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「物流2024年問題」に対応する王子HD、荷積みから荷下ろしまで1ー2時間短縮

王子物流の有明倉庫では、各地の工場から運ばれてきた紙製品を荷下ろしする。「時短」の実証実験を展開

王子ホールディングス(HD)は紙・板紙の国内物流改善で、工場の荷積みから倉庫の荷下ろしまでの作業時間について1回当たり従来比で平均1―2時間削減を目指す。荷積み、荷下ろしはそれぞれ1回1時間半以内を目標とする。拠点で状況が異なるため実績は非公表だが、それぞれ最大では2―3時間かかっていたとみられる。自社内で時間割や作業場所の変更、スペース拡大などを進める一方、顧客や輸送会社に協力を要請して実現していく。

王子HDの荷積み・荷下ろし時間の短縮は、トラックドライバーの拘束時間の削減が狙い。対象は傘下の23工場と倉庫5拠点。人手不足や残業時間上限規制など「物流2024年問題」に対応し、22年度から実証実験を行った結果、おおよその目標設定にめどを付けた。

荷積みの実証実験は、段ボール原紙を手がける王子マテリアの中津川工場(岐阜県中津川市)、恵那工場(同恵那市)で実施した。作業場所の見直しといった経営努力のほか、営業部門が顧客に対し注文を1時間でも早めるよう要請してきた。

通信販売、宅配などで底堅い需要がある段ボール原紙は他の製品に比べ、オーダーがぎりぎりになりがちで、段ボール箱に仕上げてからの納期もタイトな状況にあるという。

紙・板紙の荷下ろしの実験は傘下の王子物流の有明倉庫、有明山田倉庫(ともに東京都江東区)で現在も行っている。輸送会社との間で到着時間を協議し、合意した上で入庫スケジュールを組み、トラックが集中しないように取り組んでいる。

王子HD、王子物流は自社施設にとどまらず、顧客である印刷会社や加工会社など他の荷下ろし場でも待機時間を削減すべく対策を進める。王子ネピアの家庭紙物流についても対応を改善していく。

日刊工業新聞 2023年07月07日

300ルート見直し…日本製紙は「物流2024年問題」にどう対応するか

板紙の荷積み(日本製紙の拠点)

日本製紙は紙・板紙の2024年度以降の出荷で、現行の対応が難しくなる約300ルートで倉庫の配置や保管のあり方を見直す。トラック待機時間削減などに対応するため、顧客や取引先に発注の前倒しを要請し、今後の意向を確認中。発注が早まれば現行ルートのままとし、従来のペースであれば消費地に近い場所での倉庫の確保や中継倉庫の整備を進める。関連コストを抑えつつ物流問題への改善に取り組む

日本製紙は23年1月に「物流24年問題」に対応する社内プロジェクトチームを設置。12の紙・板紙工場で出荷状況を洗い出した結果、全ルートの十数%に当たる約300ルート(板紙約7割、紙約3割)に課題があるとして精査している。

約300ルートの顧客・取引先には発注の前倒しについて意向を聞いており、9月までに倉庫における保管量のあり方を詰め、23年度中に倉庫配置を見直して実施に移す。

板紙のルートは70%がトラックによる顧客への直納。段ボール関連の顧客からのオーダーはぎりぎりで納期も短くなりがちと言う。

24年問題で指摘される配車リードタイムの確保には計画的な出荷が必要で、発注の早期化交渉が欠かせない。顧客のやむを得ない事情も考慮し、高速道路利用や消費地倉庫での保管なども検討する。

倉庫配置の見直しでは、対象ルート内に約20ある自社系倉庫を軸に、自社の敷地を有効活用する。例えば板紙の中継倉庫に遊休スペースのある洋紙工場を活用したり、既存の出荷レーンを増設したりする考えだ。日本製紙の紙・板紙出荷における輸送手段は現状、トラック50%、船32%、鉄道18%。トラック依存からの脱却も課題だ。

日刊工業新聞 2023年07月28日

日本製紙と大王製紙、共同海上輸送を開始 物流を効率化

物流の2024年問題解決へ製紙業界で協業が進む

日本製紙大王製紙は8日、首都圏・関西エリア間で共同海上輸送を開始したと発表した。これまで日本製紙は東北の工場から関西圏へトラックで長距離輸送していたが、大王製紙が活用する輸送船に積み込むことで運転手の総走行時間を約8割削減する。トラック運転手の不足が深刻になる「2024年問題」や国内の紙製品の需要減を見据え、協業で物流の効率化を急ぐ。

日本製紙の勿来工場(福島県いわき市)から千葉中央港(千葉市)までトラックで情報用紙を輸送し、同港で大王製紙が首都圏・東北向けに活用している輸送船に積み替えて関西圏に海上輸送する。トラック輸送の場合、同工場から園田倉庫(兵庫県尼崎市)まで約700キロメートルを10時間程度かけて輸送していた。

従来の輸送と比べて二酸化炭素(CO2)排出量を年間46.7%、トラック運転手の総走行時間を78.8%削減できる見込み。

大王製紙は三島工場(愛媛県四国中央市)で生産する紙・板紙製品を大王海運(同)の船舶を活用して首都圏や東北地区へ供給している。復路では古紙など一部原材料を除き空荷状態となっており、一段の輸送効率化が課題となっていた。製紙業界で同業者間で往路と復路で別の荷物を積む「ラウンド輸送」に取り組むのは初めてという。