
密猟されたセンザンコウのウロコから、これまでに知られていない新種の存在が明らかになったそうだ。
だが、それがどこに生息しているのか誰にもわからない。その謎めいた素性ゆえに、新種は「マニス・ミステリア(Manis mysteria)」と仮に命名されている。
せっかくの出会いだが、この新種はすでに絶滅の危機にあるそうだ。
ウロコに薬効があると信じられていることから、センザンコウは世界でもっとも密猟されており、どの種も絶滅の危機にある。
危険な状況にあるのはマニス・ミステリアも同じで、そのゲノムには個体数の減少を示す兆候が見られるという。
世界で一番密漁されるセンザンコウ
全身ウロコ姿であることから爬虫類に見えるが、実は哺乳類(あるセンザンコウは、残念ながら世界で一番密猟されている動物だ。
主な原因は、ウロコに薬効があると根拠なく信じられ、伝統的な薬として使われていることだ。またその皮を使った製品もあるし、肉も食用にされている。
自然保護団体によれば、2014年までの10年間で100万頭以上が密猟され、2016年からはあらゆる国際取引が禁止されることになった。
それでも密猟はやまず、これまで8種(アジア4種、アフリカ4種)の存在が確認されているセンザンコウの仲間すべてが、絶滅の危機にある。

じつはセンザンコウのグループは、従来考えられてきたよりももう少し大きいのでは? と疑う学者もいる。
2012年と2013年に香港で押収された27点のウロコを調べてみたところ、すでに知られている8種とは違うセンザンコウの存在が浮かび上がってきたのだ。
しかし、このときは遺伝的な証拠が足りず、はっきりと結論を出すことができなかった。

押収されたセンザンコウがこれまで知られていない9種目と判明
今回『PNAS』(2023年9月25日付)に掲載された研究では、2015年と2019年に中国雲南省で密売業者から押収されたウロコが調べられた。
そのゲノムをほかの8種と比べてみたところ、これまで知られていた8種とは異なる新種の存在がはっきりしたのだ。
その新種は「マニス属」に属しているらしく、その謎めいた素性にちなんで「マニス・ミステリア(Manis mysteria)」とひとまず命名されている。500万年ほど前、フィリピンやマレー半島に生息するセンザンコウから分岐した種である可能性が高いという。

香港で押収されたこれまで知られていなかったセンザンコウの鱗とその一部/ image credit:Yien Mo
すでに絶滅の危機に瀕している
せっかくの新しい出会いだが、喜んでばかりもいられない。ほかのセンザンコウと同じく、この新しい仲間も絶滅の危機が迫っているのだ。
ほかのセンザンコウよりも遺伝的な多様性に乏しく、近親交配の痕跡や遺伝的負荷の高さなど、数が減っている種のゲノムに現れる特徴が見られるのだ。
だが保護しようにも、そもそもマニス・ミステリアがどこに生息しているのかすらわからない。
香港や雲南省に持ち運ばれるアジア原産のセンザンコウは、ほとんどが東南アジアでとらえられたのものだと考えられている。
もしかしたらマニス・ミステリアは、ほかの同系統の仲間と姿が似ているために、これまで気づかれなかったのかもしれない。
あるいは生息地があまり調査されていない地域であるため、知られていなかったという可能性もある。
いずれにせよ今回の結果は、すでに危機的な状況にある新種のセンザンコウを守るため、彼らについて知る効果的な戦略が直ちに必要であることを示している。
References:Genomic analysis
reveals a cryptic pangolin species | PNAS / Scientists uncover a scaly surprise with new pangolin species / written by hiroching / edited by / parumo
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