
阪神優勝・ビール無料
優勝が決まると、一斉に駆け出すナイン。岡田彰布監督の体が2度、3度と宙を舞い、甲子園球場は熱狂に包まれる。ちょうどそのとき、大阪・ミナミの繁華街、道頓堀では、埋め尽くされたファンから「バンザイ」の声と拍手が湧き上がっていた。
9月14日、阪神タイガースは、18年ぶり6度目、悲願のセ・リーグ優勝を達成した。長らく優勝から遠ざかっていた阪神を岡田彰布監督が見事復活させた。
「優勝ダイブ」で有名な道頓堀の戎橋では、試合がはじまる前から大阪府警が大量の警官とともにパトカー、警察車両を投入し、「DJポリス」も3か所に配置された。

あまりに人が殺到し、戎橋の川沿いの歩道は人があふれ行き来できなくなるほどで、戎橋を封鎖して人を流れを抑える措置がとられた。
それでもファンの興奮は収まらず、橋の上から「道を開けるように」と身振り手振りでうながす警官。ところが、それを阪神優勝の拍手と勘違いした観衆から拍手があがる始末。ますます熱気に包まれ、ついに道頓堀川に飛び込む若者も出た。即座に「阪神優勝・ビール無料」の看板が出て、道頓堀は深夜まで盛り上がった。
昨年のシーズンオフに2度目の監督に返り咲いた岡田氏は、阪神タイガースの再建を託された。開幕から好調をキープして首位をひた走り、8月のお盆にはマジック29が点灯。一時、勢いが止まることもあったが、9月に入って昨年の盟主・ヤクルトや名門・巨人を相手に3連勝を続け、11連勝で優勝を決めた。
矢野前監督との大きな違い
「優勝の勝因は二つある。ひとつは、岡田監督が何もあってもジタバタせず、動じなかったこと。もうひとつは岡田監督が思い切って野球をやれたこと。昔は阪神と言えばお家騒動で知られていましたが、今はフロントの人間が小さくなって、ふんぞり返ることもなくなった」
こう話すのは、元阪神のエース、野球評論家の江本孟紀氏だ。昨年は矢野燿大監督のもと、3位でクライマックスシリーズには進出するもヤクルトに勝てず終わっていた。開幕前に矢野氏は「優勝できなかったら監督を辞める」と宣言し、実際に退任した。

「監督はどっしりしていないとダメ。それがシーズンもはじまっていないのに、辞めるなんて言い出したことで、選手のプレッシャーになった。
矢野氏とは好対照に、岡田監督はいらんことは言わずにどっしり構えた。それは、シーズンのメンバーを固定したことでよくわかる」
江本氏はそう分析する。
平田コーチの人事はなぜ覆されたか
「僕らは現役時代に岡田監督とは一緒にプレーしています。当時から博打打ちのような才能というのか、うろたえないのが岡田監督だった。
湯浅は絶対的抑えでしたから、調子があがらないとなると普通はあわてるものです。しかし岡田監督は湯浅をすぐに二軍に落とし、岩崎の起用でで腹をくくった。さすが、昔と同じ博打打ちやと思いました」(江本氏)
阪神タイガースの親会社・阪神電鉄は、旧村上ファンドの買収騒ぎで窮地に陥り、ライバルである阪急電鉄の支援を得た。2006年に阪神が阪急傘下に入ってから、今回は初めての優勝となった。ある阪急電鉄幹部はこう明かす。
「実は平田勝男ヘッドコーチこそ監督にふさわしいと、昨年のシーズンオフにその人事が決まりかけたこともあった。だが、阪神も阪急も上場企業でチームの成績は会社の業績と株価にも直結する。
そこで、実績があって野球解説者としても好評の岡田監督こそがふさわしいという意見が急浮上して決まった。昔の阪神のフロントならば、決まるもんも決まらなかったでしょうね。阪神がうちの下に入って、球団内でもめるのではなく、業績と株価に貢献しろという方針がようやく浸透したのではないか。
それもあって、岡田監督に対しても、フロントがごちゃごちゃ昔のように介入したりしないから、監督も楽だったと思う。阪神優勝で株価も上がるだろうし、波及効果は大きい。岡田監督サマサマですよ」
18年ぶりの快挙には、やはり根拠があったのだ。
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