているのが「長巻き」トイレットペーパーと「ソフトパック」ティッシュで、物流効率の高さが注目されている。

「持ちやすく、店の定番棚に置かれ固定客がいる。物流問題以前からの取り組みが、本当のイノベーションになった」。1996年から長尺トイレットペーパーを扱う日本製紙クレシア(東京都千代田区)の高津尚子取締役は胸を張る。

3倍巻きは1ロールの長さが通常一般の3倍だが、従来のふんわり感を保つ。同社は21年春、トイレットペーパーの生産を長尺商品に特化した。延長線上でこの10月、内容量を一般的な商品より約7割高めたボックスティッシュを発売する。

購入や箱交換の頻度を減らせるなど利便性に加え、箱への収納率を上げて10トントラックで一度に輸送できる枚数が従来比24%増える。物流効率は商品競争力に直結する。

現在、ティッシュ市場で伸びているのが、紙箱をなくしフィルムで包んだソフトパックだ。“国産”を強調する大王製紙は需要増に対応し、静岡県内の工場で最大級の専用加工機を稼働している。

ボックス型に比べ、コンパクトで狭い場所でも使いやすい。「商品輸送に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を、中に隙間がある箱型より34%削減できる」と同社は自信を示す。

王子ネピアの赤ちゃん用紙おむつ

王子ネピア(東京都中央区)は長尺ロール、ソフトパックティッシュに加え、赤ちゃん用紙おむつに力を注ぐ。2023年春に刷新し、おむつの厚みを約25%削減した「極うす」が特徴で、やはり輸送効率に寄与している。

斎藤理佐子執行役員は商品開発について「利便性をはじめ物流、環境など複数の社会課題への同時対応が必要。今のサイズや用途がベストか、不断の見直しが欠かせない」と語る。

日本製紙クレシア、王子ネピア、大王製紙、カミ商事(愛媛県四国中央市)などは家庭紙輸送に業界標準パレットを運用している。製品出荷は従来1個でも多く車に搭載すべく、人による手積み・手下ろしが主流だった。

フォークリフトを使うパレットの活用に変え、省力化やトラック待機時間短縮につなげる。ここ3年ほどの新商品は、規格化されたパレットからはみ出さないよう、あらかじめ設計されている。

「まるで空気を運んでいるようだ」と指摘されてきた紙製品。物流の24年問題をピンチとみるか、画期的商品を生むチャンスととらえるか。物流面から挑む企業と業界の変革は始まったばかりかもしれない。(編集委員・山中久仁昭が担当しました)

日刊工業新聞 2023年09月29日