· 

“タクシーを運転するグラドル”が「31歳」で上京を決めた理由

31歳で関西から上京し、グラビアアイドルデビュー。現在は女優、グラビアアイドル、さらにはタクシードライバーの“三刀流生活”を送っているのが、中島由依子さんだ。  6月にはドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)への出演が注目され、とんねるず・石橋貴明氏のYouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』では、芸能界の大先輩である“貴さん”から、芸能界で生き抜くための真摯なアドバイスをもらったことも。  都内をひた走り、成功を夢見る女優、グラビアアイドルが描く自身の未来とは。中島さんが働く“芸能活動との両立OK“という異色のルールを持つタクシー会社・コンドルタクシーの社屋で話を聞いた。

中島由依子さん

撮影の仕事は「新鮮で楽しかった」

 

 20代は短大卒業後にアパレルの販売員として就職。しかし、一身上の都合で退職したのち、地元にある耳鼻科の受付と派遣のアルバイトを掛け持ちしていた。  その後、パチンコ店内のカフェで働く。一方、28歳でモデル事務所へ入り、芸能活動をスタートさせた。 「当時は、パチンコ店内のコーヒーワゴンの仕事とモデルを掛け持ちしていました。主にブライダルモデルをやっていて、結婚式のカタログ用に使うスチール写真の案件がポツポツあって。収入はパチンコ店がメインでしたけど、撮影の仕事は普段着れない衣装も着れるし、何もかもが新鮮で楽しかったです」(中島由依子さん、以下同)

『冬のソナタ』を観て一大決心

 ただ、夢見ていたのは女優だった。当初「縁があって入ったのがモデル事務所」だったので、「芸能活動をはじめてすぐは、女優としての活動はできなかった」と振り返る。 「幼い頃から安達祐実さんに憧れていて、女優になりたい思いはずっとあったんです。でも、その気持ちを抑えながら生活していて、28歳でふと『このままではダメ。何か、変えたい』と思ったんです。  パチンコ店で働いていた当時、突き動かされたのが韓流ドラマ『冬のソナタ』でした。作品のパチンコ台から興味を持ち、DVDを借りて見たらヒロイン役のチェ・ジウさんがあまりにもかわいくて。人生は一度だけですし、私も『女優として、色々な人の人生を経験してみたい』と思い、芸能界へ入りました

「31歳」で上京を決めた理由

 

中島由依子さん 現在は36歳で大阪から東京へ上京を決めたのは5年ほど前。SNSのある現代では、地方から芸能人としてのチャンスをつかめる可能性もある。しかし、「女優としてのチャンスがあるのは、東京」と考え、慣れ親しんだ土地から旅立った。 「上京まで2週間ほど悩みましたけど、自分の中では答えが出ていたと思います。大阪でも芝居の基礎練習をやっていたんですけど、中途半端に芸能活動を続けるなら、いっそ東京へ行くべきだと考えて。31歳で上京って、世間的にいえば遅いじゃないですか。でも、ターニングポイントになるかはやってみないと分からないし、とにかく自分を変えてみたい一心で、東京に行きました」

人生の転機となっだグラビアへの挑戦

 

中島由依子さん 上京後はコールセンターとの掛け持ちで、東京の芸能事務所に所属。レッスンやオーディションを受けながら、事務所の方針でライブ配信にも力を入れていたという。  オーディションになかなか受からずとも「地道にコツコツ自分にできることを伸ばす」ためにと励む日々。33歳のとき、転機となるグラビアアイドルの登竜門となるコンテスト「ミスFLASH2022」の話が舞い込んできた。 「事務所から案内が来て、直感的に『受けなきゃ』と思ったんです。演技指導の先生から『俳優は引き出しが多い方がいい』と教わり、モデルさんとかアーティストさんとか、色々と経験する選択肢が浮かんだ中で、自分の雰囲気に合っていそうと思ったのがグラビアアイドルでした。  可能性を試すために『ミスFLASH2022』に応募したのは、年齢制限がなかったから。2021年5月〜10月の期間はコールセンターの仕事そっちのけで頑張って。結果はファイナリストに留まってしまい、終わってみたら喪失感を抱くほどショックではあったんですけど、人生で一番のターニングポイントでした

「芸能活動との両立OK」な社風に魅力を感じた

 

中島由依子さん 惜しくもグランプリを逃した「ミスFLASH2022」の結果発表後には「マイナスな空気を断ち切るため、心機一転の場所へ」と決意。コールセンターを辞めた当時、知人経由で出会ったのが、コンドルタクシーの代表取締役社長・岩田将克さんだった。 芸能活動との両立OKで、エンタメを応援してくださる社風に魅力を感じたんです。タクシードライバーは未経験なので不安もありましたけど、入社して2ヶ月で、会社の補助を受けて普通二種免許を取って。2022年4月に、タクシードライバーとしてデビューしました」  テレビ出演などを経て知名度も上がりつつある今、信号待ちで隣合ったドライバーから「『ザ・ノンフィクション』見ましたよ!」と声をかけられた経験も。ガソリンスタンドでの洗車中に「頑張って」と励まされることもあり、「うれしい」と微笑む。

タクシーは「知らない世界を知れる」空間

 

中島由依子さん「舞台出演もありますし、今一番やりたいのはやはり女優です。でも、グラビアアイドルとタクシードライバーの掛け合わせは珍しいし、同じく頑張りたいです。どのお仕事も、つながっているんですよ。例えば、タクシーで様々なお客様とお話しできるのは、自分の知らない世界を知れる貴重な機会でもあって。高齢のお客様から戦争の体験談を伺ったこともありますけど、そうしたお話やグラビアで学んだ表現力は女優のお仕事にも活かせると思っているし、いい相乗効果が生まれています」  ただ一つ、気になることがある。知名度が上がるにつれて、密室のタクシーで危険な目に遭ったことはないのか。 「今のところありません。朝から夕方までの勤務スタイルなので、比較的おだやかなお客様が多いので。リスクの少ない勤務時間を選べたし、環境に恵まれていると思っています」

年齢がチャームポイントになると思う

 

 女優、グラビアアイドル、そしてタクシードライバーとして奮闘する日々では「道が開けてきた」と実感している。 「30歳で上京した当時は演技レッスンに通って、事務所の方針でライブ配信も頑張って。でも、この先に『繋がるのか』と不安もありました。今はお仕事も少しずついただけるようになったし、昔からのファンの方も『すごく楽しみ』と言ってくれるので、前向きでワクワクしています」  現在は36歳で「仕事が第一優先ですけど、結婚願望もある」と主張。グラビアアイドルとしては比較的高齢だが、年齢についてはどのような思いがあるのか。 「この年齢になると、かえって年齢がチャームポイントになると思うし、自分の武器として捉えています。撮影会で『最年長』とうたえるのもこの年齢だからこそですし、個性だと思っていただけるならうれしいです。上京後に女優としての成功だけを夢見ていた頃は、自分の殻を破れず迷っていた時期もありましたけど、人前で水着になるグラビアのお仕事をはじめてから、オープンになれたんです。だから、肩書きを一つに絞らず、活動を続けていきたいです

芸能界の大先輩・石橋貴明からの金言

 

中島由依子さん グラビアアイドルとしては「雑誌の誌面を飾る」のが目標に。一方、強く憧れていた女優では「一つの作品を共演者やスタッフと一緒に作り上げる』喜びを感じながら、いずれは「映像作品に出演したい」との夢も抱く。  まだまだ道半ば。とんねるず・石橋貴明のYouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』でもらった金言を胸に、今日も成功を夢見ている。 「貴さんから、一度だけドラマへ出演するのが夢を叶えたということではなく『少なくても10年以上は魅力ある女優として売れ続けること』が必要と聞き、本当そうだなと思ったんです。より細かく区切ると、コンスタントに作品に出られるようになり、ある程度認知されてきてからまず5年間。それが自分の中では第1ステージだと思います。そして次の5年間、10年目に向かう第2ステージで弾みをつけられるよう、もっともっと頑張ります」 <取材・文/カネコシュウヘイ 撮影/市村円香>