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不用品回収業者は危険? 「無料引き取り」のはずが「手数料」「運搬料」が請求されるトラブルは違法ではないか弁護士が解説

いらなくなった家具をどうするか……(gettyimages)

 引っ越しや高齢の親の実家の片づけ、遺品整理で処分に困るのが家具・家電などの大きな不用品。ネットで調べると「不用品回収無料」「出張、見積もり無料」など無料をうたう不用品回収業者がたくさん出てくる。しかし、ある自治体に聞くと、実際に利用すると無料回収ではなく、高額の「手数料」や「運搬料」を請求されたなど料金をめぐるトラブルや苦情が後を絶たないという。こうした商売の手法は違法ではないのか? 弁護士が解説する。(こちらの記事は「AERA.dot」2022年8月14日配信から再編集したものです。)

 

【実例】マンションの5階からの不用品回収で「運搬料」を請求された

 筆者が不用品回収無料の業者に「運搬料」を請求された実体験を紹介する。

 筆者が引っ越しの際に困ったのが、新居では必要なくなる食器棚をどうするか。マンションの5階のため、独力ではマンションの1階まで運べそうにはなく、粗大ごみとして出すのは難しい。そこで利用したのが、不用品の買い取り・回収をうたう業者である。

 ホームページには「出張、見積りは無料」「明朗会計」などと書かれていた。

 ところが、当日……。

「ここマンションですから、トラックまで運ぶ手数料をいただく形になっちゃうんですよ」(従業員)

「運ぶ手数料って、ホームページに書いてなかったですよね。電話でも説明なかったですよ?」(筆者)

「そうなんですけど、どうしてもいただく形になっちゃうんですよ」(従業員)

 自治体による粗大ごみの回収は予約制のため、引っ越し日には間に合わない。仕方なく、数千円を支払う羽目になったのである。買い取り額がつかないのは想定していたが、おカネをとられてしまうとは――。

 ある自治体に聞くと、不用品回収をめぐる、こうした想定外の料金を巡るトラブルや苦情は後を絶たないという。そもそも、こうしたホームページなどに明記していない料金を求めることに法的問題はないのか。

【弁護士が解説】ホームページに書かれていない「手数料」「運搬料」を請求することは違法ではない

 消費者問題に詳しい古藤由佳弁護士(弁護士法人・響)によると、自宅に訪問してもらう形で不用品を回収してもらう取引には、特定商取引法が適用されるという。

「法律上は『売買契約の申し込みを受けたとき』に、購入価格や物品の種類、代金の支払い時期や物品の引き渡し方法などを明示した 書面を交付するか,売買契約を締結し契約書を取り交わさなければならないとされています。ホームページやサービスを宣伝する時点では詳細な見積もりはなく契約の申し込みはないので、ホームページ上にすべての費用を明示することが法律上、求められているというわけではありません」(古藤弁護士)

 なるほど、違法ではないのか。

【弁護士が解説】不用品をトラックに運搬した後で「運搬料」を請求するのは違法ではない

 「トラックまでの運搬料」が発生するのなら、ホームページに明記してほしいものだ。こちらは、マンションの5階という情報は申し込み時に伝えている。

 前出の自治体の担当者に聞くと、トラックに運び込んだ後になって、高額の「運搬料」を請求してきた事例もあったそうだ。これも問題はないのか。

 

 古藤弁護士が続けて解説する。

「トラックに積み込んだあとに運搬料を請求することは、当事者の合意に反することであるのは間違いないです。ですが、その場で売買契約を締結することになった場合、売買契約書は『代金を支払い、かつ、物品の引き渡しを受けたとき』『直ちに』交付するということになっています。作業をしている時点で売買契約書が存在しなくても、法律上違反にはなりません。そこを、悪用されているとも言えます」

 法の“穴”をうまく利用しているということか。

『もう面倒だから払ってしまおう』という心理をつかれて被害が増え続ける 

 独居の高齢者や力の弱い人などは、重い家具などを処分しようと思っても、自分で運べない人は多いだろう。同様の“被害”は増え続けてしまうのか。

 古藤弁護士はこう続ける。

「荷物の積みこみなどに手間や時間がかかるため、一度作業が終わってしまえば『契約を白紙に戻し、すべてを家の中に戻してほしい』と思っても、事実上は難しいと思います。『もう面倒だから払ってしまおう』となりやすい心理をうまく突いているなと思います。また、業者に頼むということは、家族や友人など頼れる人が周りにいない場合も多いのではないかと思います。そういう点も被害が大きくなりやすい要因かと考えます」

「無料」の文言に要注意

 古藤弁護士は、作業を開始する前に、何の作業をするのかや、それにかかる費用を明確にしておく必要があると話す。費用に納得できなければ、その時点で断ればいい。手間がかかっても書面やメールなどで事前に見積りを取ることや、クーリングオフの手続きをとることも重要だという。

 また、「無料」の文言にも要注意だ。

「家電リサイクル法の適用対象になる家電などについて、『回収無料』をうたっている業者がいますが、本来はお金がかかって当然の業務について無料としている点で、適切な廃棄処理を行っていない可能性が高いです。もし依頼した業者が不法投棄した場合、業者の関与が立証できないと、もとの所有者が不法投棄の責任を問われる場合があります」(古藤弁護士)

 ネットの広告はとても印象良く仕上げているものが多い。田舎の親がトラブルに遭ったり悔しい思いをしたりする前に、アドバイスしておいた方が良いかもしれない。

(AERA dot.編集部・國府田英之)