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ゴミを燃やさない。スロベニアの首都が、環境に優しい理由

スロベニアはバルカン半島の北部に位置し、面積は日本の四国とほぼ変わらず、人口は200万人程度の国である。首都はリュブリャナで、約29万人が住んでいる。東京と比べると50分の1の人口だ。

リュブリャナはエコな首都として知られているが、驚くべきことにごみ焼却場がない。約20年前はほぼすべてのごみが埋め立てられていたが、自治体を挙げてごみの分別・回収を進め、2014年には「zero-waste」という廃棄ゼロの目標を掲げた。

そんな取り組みが評価され、2016年には「欧州グリーン首都賞」を受賞。環境保全活動が進んでいるヨーロッパの中でも、サステナブルな街づくりが評価されている。 

「真のリサイクル」を追求


リュブリャナの特筆すべきポイントは「真のリサイクル」を追求していることだ。

日本のリサイクル率を80%以上とする考え方もあるが、その大半はごみを焼却して熱を利用する「サーマルリサイクル」と言われる処理方法であり、国際的にはリサイクルに含めないことが多い。

その点、リュブリャナは焼却場を使用していないため、本当の意味で再資源化を実現している。

大型リサイクル施設「RCERO」

リュブリャナの「真のリサイクル」を可能にしているのが、2015年に開業した大型のリサイクル施設「RCERO」だ。

この施設ではごみを燃やさずに、リュブリャナを含む周辺都市の約70万人分のごみのリサイクルと処理を行っている。

先端技術を活用し、97%以上がアルミ、堆肥、燃料に生まれ変わっているようだ。埋め立てられるのは、わずか2〜3%のみである。

家庭での分別も徹底

リュブリャナの家庭では、ごみ箱を5つ用意して家庭ごみを分別しているそうだ。使用済みの油も容器にとっておき、一定の量が溜まれば処理施設に持ち込んでリサイクルされる。

家庭で分別したごみは外の収集箱に入れる。こうすることで、家庭から出るごみの70%が再利用できるものとして分別できているという。残りの30%は「RCERO」に運ばれる。

次世代に受け継ぐ「分別の大切さ」

リュブリャナでは、ごみ問題についての学校教育にも力を入れている。授業で分別の大切さを学び、子どもたちが大人になってもキレイな地球を守れるようにしているようだ。

日本でも、学校教育においては文部科学省が定めた「学習指導要領」により、小学校4年生で地域の廃棄物処理を学ぶことが定められている。その一環として地元の清掃工場の見学や下水処理場の見学に行くが、小学校4年生を終えると学校教育で廃棄物について学習するまとまった時間は設けられていない。

学びの機会をさらに増やすことで、日本人全体の環境意識が向上するかもしれない。

私たちにできること

先ほども触れたように、日本のごみの処理の多くは、CO2を排出するサーマルリサイクルに頼っており、環境に優しいとは言い難い。

焼却後のごみが運ばれる最終処分場は、あと23. 5年で満杯になってしまうと推計されている。

今すぐ日本でリュブリャナのような社会を実現するのは不可能だが、私たちは自治体のルールを守ってしっかりごみの分別をし、できる限り資源を有効利用していくことが大切である。

【参照】
・Guardian News
https://www.theguardian.com/cities/2019/may/23/zero-recycling-to-zero-waste-how-ljubljana-rethought-its-rubbish
・環境省
https://www.env.go.jp/press/press_01383.html
・環境展望台
https://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=13828
・JAL
https://www.jal.co.jp/tabi/info/toshi/eur/si/index.html
・外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/slovenia/data.html
・東京都
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/08/30/05.html
・資源循環・廃棄物研究センター
https://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/202101.html


※この記事は、2023年9月にリリースされた「エシカルな暮らし」からの転載です。