
私は向かっていったのですが、 オジさんの目の前で止まってしまいました。
なぜなら、オジさんのとんでもない威圧感に圧倒されたのです。
オジさんの目を見ると、 さっきまでの穏やかそうなオジさんとは思えない、 まるで鬼のような目つきに変貌しています。
私はその目を見て身体が震え、冷や汗も止まらなくなったのです。
喧嘩で感じた初めての恐怖でした。
オジさんは、 「それがおめえの実力だ。 圧倒的な実力をもつ者の前では、 おめえなんてちっぽけなひよこだ。 本当に強いやつは自分の弱さを知ってる。 おめえはまだ若い。 こんなことしなくても、おめえを認めてくれる人は大勢いる」
そう言うと、オジさんは私の頭を撫でました。
その時、私はなぜか泣き崩れました。
続けて、 「それでいい。人に自分の弱さを見せろ。 そうすれば、皆おめえを迎え入れてくれる。 強くなりたいなら、自分の弱さを知ることだ。
おめえは、これからもっと強い人間になれる。 なぜなら、おめえは人に涙を見せられる優しいいい人間だからだ」
そう言って、頭をポンポンとし、 にっこり笑って帰っていきました。
この日から私は喧嘩をしなくなり、 段々と穏やかになっていきました。
今までの分からない不安もなくなり、 自然と友達も増えていき、高校も卒業。
無事就職も出来て、よい人生を歩んでいます。
あの時のオジさんには頭が上がりません。本当に感謝しています。
私の体験からではありますが、 もし心に余裕のない方、何か不安を持っている方がいらっしゃるとすれば、 ささやかながら、アドバイスができるかもしれません。
そんな方は、人に自分の弱みを積極的に見せてみてください。
涙を人に見せてみてください。
そしたら、余裕がなく、不安を持つ自分のことでも、 許すことができるのではないかと思います。
自分で自分を許すことが出来れば、 まるで肩の荷が下りたように、気分がスッキリするかと思います。

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