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製紙用チップ、国産が1割高 バイオマス発電と競合

木材チップは製紙用やバイオマス発電の燃料用に使われている

国産の製紙用木材チップが値上がりした。包装用紙や家庭紙の原料になる針葉樹チップは足元で取引価格が前年同月比で1割高となった。国際市場で中国の製紙会社が北米産のチップ原料の確保を進めたことで、国内製紙会社が国産の手当てに動いた。国内ではバイオマス発電会社も高水準でチップを調達しており、需給が引き締まっている。

国産チップは製材用に植林されたスギなどが原料になる針葉樹チップが多い。農林水産省の統計によると、メーカーからの出荷価格は8月で1BDT(乾燥させた状態でのトン数)あたり1万7000円。1年前から11%高くなった。

印刷用紙などに使われる広葉樹チップも、この1年間で1200円(6%)上昇して2万1100円になった。

国内の製紙会社が利用するチップの7割を占める輸入品の値上がりが影響した。北米産針葉樹チップの取引価格は昨年春に比べ1〜2割高い。中国ではチップから製品まで一貫生産する製紙会社が増え、北米からの原料調達を進めている。米国の住宅着工が停滞して副産物であるチップの供給が絞られた側面もある。

輸入品の安定調達に懸念が強まり、日本勢は国産の確保を急いだ。

国内で木材チップはバイオマス発電の燃料としても使われる。バイオマス発電の売電価格は固定価格買い取り制度(FIT)に基づき一定のため、燃料向けのチップは価格が動きづらい。需要も製紙用を上回り、全体の3分の2程度を占めている。

そのためチップの供給業者は、安定して取引ができる燃料用の販売を、ある程度維持する傾向がある。「最近では製紙会社が、燃料用と同等かそれ以上の価格を出して買い取るようになってきた」(流通業者)という。

木材チップは燃料用の需要の増加が著しい

それでも製紙会社側は国産チップを十分に確保できているわけではない。特に包装用紙向けなどの需要が堅調だった針葉樹チップでは国内での調達が間に合わず輸入品の増加傾向が続いている。

製紙原料の7割近くを占める古紙の取引価格は国内外の需要低迷で弱含み、重油などの燃料費も高騰が一服する中、国産チップ価格は値上がりした。バイオマスの発電事業者はなお増加傾向で、さらに需要が拡大する可能性がある。

官民挙げて林業地などで残っている未利用材の利用促進を図っているが、見通しは不透明だ。製紙会社にとってコスト面での負担は重くなっている。

南米産パルプ2割下落、中国需要が低迷 対日3月積み

製紙用パルプのうち、印刷用紙などの原料に使われる広葉樹パルプの国際価格が下落している。代表的な産地の南米産の対日価格は2022年末から2割下がった。主要な買い手である中国企業の買い付けが停滞。南米では大規模なパルプ工場の本格的な始動で供給増加が意識され需給が緩んだ。急落後も、なお先安観を指摘する声が出ている。新型コロナウイルス禍やウクライナ危機を背景にした資源高の修正が紙の原料で広がってきた。...