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元ラブホ従業員が遭遇した“地獄絵図”…「豚骨ラーメンが食べられなくなった」

東洋一の歓楽街とも言われる歌舞伎町。その中心地とも言えるTOHOビルや歌舞伎町タワーを超えた、ホストクラブをはじめ夜の店が乱立する一角のラブホテルで、スタッフとして働いていたのが杉山春樹さん(仮名・30代)だ。  そこは歌舞伎町ではかなりの格安店で、1番リーズナブルだと「休憩4000円前後・祝前日でも宿泊1万円以内」で借りられる部屋もあった。ただそのぶん「民度の低い客が多かった」と杉山さんは振り返る。  欲望渦まく街だからこそ見えてきた、様々な痴情のもつれや、理解し難い迷惑客に遭遇してきた体験を明かす。

ハンバーガーの紙袋が20個ぐらい散乱

 杉山さんが1番メンタルをやられたのが、「排泄物や吐瀉物まみれに汚された部屋を清掃すること」だったという。 「2〜3日に1回は、吐瀉物や排泄物が残った部屋を片付けていました。よくあるのがジャグジーの噴出口に吐瀉物が詰まっているケース。ただ単に、泥酔された方が嘔吐してしまったならまだ事情はわかるのですが、吐瀉物とローションが混ざった状態で流されていることが多く……。吐瀉物とローションが混ざったスライムのような物体が、噴出口からボコボコと湧き上がってくるのは地獄絵図でした。  吐くのがプレイの一環なのかはわからないですが、一度、確信犯だと思った出来事がありました。その部屋はバスルームに吐瀉物が撒き散らされていたのですが、もっと驚いたのはベッドの上にハンバーガーの紙袋が20個ぐらい散乱していたこと。もうその一室はファストフード特有の油っぽい匂いと、吐瀉物の匂いが混ざり合っていて、かなり強烈でしたね

 

 

部屋の10箇所ほどに排泄物が…

部屋の10箇所ほどに排泄物が…

杉山春樹さん(仮名・30代)

 なかには、バスルームやトイレだけでなく、部屋中に排泄物が撒き散らされていたこともあったという。 「これまでで1番衝撃的だったのは、かつてないほどの激臭で、部屋の扉を開けた瞬間に思わず涙が出てしまったことです。排泄物だけでなく、ホームレスの体臭をキツくしたような匂いに、吐瀉物の匂いなど、いろいろな激臭が混ざって、息を止めないと部屋に入れないほど……。  その後、部屋を掃除していると、テレビ画面の裏側や棚の裏側など、10箇所ほどに排泄物がくっついていたんです。おそらく女性が排出したものなのか、ウサギのフンのような大きさのものがアチコチに散乱していて呆然としました。  結局、ドアや窓を開放したままで掃除しましたが、あまりの匂いにその部屋は1日貸し出し禁止になり、フロア全体にも匂いが漏れてしまう始末。これは清掃でよくある話なのですが、水回りのバスルームの掃除をすると、蒸し返して匂いが充満してしまうんです」

豚骨ラーメンが食べられなくなってしまった…

「後から受付の人に男女の様子を聞いたら、男は50代半ばで、女は20代前半ごろ。女性のほうから異臭が漂っていたそうです。男性は普通のポロシャツにジーパンとなんの変哲もない見た目なのに、わざわざプレイのためにそこまでするのか。心の底から理解に苦しみます」  こうした異臭に慣れてしまったために、思わぬ弊害も出たと続ける。 「排泄物が放置されている匂いって独特なんですけど、先輩から『豚骨ラーメン屋から発せられる室外機の匂いに似ているよね』と言われたんです。それ以来ラーメン屋を通ると、ホテルで泣く泣く清掃しながら掃除した記憶がフラッシュバックして、一時期豚骨ラーメンが食べられなくなりました」

月1回ほど警察が来る理由とは?

 杉山さんの勤務先では、一定のスパンで警察が訪れてくるそうだ。理由はきまっていつも同じで、“児童売春の証拠写真を撮影するため”だという。 「僕が遭遇する範囲では、月に1回ほど30〜50代ぐらいの中年男性と一緒に警察が来る光景に出くわします。総じて中年男性は児童売春で捕まっており、警察が事件時の様子を検証しに来るんですね。  どこの部屋に泊まったのかをフロントにあるディスプレーのパネルで確認したり、部屋内に入って一連の行為を話してもらう場合もあります。逮捕されたおじさんが証拠写真を撮られている姿は哀愁が漂っていましたね……。この辺りは未成年の立ちんぼやトー横キッズも多いので、歌舞伎町という土地柄もあって、警察が事情聴取で訪れるホテルも多いと思います。  ラブホテルは18歳未満は使用できないルールがありますが、ぶっちゃけいちいち年齢確認などはしない。たまに明らかに未成年ぽい見た目の方をお断りすることはありますが、大半は若そうな見た目でも通しちゃいますね」

 

明け方に「部屋から出して下さい!」という内線が

 杉山さんは、児童売春以外にも、警察沙汰に発展するケースがあったと振り返る。 「ある日の明け方、ちょうどお客さんが引いた時間帯でもあったので、私は休憩室で仮眠していたんです。そしたら部屋から内線がかかってきて、出たら女性が金切り声で『身ぐるみを剥がされました!今すぐ来て下さい!』と、捲し立てているんです。  慌ててマスターキーを持って部屋に行ったら、女性がドアをガンガン叩きながら、『ここから出して!!!』と取り乱していました。部屋を開けたら女性は服も着られないほどの有様でしたので、代わりに女性スタッフに対応してもらいました。  事情を聞いたところ『ホテルに入室した記憶すらない』というらしいんです。女性いわく、一緒に入室した男とはその日に初めて会ったというのですが、目が覚めたら裸で、貴重品類が盗まれ、なおかつ財布の中身は空っぽ。室内にある精算の機械で料金を払わないと出られないので、そこで混乱して電話をしたそう」

 

忘れられない「般若のような形相」

「一般的にラブホテルでは、連れの人が先に帰る場合、フロントに電話して相手の了承を確認してから返すのですが、その時は深夜帯だったのでたまたまフロントに人がいなかったんです。そのタイミングを狙って男は犯行に及んだのでしょう。  入室した記憶すらないうえ、相手の男が初対面だと考えると、おそらくドラッグでも仕込まれたのかなと。ホテル側としては料金を払ってもらわないといけないので、その場で警察を呼んで対応してもらいましたが、あの時の半狂乱で騒いでいた女性の顔は忘れられないですね。怒りすぎているのか混乱しているのかわかりませんが、目が釣り上がって般若みたいな形相になっていて……」 =====  話を聞けば聞くほど、想像以上にハードな現場なのだと認識させられた。とはいえ、日常生活にはない刺激を味わえるのも事実。1度経験したら心身ともタフになることは間違いないだろう。 <取材・文/佐藤隼秀>

佐藤隼秀

1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬