
「あのね、これあげるから、もう泣かないで」
その子が差し出した手の上には2つの指輪。 おそらくお菓子のおまけだと思う。
男の子「水色のは泣かないお守り。こっちの赤いのはお願いできるお守り。」
私「いいの?だって、これ、ボクのお守りなんでしょ?」
男の子「いいよ、あげるよ。ボクね、これ使ったら泣かなくなったよ。 もう強い子だから、いらないの」
私「赤い指輪は?お願いが叶うお守りなんでしょ?。これは、いいよ」
男の子「これね、2つないとパワーがないんだって。おとうさんが言ってた」
そう言うと男の子は「だから、もう泣かないで」 と言いながら妻の頭を撫でた。
少し離れたところから「ゆうき~、帰るよ~」 という彼のお父さんらしき人が彼を呼ぶと、 男の子は妻の膝に2つの指輪を置いて 「じゃあね、バイバ~イ」と言って去っていった。
今時珍しい5分刈頭で、目がくりっとしたかわいい男の子だった。
私はその子の後姿をずっと目で追っていたが、ふと隣を見ると 妻は2つの指輪をしっかりと握り締めていた。
迷信とか宗教とかおまじないとか、 そういったものはまったく信じない2人だけど この指輪だけは、私たちの夢を叶えてくれる宝物に見えた。
その日から妻は、さすがに子供用の指輪なのでサイズが合わないため 紐をつけてキーホルダーにしていた。
それから2年半後の今年2月9日、我が家に待望の赤ちゃんが誕生した。
2770gの女の子。
名前は、あの男の子にあやかって「有紀(ゆうき)」にした。
生まれる前から、男の子でも女の子でも「ゆうき」にしようと決めていた。
ゆうきくん、あの時は本当にありがとう。
あの時、君に会えていなかったら、 君に慰めてもらえなかったら 今、この幸せを感じることはできなかったと思う。
私たち家族は、君に助けてもらいました。
君からもらった2つの指輪は、 娘のへその緒と一緒に、大事に保管してあります。
我が家の宝物です。
うちの娘も、君のように人に幸せを分けて上げられるような 子に育って欲しい。
本当に、本当にありがとう。

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