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都会のスズメのオスの方が田舎のスズメのオスよりも子育てに熱心であることが判明

 アメリカで行われた調査によると、都会に住むスズメのオスは、田舎に住むスズメよりも良き父親となり、積極的に子育てに参加していることがわかったという。

 都会というと、野生動物にとっては過酷な環境というイメージがある。ところが、バージニア工科大学の研究チームによると、ウタスズメにとっては都会の方が意外と子育てしやすい環境にあるという。

 それは都会のオスが育児に熱心というばかりではなく、他にもいくつかの要因がある。

 この研究は『Frontiers in Ecology and Evolution』(2023年8月22日付)に掲載された。

都会のスズメのオスのほうが田舎より子育て熱心

 今回の研究は、バージニア工科大学の研究チームが、米国バージニア州南西部の6か所で、繁殖期のウタスズメ(Melospizamelodia)の行動を4シーズンにわたり調べたものだ。

 ウタスズメはスズメ目ホオジロ科に分類され、主にアメリカに生息しており、その名の通り非常にメロディアスで豊かなさえずりをする。

 自然が豊かな地方に比べれば、都市では巣を作れる場所が少なく貴重だ。だから、都会の鳥たちは、それを守ろうと攻撃的になることが多い。

 だが、1日の時間も鳥のエネルギーも限られている。

 ならば巣を守ることに多くの時間と労力を割かねばならない都会のオスたちは、その分ヒナに餌を与える時間が減るはずだ。

 ところが、今回の研究ではそれとは正反対のことが明らかになっている。

 

 研究チームは、まずオスの攻撃性を測定するために、その縄張りにスズメのフィギュアを起き、録音した鳴き声を流しながら、彼らの反応を観察した。

 またオスが巣を訪れた回数をカウントするため、彼らと巣に発信機と受信機を取り付けて、自動的に計測できるようにした。

 その結果わかったのは、都会で暮らすウタスズメは、確かに田舎のウタスズメより、縄張りを守ろうと攻撃的であることだ。

 にもかかわらず、田舎のオスよりも足しげく巣に通い、ヒナに餌を与えていたのだ。

野生生物が少ない都会は意外と子育てに向いている

 ウタスズメは、オスとメスが協力して子育てを行う。だが何かの事情でオスが手伝えないときは、メスがいつも以上に頑張ってヒナの面倒を見る。

 だから、もしも都市の環境のせいでオスが子育てにあまり参加しなくなるのならば、それがメスや子供たちに影響する可能性があった。

 だが実際に観察されたように、都会のオスは田舎のオス以上に子育てに熱心だ。

 それはヒナたちが元気なことからもわかる。都会のヒナの大きさと体重は田舎のものと変わらず、生存率まで高い。

 確かにコウウチョウに托卵されるケース(つまり勝手に卵を産み付けられる)は都市部の方が多かったらしいが、生存率の高さがそれを埋め合わせていたという。

 都市部の環境は危険だらけのように思えるが、この研究では、都市では巣が襲われることが少ないことも明らかになっている。

 というのも、巣を襲おうとする動物にその動機がないか、そもそも数が少ないからだ。

 たとえば、アライグマならゴミ箱を漁れば食べ物にありつけるし、ヘビのような動物は都市部ではあまり見かけない。

田舎のオスはあえて巣に近づかないようにしている可能性

 こうして見てみると田舎のオスは何をやっているのか? と思えてくるが、彼らにも言い分があるようだ。

 田舎では都市とは違い、巣を襲う動物がたくさんいる。

 都市部のオスの行動をあわせて考えると、田舎のオスたちは子育てをサボっているわけではなく、危険な動物を巣に近づけるリスクを減らすために、あえて巣に近づく回数を減らしている可能性があるという。

 結果、都会のウタスズメのオスはよきパパとなり、田舎に比べて巣が襲われることもないために、都会のヒナたちは田舎よりも巣立ちやすくなる。

ただし他の鳥や動物に当てはまるかどうかはわからない

 ただし、研究チームのサミュエル・レーン氏によれば、今回わかったことが都会ぐらしの他の鳥や動物たちに当てはまるとは限らないという。

 とはいえ、都市は野生動物にとって暮らしにくい場所というイメージとは裏腹に、ある種の鳥にとって「エサや巣作りの場所を見つけるのに十分な自然があれば、都会ぐらしにはいい点もある」という証拠は増えているのだそうだ。

References:Urban sparrows are better dads than rural ones, researchers find / written by hiroching / edited by / parumo