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「スモウペイ」オンラインカジノの決済代行業者を摘発 常習賭博ほう助容疑で逮捕 21億超の利益得ていたか 全国4万人以上が利用 警視庁

オンラインカジノで客が賭博をするのを手助けし、21億円を超える利益を得ていたとみられる、決済代行サービスの運営グループの幹部ら7人が摘発されました。

前田由顕容疑者(42)と時田慎也容疑者(42)ら7人は、オンラインカジノへの入送金ができる「スモウペイ」を運営し、2021年7月から1年間に男性客18人(20代~50代)が賭博するのを手助けした疑いがもたれています。

警視庁によりますと「スモウペイ」はおよそ4万2000人が利用し、前田容疑者らは2020年6月からおよそ2年間で21億5000万円ほどの利益を得ていたとみられるということです。

客が賭博するのを手助けしたとして、オンラインカジノの決済代行業者を警察が逮捕するのは全国で初めてです。

オンラインカジノ 決済代行業者を逮捕 客18人は書類送検

スマホなどからインターネットを通じて金を賭けるオンラインカジノをめぐり、警視庁は、海外の運営者に賭け金を送金するなどしていた決済代行業者の2人を客の賭博行為を手助けしたとして常習賭博ほう助の疑いで逮捕しました。
オンラインカジノで客の賭博を手助けしたとして決済代行業者が逮捕されるのは全国で初めてです。

目次

(左)前田由顕容疑者 (右)時田慎也容疑者

逮捕されたのは沖縄県宮古島市の会社役員、前田由顕容疑者(42)と千葉県松戸市の会社役員、時田慎也容疑者(42)です。

警視庁によりますと、去年7月までの1年間に、海外のオンラインカジノで金を賭けた客18人に対し、海外の運営者に賭け金を送金するなどして繰り返し賭博を手助けしたとして常習賭博ほう助の疑いがもたれています。

2人は2020年ごろから「スモウペイ」という決済代行サービスを国内で運営し、提携していた海外の3つのオンラインカジノの運営者に賭け金の送金などを行っていたということです。

業者の顧客データにはおよそ4万2000人が登録されていて、サービスが停止した去年7月までに数百億円の入金を受け付け、海外の運営者から手数料として21億円余りを受け取っていたとみられるということです。

警視庁は容疑者の認否を明らかにしていません。

オンラインカジノで客の賭博を手助けしたとして決済代行業者が逮捕されるのは全国で初めてです。

警視庁は20代から50代の客18人についても、単純賭博の疑いで書類送検していて、「オンラインカジノに賭ける行為は犯罪で、絶対にやめてほしい」と呼びかけています。

オンラインカジノ

 

国内で利用者急増

オンラインカジノのイメージ

オンラインカジノはスマホなどからインターネットのサイト上のバカラやルーレットなどで金を賭けるものです。

オンラインカジノの場合、サイトの運営者が地中海のマルタやカリブ海のオランダ領キュラソー島など、ギャンブルを合法としている海外に拠点を置いているため、日本の法律の規制が及びません。

海外のサービスであっても日本で金を賭けることは禁じられていますが、インターネットのアクセスデータを分析している「シミラーウェブジャパン」によりますと、海外のオンラインカジノに国内からアクセスした数が増えていて、2019年4月には月にのべ1440万回余りでしたが、2023年8月には月にのべ3160万回余りと2.2倍になっています。

専門家「日本語対応

 

が増加 事業者側が

 

日本をターゲット

 

に」

 

カジノの実態に詳しい国際カジノ研究所の木曽崇所長は、背景には、コロナ禍で在宅時間が増え、自宅で手軽にアクセスできるギャンブルとして広がったことや、大規模な市場だった中国でアクセス規制が強化されたため、運営者が日本をターゲットにしていることがあると指摘しています。

研究所が2021年、男女1000人を対象に行った調査では、30代と40代を中心に全体の2.3%が「オンラインカジノを利用したことがある」と回答していて、試算では、国内での利用者がおよそ280万人に上るということです。

一方、ことし8月に行われた別の調査では、オンラインカジノを違法と認識している人の数は4割余りにとどまり、「グレーゾーン」や「適法」と回答した人が全体の半数を超えていたということです。

警視庁によりますと、今回の事件で書類送検された客18人の多くは調べに対して「海外のサイトを使っていれば捕まらないと思っていた」と供述しているということです。

木曽所長は「インターネット上では、『海外でライセンスを取得したオンラインカジノは安心して遊べる』などとする誤った書き込みがまん延していて、正しい発信がかき消されるのが現状だ。近年では日本語に対応したオンラインカジノが増えていて事業者側としても日本をターゲットにしている様子がみられる」と指摘しています。

わずか10分で100

 

万円賭けた日も…自

 

宅担保に「手軽さ怖

 

い」

 

オンラインカジノに熱中するあまり、生活に大きな影響が出てしまった人もいます。

30代の会社役員の男性は、リモートワークで在宅の時間が増えた2020年の春ごろから、オンラインカジノで賭けるようになったということです。

違法だとは認識していたものの、「重く捉えず、みんなやっているし大丈夫だろう」と考え、ゲーム感覚で始めたところ、負けが込むにつれて徐々にのめり込んでいったといいます。

初めのころは、1ゲーム当たり5000円ほどを賭けていたのが次第に金額が増えていき、わずか10分ほどで100万円を賭けた日もあったということです。

男性は「負けた分を取り返そうとして賭ける額がどんどん大きくなった。トイレにいるときや電車に乗っているときなど、ふつうの人が携帯電話を見るような時間にカジノサイトを開いていて、次第に金銭感覚がおかしくなった」と振り返りました。

そして、オンラインカジノを始めて1年半ほどたったころには、自宅を担保に入れてまで金を工面するようになり、数千万円の借金を抱えるまでになったということです。

その後、家族からギャンブル依存症の人の相談に乗る団体を紹介され、同じような状況の人たちと悩みを共有したり、解決策を話し合ったりするなかでギャンブルをやめられたということです。

男性は「オンラインカジノは、インターネットの環境があって、携帯電話を持っていれば、365日24時間できてしまう手軽さが怖い。先は長いが、自助グループとつながり、『1人じゃない』という安心感の中でやめ続けられている」と話していました。

 

捜査幹部「オンライ

 

ンカジノで賭ける行

 

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オンラインカジノの金の流れ

捜査関係者によりますと、オンラインカジノの客の多くは決済代行サービスを利用して国内の口座から賭け金を送金しているということです。

サービスを利用しない場合、海外の銀行口座を開設したり仮想通貨を使ったりするなどカジノサイトの運営者側から複雑な取り引きを求められるからです。

このため、決済代行を担う業者の存在がオンラインカジノでの違法な賭けを助長しているという指摘がありました。

警視庁は、今回、客の賭博行為を繰り返しほう助していた疑いがあるとして決済代行業者の立件に踏み切りました。

これまでは、決済代行業者を海外の運営元と同じ「賭博をさせる側」として立件したケースはありますが、捜査の手が及ばない運営元との共犯性の立証が捜査のハードルになっていたということです。

今回、ほう助の相手を国内の客としたことで、今後の捜査のリーディングケースになるとしています。

捜査幹部は「オンラインカジノで賭ける行為は違法だと強く警鐘を鳴らすとともに、決済代行業者を検挙することで違法な金の流れを断ち切ることにつなげたい」と話しています。

一方、警察庁によりますと、オンラインカジノに接続して賭博をしたなどとして、去年、全国の警察に検挙されたのは10件、59人でした。

検挙者の推移は2018年が13件で70人、2019年が18件で152人、2020年が16件で、121人、2021年が16件で127人となっています。

店舗に置かれたパソコンでオンラインカジノに接続し賭博を行う「店舗型」と呼ばれるものが多かったということですが、今回、警視庁は自宅などからアクセスする「無店舗型」の客18人を単純賭博の疑いで書類送検しました。

警察庁は「国内からオンラインカジノに接続して賭博を行うことは犯罪で、絶対にやめてほしい」と呼びかけています。