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日本で1番大切にしたい会社【青空と向日葵の会】是非読んで頂きたい一冊です。

【今年の〈24時間テレビ〉でドラマ化】「日本理化学工業株式会社」が「日本でいちばん大切にしたい会社」と呼ばれるようになった理由

 毎年夏がくると、今年の24時間テレビのパーソナリティは誰かな、ドラマはどんなテーマかなとつい気になってしまいませんか。今年のパーソナリティは、小中学生に大人気の「なにわ男子」に決まりました。そして、ドラマは道枝駿佑さん主演による「虹色のチョーク」が放送されることが発表されました。

 今回のドラマは、神奈川県川崎市にある「日本理化学工業株式会社」さんがモデルです。実はこの日本理化学工業さん、あさ出版ともう10年以上のつながりがあります。あさ出版が2008年に出版しているシリーズ70万部のベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』は、この日本理化学工業さんの物語がきっかけで生まれました。その後『日本でいちばん大切にしたい会社』は、テレビ、新聞、ラジオ、WEBニュースなど多くのメディアでご紹介いただき、また数多くの読者の方から感動のメールやお手紙をいただきました。

 今回は、「日本でいちばん大切にしたい会社」の誕生秘話と「日本理化学工業株式会社」さんについて書籍「日本でいちばん大切にしたい会社」よりご紹介いたします(肩書等は刊行当時のものです)。

「日本でいちばん大切にしたい会社」誕生秘話

 この本の誕生秘話を、本書の編集者である、あさ出版の会長である佐藤よりご紹介します。

 私が「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者である坂本先生と出会ったのは、経営者やビジネスマン、金融関係の方たちが500人ほど参加する、
ある講演会でのことでした。

 坂本先生は講演を始める前に、「10分だけ、最近強く心に感じたこと」として、神奈川県川崎市の日本理化学工業という会社の話をされました。
その会社が50年前に、社員みんなの願いで障がい者の女の子2名を採用したこと、以来ずっと障がい者の方々を雇用し続け、今では全社員に占めるその比率が70%にも達していることなどを話してくださいました。

 そのうえで、訪問した際にお茶を入れてくれた高齢の女性が、50年前に初めて採用した障がい者の女の子であることを聞き、不覚にも涙がこぼれた、等のお話でした。
 その際に坂本先生が結びのことばとして話されたのが、「私はこの会社こそ、日本でいちばん大切にしたい会社だと思っています」というものでした。

 この講演会で日本理化学工業のお話しを聞いたことがきっかけで、日本でいちばん大切にしたい会社 が出版に至りました。

障がい者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場をつくりたい――日本理化学工業株式会社

※「日本でいちばん大切にしたい会社」の書籍より一部抜粋

 五〇年前に知的障がいをもつ二人の少女を、「私たちみんなでカバーしますから」という社員たちのたっての願いで採用した日本理化学工業。今、この会社の障がい者雇用率は、社員の七割に及んでいます。
 会社は、売上げを上げるために、利益を上げるために存在しているのではありません。本当に人々に必要とされ、社員たちも誇りをもって働くことができる、その結果、みんなが幸福を感じることができる、そんな会社になるために存在しているのです。
 従業員約五〇名のうち、およそ七割が知的障がいをもった方々で占められている神奈川県川崎市のその会社は、多摩川が近くに流れる、静かな環境のなかにあります。
 この会社こそ、日本でいちばん大切にしたい会社の一つです。昭和十二年(一九三七)に設立された「日本理化学工業」は、主にダストレスチョーク(粉の飛ばないチョーク)を製造しており、五〇年ほど前から障がい者の雇用を行っています。
 そもそものはじまりは、近くにある養護学校の先生の訪問でした。昭和三十四年(一九五九)のある日、一人の女性が、当時東京都大田区にあった日本理化学工業を訪ねてきたそうです。
「私は養護学校の教諭をやっている者です。むずかしいことはわかっておりますが、今度卒業予定の子どもを、ぜひあなたの会社で採用していただけないでしょうか。大きな会社で障がい者雇用の枠を設けているところもあると聞いていますが、ぜひこちらにお願いしたいのです」
 障がいをもつ二人の少女を、採用してほしいとの依頼でした。
 社長である大山泰弘さん(当時は専務)は悩みに悩んだといいます。
 その子たちを雇うのであれば、その一生を幸せにしてあげないといけない。しかし果たして今のこの会社に、それだけのことができるかどうか……。そう考えると自信がなかったのです。
 結局、「お気持ちはわかりますが、うちでは無理です。申し訳ございませんが……」
 しかしその先生はあきらめず、またやって来ます。また断ります。またやって来ます。それでも断ります。
 三回目の訪問のとき、大山さんを悩ませ、苦しませていることに、その先生も耐えられなくなったのでしょう、ついにあきらめたそうです。しかしそのとき、「せめてお願いを一つだけ」ということで、こんな申し出をしたそうです。
「大山さん、もう採用してくれとはお願いしません。でも、就職が無理なら、せめてあの子たちに働く体験だけでもさせてくれませんか? そうでないとこの子たちは、働く喜び、働く幸せを知らないまま施設で死ぬまで暮らすことになってしまいます。私たち健常者よりは、平均的にはるかに寿命が短いんです」
 頭を地面にこすりつけるようにお願いしている先生の姿に、大山さんは心を打たれました。
「一週間だけ」ということで、障がいをもつ二人の少女に就業体験をさせてあげることになったのです。

 就業体験の話が決まると、喜んだのは子どもたちだけではありません。先生方はもちろん、ご父兄たちまでたいそう喜んだそうです。
 会社は午前八時から午後五時まで。しかし、その子たちは雨の降る日も風の強い日も、毎日朝の七時に玄関に来ていたそうです。
 お父さん、お母さん、さらには心配して先生までいっしょに送ってきたといいます。親御さんたちは夕方の三時くらいになると「倒れていないか」「何か迷惑をかけていないか」と、遠くから見守っていたそうです。

 そうして一週間が過ぎ、就業体験が終わろうとしている前日のことです。

「お話があります」と、十数人の社員全員が大山さんを取り囲みました。
「あの子たち、明日で就業体験が終わってしまいます。どうか、大山さん、来年の四月一日から、あの子たちを正規の社員として採用してあげてください。あの二人の少女を、これっきりにするのではなくて、正社員として採用してください。もし、あの子たちにできないことがあるなら、私たちがみんなでカバーします。だから、どうか採用してあげてください」
 これが私たちみんなのお願い、つまり、総意だと言います。
 社員みんなの心を動かすほど、その子たちは朝から終業時間まで、何しろ一生懸命働いていたのです。

 仕事は簡単なラベル貼りでしたが、十時の休み時間、お昼休み、三時の休み時間にも、仕事に没頭して、手を休めようとしません。毎日背中を叩いて、
「もう、お昼休みだよ」「もう今日は終わりだよ」と言われるまで一心不乱だったそうです。
 ほんとうに幸せそうな顔をして、一生懸命仕事をしていたそうです。

 社員みんなの心に応えて、大山さんは少女たちを正社員として採用することにしました。

 

タイトル:日本でいちばん大切にしたい会社
著者:坂本 光司
ページ数:208ページ 
価格:1,540円(10%税込) 
発行日:2008年3月21日  
ISBN:978-4-86063-248-9
書籍紹介ページ:http://www.asa21.com/book/b216480.html

日本でいちばん大切にしたい会社シリーズ:http://www.asa21.com/search/s14868.html
日本でいちばん大切にしたい会社 掲載企業:
https://note.com/asapublishing/n/ndd7d1e44acf8

amazon:https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860632486/asapublcoltd-22/
楽天:https://books.rakuten.co.jp/rb/5531027/

著者プロフィール

坂本光司(さかもと・こうじ)

経営学者。現在「人を大切にする経営学会」会長。
1947年、静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授などを経て法政大学大学院政策創造研究科教授、同研究科長、法政大学大学院中小企業研究所所長などを歴任。専門は中小企業経営論、地域経済論、障がい者雇用論。徹底した現場派で、これまで8000社を超える企業の実地調査・アドバイス・研究を続けてきた。
主要著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズ〈1~8〉(あさ出版)、『「新たな資本主義」のマネジメント入門』(ビジネス社)、『経営者のノート』(あさ出版)、『もう価格で闘わない』(あさ出版)など、100冊以上がある。