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「自治会入ってないとゴミ出し禁止…脅しをかけられています」自治会トラブル複雑化 未加入者「メリットない」、自治会員「不公平だ」、市「助け合って…」

かつては入るのが当たり前という暗黙の風潮があった「自治会」。
加入者はいま減少傾向ですが、自治会と未加入者のトラブルが全国で多く確認されています。
すんなり入るのが正解なのか、それとも入らない

選択肢もあるのか。自治会と未加入者のトラブルの実態を取材しました。

先日、BSS山陰放送に、あるお便りが届きました。

「ごみ収集について、自治会入っていない人は出してはいけないという、理不尽な事を言い出して、数人で家まで押しかけ、今後市役所の担当者も引き連れて家に来ると、ある意味脅しをかけられています」

送ってくれたのは鳥取県米子市に住む女性です。

女性によると、1997年ごろに市内に家を建て、およそ10年間自治会に所属。子ども会の班長なども務めましたが、子どもが成人したのを機に退会しました。

自治会退会後も、これまで通りゴミを捨てるなど変わりない生活を送ってきましたが、去年10月と今年6月、女性の元に封書が届き、7月には自治会長らが女性宅を訪問してきたといいます。

自治会を退会した女性
「夕方家に来られて、これからはゴミステーションもできたので、自治会の管理下のもとなので、入ってない方は捨てないようにと言われました」

実際に送られてきたという文書を見せてもらうと、新設されたゴミステーションは自治会が設置し管理するもので、会員以外は使用できないとの記載があります。
合わせて、自治会加入の可否について問う文章も記載されていました。

自治会を退会した女性
「自治会加入は本来は任意のものだから、理由を言う必要はないと思います。私は以前自治会を経験していますが、色々なことでちょっと納得いかないので、自治会は辞めることにしましたと言いました」

BSS

そもそも自治会の入退会自体は、法律上の義務はありません。ただ、自治会内のルールは自治会ごとで決められるため、対象の地区で暮らす住民は、そのルールに従うのが習いと言えます。

今回、どのような経緯で封書の配布や女性宅訪問をしたのでしょうか。
自治会長にも話を聞きました。

自治会長
「あまりにもゴミが散らばるということがありました。前日に出したりとかね。
そういうことで、ネコ・イヌ・カラスが、以前のネットをかけただけの集積所をつついてしまったんです」

以前、この地区の収集所は県道沿いにあり、自治会員で管理をしてきました。
しかし、分別や指定日などルールが守られていない状況が続いたほか、鳥獣の食べ荒らし被害も散発したため、米子市が管理する近くの緑地に、ネット式ではないゴミステーションを自治会費から捻出して新設することになりました。

自治会員の男性
「自治会に入っているときは(女性も)当番していたと思いますが、抜けられたあとは当番をしていません。
『自治会に入ってない人が捨てることをこれまでは黙認していましたが、これまでのゴミ置き場はなくなって捨てれなくなるので、もう1度自治会に入り直しませんか?』とさせてもらって。
でも『入りたくない』って。まあ、そこを強制するつもりはないので、その代わりに我々が設置して管理しているゴミステーションには捨てられないよと。
他の自治会の皆さんからも、その特例の了承は得られないという話を差し上げた次第です」

これまで「自治会に入っていないとゴミを捨てられない」という明確なルールはありませんでしたが、今回は経費も発生したため、利用法を見直すことになったというわけです。

では、自治会未加入者は、どのようにゴミを捨てれば良いのでしょうか。

実際こうしたトラブルは、頻繁に市に相談があるそうです。

米子市クリーン推進課の担当者
「まずは自治会内でお話をいただき、場合によっては、市の担当者が両者の間に入ってトラブルの解消に努めています。
仮にステーションの横などにゴミを出されても回収業者は回収はしないので、最終的にはクリーンセンターへの直接搬入か、市の許可業者に有料でゴミ収集に来てもらうなどの方法を未加入者には案内しています」

自治会加入率は以前と比べ、減少の一途をたどっています。

BSS

例えば米子市では自治会加入率が2013年には64.6%でしたが、年を経るごとに低下し、5年後の2018年には61.8%に。さらに5年後の2023年(4月30日現在)は58.1%と、6割を割り込みました。

米子市地域振興課の担当者
「自治会に入っておられない方というのはごくごく少数で、どちらかというと若い世代が多いと感じています。
自治会に入らない理由は、よく口にされるのが、「だってメリットがないでしょ」って。自治会費を払って、役まで受けて。地域の活動に興味がない方が多いんじゃないかなという印象です」

自治会に入ると、役員や班長業務が定期的に回ってくるほか、一般の会員も市の一斉清掃や出水期前の用水路清掃などに参加することになります。

そして、地域に設置している防犯灯の電気代なども自治会費で負担している部分があると言います。

また、地域のゴミ収集所の中には、自治会メンバーが私有地を無償で提供している場所も少なくありません。

そのほか、半行政的な仕事を自治会が担っていることも多いと言います。
加入率の低下が著しい今、会員の負担は大きくなっているのでしょうか。

自治会員の男性
「(自治会業務は)増えていません。そもそも前から多いです。
大半の人が役員を兼務しています。うちはなり手がないので、総務と防災が兼務していたり、会計と交通が兼務していたりします。ゴミの当番でも役があって必ず班長をしないといけません。
そうなると、自治会費を使って作ったステーションに未加入者でもゴミが捨てられる、そういうサービスを認めるってわけにはいかないんです。それは他の自治会のメンバーさんからしたら納得がいかないと思います」

こうした実態を行政も把握していますが、抜本的な改善策がないのが実情です。

仮にゴミの収集所の維持管理、地域の清掃活動などの自治会が担っている仕事を行政に任せたとして、結局は外部の業者に委託することになります。そうすると税金の使い道を再考する必要も出てきます。

米子市自治連合会事務局の担当者
「自分の住んでいる地域も、何もしなくても安全に暮らせているかっていうとそうじゃなくて、何か道路に支障があったら地域の誰かが言って直したりとか。そうやって今の私たちは安全な暮らしをしていると思うのですが、皆が助け合って暮らしていること、そこを分かっていただけると良いのかなと思います」

お便りを送ってくれた女性は、現時点では自治会への加入の意思はないということですが、女性が願うこととは…

自治会未加入の女性
「多分、自治会さんも上から色んな指示とかされて大変な仕事が多いと思います。
その中で自治会と未加入者のトラブルが起きているという可能性もないとは言い切れないと思うので、本当に市自体が、自治会連合から何から全てをちょっと変える方向性で考えていただきたいと思います」

そこに住む以上、地域に無関心というわけにはいきません。
住民も自治会も行政も、それぞれが街づくりの仕組みについて改めて考えてみても良いかもしれません。

自治会は「入ったもん負け」? 結局ゴミは捨てられる…行政の自治会依存が増し「不公平感」も

自治会への入会を断る人が増えるなど、自治会員のなり手不足が問題となる一方で、ごみ収集や災害時の住民避難支援などで、行政が自治会への協力を求めるシーンは増加しています。
非加入者に比べ、負担ばかりが増える…自治会は今や「入ったもん負け」なのでしょうか。

鳥取県米子市内のある地域。
月曜朝、市のごみ収集車が収集所にやって来ます。
この日はすべてのごみが回収されましたが、ごみの分別ミスなどにより、回収されないごみが、そのまま収集所に残されるケースも少なくありません。

地域の自治会員以外が出してしまったのか、指定ごみ袋以外の袋で出されるごみもあると言います。
残されたごみは、自治会の班長が責任を持って一旦回収。
班長に割り当てられた有料ごみ袋に入れ直すなどして、次の回収日に捨てています。


その一方で市内には、自宅前などにごみを出しておくと収集車が回収する、いわゆる「戸出し」の仕組みが残っている家や地域もあります。

この違いは何なのでしょうか。

ごみ収集所の使用をめぐり、自治会への加入トラブルも…

米子市の担当者
「住宅が立て込んでいたりなど、ごみ収集所が設置できていない地域で、以前からの『戸出し』の仕組みが残っている場所もあります」

市では「戸出し」の解消に向けて地域との協議を進め、不燃ごみやペットボトルなどの回収場所からステーション化を進めていて、可燃ごみにも広げて行きたいとしています。

こうした中、ごみ収集所の使用をめぐり、自治会への加入・非加入に絡んだトラブルも存在します。
自治会が設置した収集所への非加入者のごみ捨てが断られるというケースもあり、こうした場合は、市が両者の間に立つなどして、トラブル解消に努めていると言います。

自治会に加入している男性は、次のように話します。

自治会員
「地域に引っ越してきた時、ごみ捨てのことがありましたので、自治会に入らなければと思い、入会しました。ただ、自治会に入らなくても、ごみがきちんと捨てられるなら、入会しないという選択肢もあったと思います」

自治会加入率低下…背景に「不公平感」も

自治会への入会を断る人が増えるなど、自治会員の成り手不足が叫ばれて久しい昨今。
例えば米子市では自治会加入率が2012年には65.5%でしたが、年を経るごとに低下し、5年後の2017年には62.4%に。
さらに5年後の2022年(4月30日時点)は58.5%と、6割を割り込みました。


低下を続ける自治会加入率。
背景には「不公平感」が浮かび上がります。

自治会に入ると、役員や班長業務が定期的に回ってくるほか、一般の会員も市の一斉清掃や出水期前の用水路清掃などに参加しなければなりません。

地域に設置している防犯灯の電気代なども自治会費で負担している部分があると言いますが、もはやお金の問題ではないと、自治会役員経験者は話します。

「自治会は入ったもん負けだと感じる」…その理由は?

自治会役員経験者
「自治会に入らなくても、ごみを捨てられ、行政サービスはもちろん受けられます。しかし自治会でやっている仕事は結局、自治会に入っていない人にも利益が及んでいて、仕事自体は自治会がやっている状況です。
今さら退会するのも角が立ちますし、自治会は今や入ったもん負けだと感じています」


以前は自治会に入らない人が少数派ということもあり、気まずさが勝ったと言いますが、最近は自治会加入を断る人も増えたことから、非加入であることに居心地の悪さを感じるシーンが少ないのではと話します。

 

地域のごみ収集所の中には、自治会メンバーが私有地を無償で提供している場所も少なくなく、こうした収集所の清掃や維持管理は、行政でなく自治会メンバーの担当です。

そのほか、半行政的な仕事を自治会が担っていることも多く、加入率の低下に反して、行政から背負わされる仕事は、共働きなども当たり前になる中、逆に負担が大きくなっている気がするとこぼします。

自治会役員経験者
「様々な仕事が自治会に降ってきて、責任をどんどん負わされている気がしています。自治会員が減り年寄りばかりになる中、メンバーだけで何とかするのは厳しく、そもそも行政的な仕事は行政がやってほしいというのが正直なところです」

「なぜ自分たちばかりが…」背景に不公平感も

その中でも近年、重要さを増しているのが、自治会の「防災組織」としての役割です。

大きな地震や水害などの際の初動対処として、自治会に求められる期待は増していて、自主防災組織の結成が奨励されています。

例えば鳥取県では他にも、県社会福祉協議会が支援する「災害時における支え愛地域づくり推進事業」があり、災害時に円滑に住民が避難するため、集落内での懸念などを記したマップ作りなどが取り組まれています。
これも実施主体は「自治会」で、自治会が問題意識を持って取り組まなければならない形となっていて、これまでに県内の自治会の3分の1に迫る901(2022年4月時点)自治会が実施しています。

自治会役員経験者
「自治会は集落全体のことをやらなければいけないのに、非加入者は常に受け身のままで同じサービスが受けられている状態です。
非加入の人は、そんなこと頼んでいないと言われるかもしれませんし、自治会の仕事に対して特にクレームなどは受けたことはありませんが、なぜ自分たちばかりが…と、不公平さは感じています」

「自治会」は今後どうあるべきなのか。
不公平感を解消するための策はあるのでしょうか。