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おばあちゃんが携帯の解約にやってきた【青空と向日葵の会】

【おばあちゃんが携帯の解約にやってきた】
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その昔、まだ携帯電話が普及し始めていた頃のお話。
あるおばあちゃんが解約の相談にやってきた。
おばあちゃんはゴモゴモと何かをしゃべっているが、よくわからない。
うちのショップでは新規申込の受付はできても、
解約は受付できない旨説明するが、まだごにょごにょ言っている。
ちょっとウザいなと思いながら、
そのごにょごにょを「あ?」とか「んで?」
みたいな対応で聞いていた。
でも、その後のおばあちゃんの言葉で心が揺さぶられた。
「うちの主人が亡くなってしまったので解約したいんだけど、
 ショップ行っても本人じゃないからってしてくれないのよ。。。」
正直、今までの対応が人間として恥ずかしい行為だったことを
素直にお詫びして、携帯電話会社へ電話した。
その頃まだ亡くなった場合の解約措置なんて手続きは
考えてもいなかったらしいがそれでは困る。
携帯電話会社へ電話しても、ラチがあかないのを見ておばあさんは、
「もういいです、ずっと基本料金払えば。。。」
と帰ろうとした。
相手との電話を保留にして、おばあちゃんを制止し、
反射的につい思わず出た言葉だった。
自分の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
その言葉がおばあちゃんの足止めをするなんて。

んなことを言ったのだ。

「おばあちゃん、それはだめだよ。  ちゃんと旦那さんの名前のものは解約しないと、  いつまでたっても旦那さん天国にいけないですよ

その言葉がどう響いたのかわからないが、 おばあちゃんは思いとどまって座っていてくれた。

携帯電話会社との問答の末、話のわかる上司にまで辿り着き一件落着。

それまでに要した時間は2時間ほどだが、 一通りの書類を契約住所に送ってもらえることにした。

「おばあちゃん、もし書き方がわからない場合は  ここに持ってきてくださいね」

笑顔で帰っていくおばあさん。

そして3日後、そのおばあさんが書類を持ってやってきた。 書類を作成し、返信用封筒に入れて・・・。

「あとはこれポストに入れておきますので、  これでやっと手続き完了ですね」

するとおばあさんがお礼にとお菓子だろうか、箱を差し出してくれた

「これで旦那が成仏できました、ありがとうございます」

ありがたく頂戴して見送って箱を開けてみると饅頭だった。

熱いお茶入れて、こりゃうまいとパクパク食べていると、 事情を知らない女の子がぼそっとつぶやいた。

「これ、葬式饅頭みたいじゃない?」

いやほんとにそんな感じかもしれない。

じいちゃん安らかに眠ってくれ。