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「お金ないし誰の子どもかわからない」路上で赤ちゃん出産…傍聴から見えた女の半生「風俗店勤務でホテル転々…給料の大半はホスト通いに」「過去12回の出産」「妊娠を相談する人がいなかった」

「妊娠を相談する人がいなかった」「過去に出産を12回繰り返した」と法廷で語る33歳の女。彼女の出身地から遠く離れた大阪市内の裏道で深夜に事件は起きた。

起訴状などによると、住居不定の風俗店従業員・谷口成美被告(33)は、今年1月30日の午前0時ごろ、大阪府大阪市淀川区の路上で自身が出産した女児の遺体が入ったカバンを阪急・十三駅近くのコインロッカーに遺棄した罪に問われている。彼女がなぜ赤ちゃんをコインロッカーにいれたのか。裁判の傍聴から見えてきた女の半生とは。

 

風俗店勤務…給料の大半をホストクラブに ホテルを転々とし借金も

6月23日に行われた裁判で、谷口被告が大阪に来る経緯などが明らかになった。谷口被告は鹿児島県出身で中学校を卒業、その後、風俗店で勤務していた。

しかし、仕事が少なかったことから去年の4月、大阪に移り住み風俗店で働くことを決め、家を借りず、ビジネスホテルを転々として暮らしていたという。1カ月の給料は少なくとも約35万円あったというが、その大半をホストクラブで使い、交際していたホストにも借金があった。

そんな中、去年の春頃に谷口被告は妊娠していることに気がつく。そして、一度も病院に行くことはなく大阪市内の人気の少ない裏道で今年の1月下旬に出産をした。

妊娠発覚も「相談する知人がいなかった」「産んだ時はパニックに」

警察による逮捕当時は「赤ちゃんを産んだ日に入れた。お金もないし誰の子どもかも分からないので、育てるつもりはありませんでした」などと供述していた谷口被告。

被告人質問では、弁護人から妊娠当時の状況などについて質問が及んだ。

(弁護人)「今回の一番の原因は?」
(谷口被告)「避妊をせず、救急車を呼ばなかったこと」
(弁護人)「妊娠して通院とか考えなかったのか?」
(谷口被告)「相談する人も知人もここにはいなかったから」
(弁護人)「捜査資料に『人から愛情を受けた記憶もない、楽しい思い出もない』と書いてるあるが今もそう思う?」
(谷口被告)「思います」
(弁護人)「その理由は?」
(谷口被告)「幼少期の親の影響」
(弁護人)「供述調書には『小学校6年生頃に母は子どもを置いて出て行った』と書いてるがこれのことですか?」
(谷口被告)「そうです」

出産時、谷口被告は量販店でトートバッグを買いそこに赤ちゃんを産み落としたという。遺体が入っていたバッグは、コインロッカーに長期間入っていたため業者が回収した後、倉庫に保管されていてその後、異臭に気付いた職員が警察に通報し発見された。その後なぜコインロッカーに入れたのか。谷口被告は裁判で次のように話した。

(谷口被告)「産んだ時はパニックだった。収入が安定せず、生活することで精いっぱいで育てるのは難しいと思った」

過去「12回の出産経験」産まれた子は施設に…死産だった時も

しかし、彼女にとってこれが初めての出産ではなかったという。

(検察官)「これまでに死産を含む出産は何回くらいしましたか?」
(谷口被告)「過去に12回繰り返しました」
(検察官)「産まれた子は?」
(谷口被告)「施設です」
(検察官)「死産の時は?」
(谷口被告)「病院で処置を受けた」
(検察官)「今回病院にいかなかったのは?」
(谷口被告)「健康保険証が切れていた」
(検察官)「更新はしなかったのですか?」
(谷口被告)「住所は鹿児島でホテル生活のため更新できなかった」

 

亡くなった子どもには「申し訳ない」

そして亡くなった子どもに対し「罪悪感があります。申し訳ない」と話した。

検察側は「赤ちゃんは抱きかかえられることもなくコインロッカーに閉じ込められていて生命を軽視している」などとして懲役2年を求刑。

一方、弁護側は「被告は反省している。今後は、公的な支援を受けながら自立する意思もある。再犯のおそれは少ない」として執行猶予付きの判決を求めた。

最後に裁判官から「何か言いたいことはありますか?」と聞かれた谷口被告は数秒間沈黙した後まっすぐ裁判官を見つめ静かにそして、力強く「大丈夫です」とだけ答えた。

判決は7月7日に大阪地裁で言い渡される予定だ。