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暑さでカメムシ大量発生 千葉県に注意報 農家に対策呼びかけ 08月24日 16時23分

厳しい暑さが続き農作物の生育に影響が出る中、コメの養分を吸って品質の低下を招く害虫のカメムシが各地で大量に発生しています。
繁殖が活発になる気温の高い日が続いたことが原因とみられ、千葉県や埼玉県など全国の14の県は、「注意報」を出して農家に対策を呼びかけています。

このうち千葉県内では千葉県農林総合研究センターが先月中旬に31か所の田んぼで「斑点米カメムシ類」の生息数の調査を行ったところ、1か所あたりで見つかった数は平年のおよそ2倍に上り、少なくともこの10年で最も多くなりました。
「斑点米カメムシ類」は、いずれも体長1センチ余りの「クモヘリカメムシ」や「イネカメムシ」などのことで、成長途中の稲のもみから養分を吸い取ってコメを黒く変色させ、品質を低下させるため、法律に基づく「有害動物」に指定されています。
農林水産省によりますと、このカメムシは本州や九州、四国の各地で多く発生すると予想され、千葉のほか、埼玉、宮城、大分など全国14の県で「注意報」が出されています。
千葉県で「注意報」が出されるのは、2020年以来です。
気温の高い日が続き繁殖が活発になったことなどが原因とみられ、県は農家に対し、カメムシが集まりやすいイネ科の雑草の除草や駆除する薬剤の散布など、対策を強化するよう呼びかけています。

千葉県大多喜町でコメ農家を50年近く営む江澤正久さんは、大量発生したカメムシの被害に頭を悩ませています。
江澤さんの田んぼでは、今月から収穫が始まっていますが、収穫したコメの一部にはカメムシによって黒く変色した米粒が混ざり、全体の1割弱が値があまりつかない「くず米」になったということです。
カメムシの発生を抑えるには、ある程度、稲が成長した時期に駆除する薬剤を散布したり、田んぼのあぜにある雑草を除去したりすることが有効とされています。
江澤さんは例年通り先月中旬にこうした対策を取りましたが、ことしは気温の高さもあって稲の成長が早かったため効果が不十分で、夏になると田んぼのあちこちでカメムシが発生してしまったということです。
田んぼではきょうも複数のカメムシが見られ、収穫を待つ稲の穂や葉の裏に隠れる様子が確認できました。
害虫のカメムシは高温多湿の環境を好みますが、近年の気温の高さは、50年近く農業を続けてきた江澤さんにとっても経験がないということで、今後、さらに気温が上昇すれば、対策が追いつかなくなるのではないかと懸念しています。
江澤さんは、「育てたコメが被害を受けてしまいとてもつらいです。暑さが厳しくなるとともに、年々カメムシが増えているように感じます。気温が高まる中で稲の成長のはやさも変わりつつあり、対策をとる時期も考え直さなければ」と話していました。

カメムシが大量に発生し、収穫を迎えたコメへの被害が起きていることについて、千葉県の熊谷知事は、農家に早めの対応を促すため「注意報」を出したと説明しました。
その上で、「農作物の害虫は、気温が高くなると発生しやすくなる。県として毎月、発生状況や予防策について発表しているので、農家の方々には、気象状況の変化に対応しながら、千葉県の農産物をいい状態で生産してもらいたい」と述べました。

コメに被害を及ぼすカメムシが大量に発生している理由について、カメムシの生態に詳しい農研機構東北農業研究センターの田渕研上級研究員は、ことしの春から夏にかけて気温の高い日が続いたことなどが影響していると分析しています。
田渕上級研究員によりますと、春から夏にかけて繁殖を繰り返して数を増やす「斑点米カメムシ類」は、高温多湿の環境を好むため気温が高くなるほど繁殖と成長が盛んになります。
ことしは初夏から気温の高い日が続いて活動が活発だった上、近年は冬の気温も十分に下がらないことから多くの個体が冬を越したため、大量に発生したとみられるということです。
害虫のカメムシは、えさとなるイネ科の植物の生育が進むにつれて数が増えていくことから、対策としては、稲の穂が出始める1週間前までに田んぼの周辺で雑草が伸びないよう草刈りや除草剤の散布を行い、稲がある程度成長したあとは、殺虫剤を使うことも効果的だということです。
田渕上級研究員は「地球温暖化などによる気温の上昇で、近年は農業への被害が出やすい環境になってしまっている。自治体からの情報も参考に被害を予防してほしい」としています。