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三国志ファン必見のドラマ『パリピ孔明』、いまさら聞けない「諸葛孔明」とはどんな人物だったのか

こんにちは。ニッポン放送アナウンサー、箱崎みどりです。

普段は、プロ野球中継「ショウアップナイター」や「ナイツ ザ・ラジオショー」の中のラジオリビングというショッピングコーナーを担当するなど、アナウンサーとして働いているのですが(ラジオのAM1242/FM93や、radikoでお聞きいただけます!)、子どもの頃から三国志が大好きで、講談社現代新書から『愛と欲望の三国志』という本を出したり、三国志に関する調査を続けたりしています。

三国志が好きと言い続けてきたおかげで、先日は、歴史シミュレーションゲーム『三國志』シリーズの生みの親、シブサワ・コウさんに、日本一三国志が好きなアナウンサーと仰っていただき、また、漫画『パリピ孔明』の原作者・四葉夕卜先生に、ラジオ番組のゲストにお越しいただいたこともあります。

さて、今日から始まるこの連載では、そんな三国志好きの私が、三国志の登場人物・諸葛孔明が現代日本で大活躍する漫画『パリピ孔明』のテレビドラマ放送に併せて、三国志ネタを解説していきます!

『パリピ孔明』は、2019年に連載が始まった漫画、そして昨年放送されたアニメも大ヒット! 三国志を御存知ない多くの方々にも広く支持されています。

ただ、三国志を知っていると、三国志愛に溢れている『パリピ孔明』はもっともっとエモい!

この連載は、三国志好きが『パリピ孔明』に感じている、胸が熱くなる、叫びだしたくなるような気持ちを、三国志を御存知ない皆様にも味わっていただこうという試みです。

今回は、ドラマ放送前の導入編。まず、三国志と諸葛孔明という人について、押さえておきましょう。

※この記事は、テレビドラマ『パリピ孔明』を観るにあたり、ネタバレにはならないはずですので、どうぞご安心ください。

そもそも、三国志とは?

現代日本でも、ゲームや漫画で広く親しまれている三国志。そもそもは、古代中国・後漢の終わりから、群雄割拠の時代を経て、魏・呉・蜀の三国に中国が分かれ、滅びていく時代を描いた歴史書が、『三国志』です。

西暦で言えば、180年頃から約100年。『三国志』の一部「魏志倭人伝」に、邪馬台国の卑弥呼が出てきますので、日本は弥生時代です。『三国志』は、三つの国ごとに、魏志・蜀志・呉志に分かれています。魏の歴史を描く「魏志」の中の「倭人伝」に、当時の日本のことが書かれているんですね。

ということで、『三国志』というのは、元は、古代中国の100年程を描いた歴史書なのです。短い期間ながら、それぞれ国を建てた曹操・劉備・孫権をはじめ、英雄たちが綺羅星の如く集まる三国時代は、物語のタネになっていきます。

三国時代の人物を題材にした物語が作られ、庶民の間でも、講談や芝居の形で親しまれていきました。そうした三国時代の歴史をベースにした物語を整え、まとめたのが、元末明初(十四世紀後半)にできた『三国志演義』です。登場人物の事績や戦の勝敗は史実を基にしているものの、具体的なエピソードは虚構が多い、といったイメージです。中には、董卓・呂布を手玉に取る美女・貂蟬や、関羽に付き従う武将・周倉のように、史実にない登場人物もでてきます。

当時の知識人も楽しめる小説になった『三国志演義』は、中国で盛んに読まれ、海外にも輸出されました。日本では、江戸時代の初めに、徳川家康のブレーン・林羅山の既読書目録に記録されています。

その後、1691年から翌年にかけて、湖南文山が『三国志演義』の日本語訳『通俗三國志』を出版。物語としての三国志は、広く日本で親しまれていくことになります。

江戸時代に花開いた、三国志を楽しむ文化

『通俗三國志』は、日本で初めて完訳された長編小説と言われています。個性豊かな数多の英雄たちが織り成す、裏切りや忠義といった重厚な人間ドラマ。軍師たちが知恵を絞り競い合う、騙し騙されの権謀術数。当時の読者は、初めて読むスケールの大きな物語に、夢中になったようです。江戸時代には、『通俗三國志』の出現をきっかけに、三国志が、小説や絵画はもとより、芝居になり、川柳になり、春画になり、見世物になり、山車になりと、爆発的な人気を博すようになりました。

その中には、『パリピ孔明』のご先祖様とも言えそうな、男女逆転三国志や、登場人物を鳥にした三国志、グルメ小説の中に入った三国志のパロディ、はたまた、源義経と関羽・孔明が碁盤を囲む話などなど、自由な発想のオンパレード。ご興味のある方は、拙著『愛と欲望の三国志』や、こちらの記事「張飛が艶っぽい遊女に⁉江戸の人々が遊び倒した『三国志』のパロディ」(https://gendai.media/articles/-/60056)をご覧ください。

 

教科書にも載っていた、孔明という人物

江戸時代に庶民の間に様々な形で浸透した三国志ですが、明治以降、主役になるのが、『パリピ孔明』でも大活躍する諸葛孔明です。姓は諸葛、名は亮、字(あざな)は孔明。諸葛孔明、また孔明と呼ばれることも多いです。

孔明は、三国の一つ、蜀の劉備に仕えた実在する人物で、国のトップ、今でいえば、総理大臣を務めました。物語の中では、圧倒的な知力に、無比の忠誠心、さらに高潔な人格まで併せ持つ、完全無欠のスーパー軍師。国の中枢にいながら、残した私財がほとんどないなど、清廉の人でした。後世では、『パリピ孔明』で描かれているような、白羽扇と綸巾(帽子)がトレードマークです。

こうした、孔明の真面目さ、忠誠心は、戦前の国民教育にぴったりでした。江戸時代、主に娯楽の一つとして消費された三国志にまつわる文物ですが、明治時代は、孔明を特別な英雄にしていきます。

土井晩翠の流麗な長編詩「星落秋風五丈原」(1898年『帝国文学』で発表)で、孔明の忠誠と志半ばで没した悲壮な姿が強調され、小中学生が使う教科書に孔明の逸話が掲載されることで、そのイメージが広まっていきました。さらに、孔明についての伝記、偉人伝は、明治から戦前の間に少なくとも10冊出版され、物語である『三国志演義』『通俗三國志』とは違う、実在の人物としての孔明の姿を讃えるのです。忠臣を求める明治の欲望が、孔明を偉人に仕立てあげたと言えるでしょう。

詳しくは、「日本の先祖に!?なぜ諸葛亮(孔明)は「明治の偉人」になったのか」
(https://gendai.media/articles/-/63592)
をご覧ください。

パリピであり、孔明でもある

初めて『パリピ孔明』という漫画を読んだとき、真面目を絵に描いたような悲劇の忠臣である孔明と、近年はやりのパーティー・ピープルの略称「パリピ」、この意外すぎる組み合わせに目を疑いました。

『パリピ孔明』は、ここ数年、漫画界・アニメ界を席巻している「異世界転生」という設定に、三国志を大胆に掛け合わせたもの。インパクトのあるタイトルもさることながら、東京・渋谷に孔明が“異世界転生”するという衝撃の設定が、今まで慣れ親しんできた三国志の物語や、孔明の人柄や人生と違和感なく重なっていく、素晴らしい作品です。

ちなみに、漫画『パリピ孔明』連載開始時に、三国志好きとしての驚きと情熱をそのままぶつけたのが、こちらの記事「三国志ファン唖然、のちに感動…『パリピ孔明』とは何者か?」(https://gendai.media/articles/-/71160)です。

異世界転生に、パリピ、バディもの、芸能界のアレコレなど、今の風俗・流行と、骨太の三国志愛が絡み合う『パリピ孔明』。

ドラマのキャストには、孔明を演じる向井理さん、歌姫・EIKOを演じる上白石萌歌さんに加え、音楽シーンの実写化に期待が膨らむ俳優の皆さん、さらには、劉備を演じるディーン・フジオカさんや、歌姫・EIKOが働くクラブのオーナー役の森山未來さんなど、三国志好きを公言する俳優さんも! 中でも、森山未來さんは「三国志ネタを原作より少し濃いめに織り交ぜている」と公式サイトでコメントしています。

テレビドラマ『パリピ孔明』は、どんな世界を魅せてくれるのでしょうか。放送は、今日9月27日(水)夜10時からです!

10月期ドラマ「パリピ孔明」キャスト・あらすじ【まとめ】

 「ヤングマガジン」(講談社)で連載中の人気同名漫画(原作・四葉夕卜、作画・小川亮)を、向井理主演で実写ドラマ化した音楽青春コメディー「パリピ孔明」(フジテレビ系・水曜22時~22時54分)が9月27日から放送される。本作のキャスト・あらすじをまとめて紹介する。

あらすじ

 三国時代、病に倒れた天才軍師・諸葛孔明は「次の人生は、平和な世界に生まれ変わりたいものだ」と願いながら病没した。次に目を開けると、そこは2023年のハロウィーンの渋谷だった。見知らぬ酔っ払いに連れて行かれたライブハウスで月見英子の歌声に魅了された孔明は、自分が転生したことを知り、自分を保護し、心を満たしてくれた英子の恩義に報いるべく、軍師(マネージャー)になることを申し出る。そして、英子をスーパースターにするべく、その知略で数々の奇跡を起こしていく。

 

キャスト

(C)フジテレビ

諸葛孔明(しょかつこうめい)(演:向井理)

 言わずと知れた、三国時代の天才軍師・諸葛孔明。病死したはずが、なぜか生前の服装のまま若き日の姿となってハロウィン真っ只中の現代の渋谷に転生してしまう。英子の歌声に魅了され、軍師(マネージャー)になることを申し出る。

 

(C)フジテレビ

月見英子(つきみ・えいこ)(演:上白石萌歌

 ライブハウス・BBラウンジでバイトをしながら歌手を目指す少女。歌うことが大好きで、普段はシンガー“EIKO”としてカバー曲をパフォーマンスしているが、ひそかにギターの弾き語りで自作曲を作っている。競争心が弱い故に、なかなか才能を羽ばたかせずにいたが、孔明との出会いにより、秘められた才能が少しずつ開花していくことになる。

(C)フジテレビ

ミア西表(みあ・いりおもて)(演:菅原小春

 ハイレベルなダンスパフォーマンスと歌で注目される、SNSフォロワー数10万人越えの人気シンガー。美意識が高く、常に体を鍛えている。気丈な性格で、周りの人間を信用したり、弱みを見せたりすることが苦手。


(C)フジテレビ

KABE太人(かべ・たいじん)(演:宮世琉弥

 MCバトル選手権3連覇、“無敵のフリースタイラー”の異名を持つ若き天才ラッパー。実はプレッシャーに弱く、MCバトルで急性胃潰瘍になって以来、表舞台から退いてしまう。

(C)フジテレビ

久遠七海(くおん・ななみ)(演:八木莉可子

 透明感のある歌声を持ち、英子もその歌唱力に一目置くシンガー。路上ライブで出会い、英子と意気投合するが、実は、仮面アイドルユニット「AZALEA(あざりえ)」のベースボーカルという秘密を抱えている。


(C)フジテレビ

RYO(りょう)(演:森崎ウィン

 3人組のインディーズバンド・JET JACKET(じぇっとじゃけっと)のギターボーカル。責任感が強く、負けず嫌いで特に音楽に対して熱い男。持ち前のハイトーンボイスを生かした楽曲「MID DAY」が、インディーズながら動画サイト で500万回再生を記録し、一躍人気バンドの仲間入りを果たす。

(C)フジテレビ

前園ケイジ(まえぞの・けいじ)(演:関口メンディー

 抜群の歌唱力とクールな踊りで多くのファンを魅了し、作詞・作曲・振付までこなす、歌って踊れるスーパー・アーティスト。オーナー・小林との因縁をきっかけに、英子の最大のライバルとして立ちはだかる。

(C)フジテレビ

マリア・ディーゼル(まりあ・でぃーぜる)(演:アヴちゃん(女王蜂))

 英子にとって憧れの人物で、世界的に活躍するシンガー。オーナー・小林とは古い付き合いで、今でも交流を続けている仲。普段は海外で活動しているが、偶然来日したステージで、人生に悩んでいた高校時代の英子をその歌声で魅了し、生きる活力を与えた。


(C)フジテレビ

赤兎馬カンフー(せきとば・かんふー)(演:ELLY

 ヒップホップ界のカリスマで、KABE太人のライバル。かつては、MCバトル選手権の王者だったが、KABE太人とのラップバトルで唯一黒星をつけられてしまう。

(C)フジテレビ

劉備(りゅうび)(演:ディーン・フジオカ

 三国時代、孔明が仕えた「蜀(蜀漢)」の初代皇帝。孔明にとってかけがえのない主君であり、現代の渋谷へと転生した孔明が、三国時代のことを思い出す時、幻影として姿を現す。

(C)フジテレビ

オーナー・小林(こばやし)(演:森山未來

 英子が働くライブハウス・BBラウンジのオーナー。オールバックに派手なスーツ、強面というルックスだが、実は面倒見が良く、常連客やスタッフから慕われている。極度の三国志オタク。