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東京ゲームショウ開幕 携帯型ブーム再来、ASUSなど

21日開幕した世界最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ(TGS)2023」では、台湾の華碩電脳(エイスース、ASUS)などが出展した携帯ゲーム機が話題を集めた。人気のオンラインゲームを外出先でも楽しめる。据え置き型を展開するソニーグループの戦略にも影響を及ぼしている。

開場前に1300人以上の列

会場の幕張メッセ(千葉市)では開場前に1300人以上の長蛇の列ができ、英語のほか中国語、韓国語が多く聞こえた。開場後、ゲームが試せるブースの中には一時30分待ちとなる列もあった。

ゲームショウの主役は通常、各社が競って披露するゲームソフトだ。今回は1700点以上が出展された。ただ、今年は最新のゲーム用パソコン(PC)などハード機器を展示するコーナーが初めて登場した。操作の反応が早いなど、ゲーム体験の満足感を左右するような高い性能をうたうゲーム機が並ぶ。米デル・テクノロジーズや米インテルもPCゲーム端末を出展し、中国スタートアップによる携帯ゲーム機も目立った。

国内大手ゲーム会社ではバンダイナムコエンターテインメントやスクウェア・エニックス、セガなどが出展し、話題のゲームにちなんだ展示や試遊を行った。海外からは中国ゲームの網易(ネットイース)のゲーム部門も初出展した。

会場で特に注目を集めたのが、ASUSの携帯ゲーム機「ROG Ally(アールオージー エイライ)」だ。任天堂の「ニンテンドースイッチ」より一回り大きく、7インチ液晶の左右にあるコントローラーを操作して遊ぶ。上位機種の価格は約11万円と値は張るが「6月の発売後、想定の3倍を既に出荷している」(ASUS)という。

同ゲーム機は米マイクロソフトのPC向け基本ソフト(OS)「ウィンドウズ11」や高性能半導体を搭載し、デスクトップ型PC並みの性能を誇る。

ASUSは携帯型ゲーム機「ROG Ally」を出展した(21日、千葉市)

中国レノボ・グループは今回のゲームショウに出展しなかった初の携帯ゲーム機「レノボ・レギオン・ゴー」を近く発売する。ASUSより大きい8.8インチの液晶を搭載。ゲーム画面を美しく表示する性能が高い。

スマホゲームで物足りないユーザー狙う

ASUS製もレノボ製も外出先で遊べる手軽さとともに、ハードとしての高い性能も売りとし、スマートフォンのゲームでは物足りないと感じるユーザーらも取り込む狙いだ。ASUSの日本法人、ASUSJAPANのデイビッド・チュー統括部長はROG Allyについて「(ゲームの)プラットフォームを超えて遊べる。今後も色々なゲームで検証したい」と話す。

ASUSのゲーム機で遊んだ都内から来た18歳の男性は「画面描写がきれいで驚いた。自宅では『プレイステーション(PS)5』で遊んでいるが、携帯型ゲームに興味がわいた」と話した。

ソニーGも21日、自宅にあるPS5のゲームを外出先からスマホ「Xperia(エクスペリア)」上で遊べる技術を披露した。11月にはPS5をWi-Fiでつなぎ、家の別の部屋などで遊べる新しいリモート端末を発売する。

ソニーGにとって、据え置き型のPS5が主力ゲーム機との位置づけは変わらない。ただ、携帯型のような楽しみ方を加えることでユーザーを逃さないよう手を打つ。

ゲーム機の歴史をたどれば、これまでも携帯型が人気だった時代がある。任天堂はファミコンに続いて1980年代末〜2000年代前半まで「ゲームボーイ」で市場を席巻した。現在も持ち運びできる「ニンテンドースイッチ」を販売している。

ソニーGも04年に発売した「プレイステーション・ポータブル(PSP)」など携帯ゲーム機を主力製品と位置づけていたことがあった。いずれもこれらの専用ゲーム機でしか遊べない「看板ソフト」があった。

1台でPCやスマホ向けゲームも

今回再来した携帯型のブームが従来と異なるのは、1つのソフトを様々なハードで楽しめる「ゲームの汎用化」という大きな流れが背景にあることだ。ASUSやレノボの携帯ゲーム機は、持ち運びできる特徴に加え、1台でPCやスマホ向けのゲームも楽しめる点でスイッチなど専用機とは違う。

2026年の世界ゲーム市場は22年比で約14%増の2490億ドル(約37兆円)に成長する見通し。20〜26年の年平均成長率ではモバイル(3.3%)やPC(1.3%)に比べ、専用機は0.6%と小幅にとどまりそうだ。

専用機が頭打ちの中、関心が集まるのがマイクロソフトの動向だ。同社は「Xbox(エックスボックス)」を展開するが、PCやスマホ向けゲームにも注力し、専用機にはこだわらない戦略はソニーGや任天堂のそれとは異なる。

ゲーム業界に詳しい東洋証券の安田秀樹アナリストは「マイクロソフトは成長するPCゲームを取り込もうとしている」と指摘する。遊ぶ場所もハードも選ばないゲームへのニーズは、ゲーム大手も無視できないほど高まりつつある。

進む高性能化 ゲーム機の「容量不足」足かせに

近年、ゲームソフトの高性能化が進んでいる。英競争・市場庁(CMA)が公表したリポートによると、巨額の予算や人員を投じてつくられる「AAAゲーム」と呼ばれる大型タイトルの開発予算は、既に一部で2億ドル(約300億円)を超えている。

課題となるのがゲーム機の容量不足だ。高画質のグラフィックや音声を大量に扱うゲームでは、ストレージ(データの記憶媒体)の容量が求められる。例えば、中国のゲーム会社miHoYoが運営する人気オンラインゲーム「原神」は、スマホで遊ぶ際に30ギガ(ギガは10億)バイト(GB)以上の空き容量が必要という。X(旧ツイッター)などでは、「容量が足りず遊べない」「ゲームでスマホ(の容量)がパンクしてる」といった声もあがる。

PCやゲーム専用機向けの大型タイトルでは、100GB前後の空き容量が求められることも一般的だ。現在発売されているPS5の内蔵ストレージは825GB、Xboxでは512GBまたは1テラ(テラは1兆)バイトで、5本程度しかソフトをインストールできない場合もある。

東洋証券の安田氏は「ゲームが高度化するにつれ、容量不足で新しいタイトルの購入に踏み切れないユーザーが増える可能性がある。販売会社にとっては機会損失にもなりかねない」と指摘する。こうした容量不足の解決がゲームの販売を伸ばすカギとなる。

(古川慶一、橋本真実)

東京ゲームショウ21日開幕 高性能のハードも注目

今年は過去最多の出展社数を予定する(写真は2022年の東京ゲームショウの様子)

世界最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ(TGS)2023」が21日、千葉市の幕張メッセで開幕する。昨年に続きリアルとオンラインで開く。ソフトだけでなく、ゲームの体験を左右する高性能なハードも注目だ。リアル会場では幕張メッセのホール全館を使うのは4年ぶりで、出展社数は過去最多となる。

一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催し、会期は21〜24日の4日間。21〜22日は企業が商談などを行い、一般公開は23〜24日となる。

9月4日時点で770社が出展する予定で、うち海外勢が399社と約半数を占める。新型コロナウイルス感染防止のため入場者数を制限していた22年の出展数(605社)を大きく上回り、過去最多となる。ゲーム専用機やパソコン(PC)などのゲームソフト1700点以上が出展され、一部のソフトやハードは無料で試すことができる。

今年は最新のゲーミングPCなどハード関連を展示する「ゲーミングハードウェアコーナー」を初めて設ける。米インテルなどがゲーム用PC端末を出展するほか、台湾の華碩電脳(エイスース)は新型の携帯ゲーム機を展示する。

ゲーミングチェアなどの家具やゲーム部屋などを紹介する「ゲーミングライフスタイルコーナー」も新設し、ゲームをより快適な環境で楽しみたい人に向けて提案する。

今年はコスプレエリアを復活させるほか、小学生以下も入場できるなどゲームファンが集まり楽しめるイベントとしての側面を重視する。ゲーム配信の流行をうけ、インフルエンサーのための専用エリア「クリエイターラウンジ」も新設。配信者同士の交流スペースのほか、一部の新作ゲームタイトルを試したり配信したりできるブースや編集コーナーも整備する。