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疲れてるんでしょうね、肩枕、私でよければどうぞ

【疲れてるんでしょうね、肩枕、私でよければどうぞ】
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中学生の一時期、市電通学をしたことがありました。
始点から終点まではラッシュのせいもあり、ゆうに1時間はかかりました。
本でも読もうとするのですが、たいていすぐに舟をこぎ出す始末でした。
ある日、私はまた寝入っていたらしく、
誰かに肩をたたかれ「終点ですよ」という声で頭をもたげたのです。
そう、隣の人に寄りかかって眠っていたのでした。
あわてた私でしたが、同時に隣の人の温かい気づかい、
それに運転手さんの優しさにも触れることになりました。
それはこんなことに気づいたからです

の人は、そっと気づかうように定期券を隠しましたが、 ぼんやりした頭の私にもよく分かりました。

その定期券には、終点の十数か所も手前の駅名が書いてあったのです。

寄りかかって眠りこけている私を起こすのにしのびず、 その人は終点まで私にそっと肩を貸してくれていたのです。

私は慌てて謝り、その人に戻り分の追加金を払わせては悪いと思って、 運転手さんに理由を説明しました。

運転手さんは快く承知してくれました。

「いいですよ。折り返しもただでかまいません」

”ありがとう”と百ぺん言っても足りない気持になりました。

 


 

参考本:あのときはありがとう、涙が出るほどいい話 出版:河出書房新社 編集:「小さな親切」運動本部