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一粒のぶどうのこころ

【一粒のぶどうのこころ】
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日本橋高島屋の一流サービス物語をご紹介します。
毎日新聞に載ったものです。
聖路加病院に入院していた5歳の白血病の女の子の父親と
高島屋の店員さんの実話です。
命短いわが子を思う親心と
店員さんの思いやりが、今も生き続けています。
女の子は一歳の時から入退院を繰り返し、
様々な治療の甲斐もなく、ついにターミナルケアに入りました。
もはや施す術もなく、安らかに死を迎えさせる終末ケアです。
3月になり、お医者さんが父親に言いました。
「もう、なんでも好きなものを食べさせてやってください」
父親はその子に、何が食べたいか聞きました。
「お父さん、ぶどうが食べたいよ」
と女の子が小さな声で言いました。
3月といっても季節はまだ冬。
ぶどうはどこにも売っていません。
でも、この子の最後の小さな望みを叶えてやりたい。
死を目前に控えたささやかな望みを、
なんとか、なんとかして叶えてやりたい。
父親は東京中のお店を探しました。
思いつく限りのお店を足を棒にして、探し回りました。
でも、どこのフルーツ売場にも置いてありません

方に暮れた父親は、最後に日本橋のデパートのフルーツ売場を訪ねました。

「あの…ぶどうは置いていませんか?」

祈る気持ちで尋ねました。

「はい、ございます」

信じられない思いで、その人のあとについて行きました。

「こちらです」と案内されたその売場には、 きれいに箱詰めされた、立派な巨峰がありました。

しかし、父親は立ちすくんでしまいました。

なぜなら、その箱には三万円という値札が付いていたのです。

入退院の繰り返しで、お金はもうありません。

父親は必死の思いで店員に頼んでみました。

「一粒でも二粒でもいい、 分けてもらうわけにはいきませんか?」

事情を聞いた店員は、黙ってその巨峰を箱から取り出し、 20粒程を小さな箱に入れ、 きれいに包装して差し出しました。

「どうぞ、二千円でございます」

震える手でそのぶどうを受け取った父親は、 病院へ飛んで帰りました。

「ほら、おまえの食べたかったぶどうだよ」

女の子は、痩せた手で一粒のぶどうを口に入れました。

「お父さん、おいしいねえ。ほんとにおいしいよ」・・・

そして間もなく、静かに息を引き取りました。

高島屋では、箱のものはバラ売りしない という取り決めがあったそうです。

しかし、父親の話を聞いた店員さんは 自分の裁量で20粒ほどを量って、二千円で販売したのです。

感激した父親は、この話を主治医の先生に話しました。

先生は毎日新聞家庭面で週1回のコラムを担当しており 「私たちに神様と同じくらいの力を貸してくれた  フルーツ売り場の方に心からお礼を言いたい」と書きました。

一方、高島屋でも、毎日新聞のコラムを転載した小冊子を作り、 グループ全社員に配布したり、「一粒のぶどう基金」を作り、 社会貢献に役立てているとのことです。

出典元 URL http://tamamaro.sakura.ne.jp/wp/?p=385