· 

電気設備工事会社の倒産劇、事業承継で明るみになった“内部事情”

2022年12月21日、エコライフジャパンは東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は、2007年5月創業、11年11月に法人改組された電気設備工事会社だった。マンションやオフィスビル、店舗のLED照明やWi―Fi(ワイファイ)設置工事を主体に、一戸建てリフォーム工事や太陽光関連設置工事などを手がけていた。受注形態は下請けが多く、他者との競合は激しかったため、粗利益率の低い案件が多かったものの、原価計算を徹底していたため、小口ながらも採算のとれる案件を継続的に獲得してきた。20年には、建設業許可を取得し、工事の幅を拡大したほか、新しい拠点を開設し販路を拡大するなどの積極的な営業展開が功を奏し、同年10月期の年売上高は約8億2800万円を計上していた。

21年の初頭、元代表から当時従業員であった現代表高山氏に、経営者交代の話が持ちかけられた。これを承諾し同氏は代表に就任した。就任後、徐々に経営のことが分かるようになってくると、同社の隠されていたさまざまな内部事情が明るみになってくる。多額の簿外債務の発覚や想定している売り上げに到達していなかったこと。さらには、元代表が、同社の主要取引先および従業員を引き抜いてしまったことなどたちまち経営が回らなくなっていった。元代表は退任した後も、同社に籍を置いていたというが、事業承継は正しく行われておらず、事実が明らかになった時には、同社はかなり厳しい状況に追い込まれていた。

その後も、代表が先頭に立って新規取引先の開拓をするなど資金繰りに奔走するも奏功せず、複数の訴訟を抱え、ついには銀行口座の差し押さえを受けることとなり、事業継続を断念した。同社が倒産に至るまで、元代表の一連の動きは、故意だったのか。疑念が残る部分が少なくない。これからの管財業務の中で次第に明らかになっていくだろう。(帝国データバンク情報統括部)

コロナ禍の大打撃で倒産した先端ものづくり企業、高い技術力も“信頼”築けず

2022年7月11日、光学製品の先端ものづくり企業として知名度を有していた武蔵オプティカルシステムが事業停止し、同月22日にさいたま地裁へ自己破産を申請、8月2日に破産手続開始決定を受けた。

同社は、大手光学機器メーカーを早期退職した持田聰氏が03年8月に設立。OEM(相手先ブランド)製品の製造のほか自社ブランドの「MUSASHI-OPT」製品を展開、3次元測定器、UVレンズカメラのほか、4K・8Kのカメラレンズなど特殊レンズを開発、ハリウッド映画や東京オリンピックにも採用され、19年6月期には年売上高約12億3000万円をあげていた。

しかし精密で高価な設備投資が必要だったため、有利子負債が20年6月期には13億円弱にまで増加。21年5月ごろには大口取引先への支払いサイトが短縮され資金繰りが多忙化し、ファクタリング業者を利用してその場をしのぐ状況となった。 さらにコロナ禍で大きな打撃を受ける。テレビ業界や映像業界からの需要が大幅に縮小し、21年6月期の年売上高は約8億3500万円と大幅減収を余儀なくされた。有利子負債が約14億円に膨らんだほか、中国企業との映画用レンズの大口取引が上海ロックダウンの影響で22年に入り頓挫してしまい、材料費や外注費など2億円のキャッシュアウトが発生してしまう。

同年春、あるファンドから支援の好感触を得る。取引行に対しそれまでのつなぎ資金の融資を求めたが、この間独断でノンバンクを利用した当社に対して取引行が支援を続けることはなかった。売掛金の早期回収、支払い延期、ノンバンクの利用、役員と一部従業員の資金提供で決済を乗り切ってきたが、決済が困難となる事態となり、事業継続を断念した。高い技術力を有していた同社だが、取引行との関係維持、支払い面での脇の甘さがこうした結果を招いたのは残念でならない。(帝国データバンク情報部)

リーマン・ショック後最長…9カ月連続で増加した企業倒産、さらに増勢か

帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)が8日発表した1月の倒産件数は、TDBが前年同月比13・3%増の546件、TSRが同26・1%増の570件だった。TDBは9カ月連続で、TSRは10カ月連続で前年同月を上回った。TDBの9カ月連続の倒産増加はリーマン・ショック後で最長となった。

負債総額はTDBが同25・3%減の507億6900万円、TSRが同15・5%減の565億2400万円だった。件数が増えた一方で金額は減少し、企業倒産の小規模化が進んだ形だ。

業種別ではサービスがTDBで同19・2%増の143件、TSRが同29・0%増の182件だった。製造業がTDBで同34・8%増の62件、TSRが同76・1%増の74件。

主因別では、TDBによると「不況型倒産」が同12・4%増の436件で9カ月連続で増加。地区別倒産件数では、TSRによると全国9地区のうち東北を除く8地区で前年同月を上回った。関東が同1・5%増の200件。

TDBは今後の見通しを「今春にピークを迎えるコロナ融資の返済に加え、原材料価格高騰などの懸念もあり、3月以降に企業倒産の増勢が強まる可能性はある」とみる。

日刊工業新聞 2023年02月09日

倒産の増加に拍車か、「ゼロゼロ融資」の返済ヤマ場へ

コロナ融資で抑制されてきた企業倒産の増加リスクが高まってきた。コロナ禍で売り上げが落ち込んだ企業に、実質無利子・無担保で融資した「ゼロゼロ融資」の利払いを含めた返済開始は、今春から夏にかけてヤマ場を迎える。事業の抜本的な立て直しが進まない企業にとっては積み上がった債務の返済負担に加え物価高が重くのしかかる。政府は新たな借り換え保証で資金繰りを下支えする構えだが、利用の前提となる経営計画の策定が融資先選別につながり、倒産増に拍車をかける懸念も払拭(ふっしょく)できない。(編集委員・神崎明子)

 

金融機関に返済できなくなった企業の融資残高を肩代わりする信用保証協会の「代位弁済」。東京では22年4月から12月までの件数が前年同期に比べ43・6%増えた。保証期間の延長や返済方法など「条件変更」は同9・7%増。月平均約3500件に上る。

倒産予備軍の広がりを裏付けるように、企業倒産はすでに増加局面にある。帝国データバンクによると22年の企業倒産件数は3年ぶりの前年比増加で、月ベースでみると、5月を転換点に12月まで8カ月連続で前年同月を上回る。新型コロナウイルスの感染拡大前に比べると、政府の手厚い支援策で倒産発生が抑制された低水準であるものの、潮目変化は明らかだ。

政府系金融機関と民間合わせて約42兆円が投じられたゼロゼロ融資。初回返済までの「据え置き」は最長5年が可能で、利払いは3年間、実質的に免除される。20年3月のスタートから今年は3年の節目を迎える。

関係者によると、利用企業の約7割がすでに元金返済を始めているものの、利息も含めた本格的な返済開始は「23年3月から7月がピーク」とみられる。政府は「(民間実施分の)返済開始は23年7月から24年4月に集中する」ことを前提に施策を講じる。

コロナ禍当初の倒産抑制に貢献したゼロゼロ融資だが、影響長期によって業績回復が進まない企業にとっては返済負担が重荷となってきた。原材料価格の上昇や進まぬ価格転嫁も収益を圧迫。過剰債務が顕在化しつつある。政府は「ゼロゼロ」からの借り換えに加え、他の保証付き融資からの借り換えや事業再構築に伴う資金需要にも対応する新たな保証制度を創設し10日から取り扱いを開始した。

注目されるのは制度利用の条件が経営行動計画書の作成や金融機関の伴走支援である点だ。黒字化目標など収支計画や具体的なアクションプランが求められるため当面の運転資金を確保し、本質的な課題を先送りすることは表向きは難しくなる。「計画策定過程で実現可能性が低いと判断されれば、支援先の選別が進む可能性は否定できない。伴走支援を進めるにも人員は限られる」(帝国データバンク情報統括部の阿部成伸情報編集課長)。

日銀の金融緩和縮小に伴う金利上昇リスクもにらみつつ、手厚い支援の副作用を最小限に抑え過剰債務からの脱却をどう図るか。政府、金融機関の目配りが極めて重要な局面となる。

日刊工業新聞 2023年01月24日

「買い物難民」生んだ関西の食品スーパー倒産、コスト上昇も価格転嫁遅れた悲劇の顛末

ツジトミは、1982年3月に設立した食品スーパーマーケット。京都府南部と大阪府北摂地域に「スーパーツジトミ」4店舗を構え、ピークとなる2000年12月期の年売上高は約52億円を計上していた。

09年以降は出店に伴う設備投資から借入金負担が増加。近隣同業者などとの競争激化で安値販売をせざるを得ない状況が続き、収益性の改善が進まず赤字決算が常態化。13年以降は運転資金の不足から借入金負担が更に膨らんでいた。19年9月には本店(八幡店)を閉店してコスト削減を図ったが、この時期から人材が流出。ベテランバイヤーが退社したことを契機に仕入部門が弱体化、商品力の低下を招いた。

20年以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響で巣ごもり需要が拡大。21年8月には、「京田辺店」をオープンし業容は回復基調となったが、人件費負担が嵩み赤字体質は続いた。資金繰りのほか仕入れや店舗管理といった一連の業務が社長に集中していたとみられ、辻浩一社長との連絡が取りづらい状況となった。

22年以降は、エネルギー価格の高騰による光熱費や物流費の上昇でコスト負担が増加、各種食料品が相次いで値上げとなるなか、価格転嫁の遅れが続いた。京田辺店は思惑通りの売り上げとはならず、取引先への支払遅延が頻発するなど信用不安が高まっていたなか、22年10月1日付で事業を停止した。

利用客からはプリペイドカードの残高が残ったままで、前日まで通常営業していた店舗が突然閉店となったことに大きな不満の声が上がった。「サニータウン店」については、その地域で唯一のスーパーであったため、高齢者を中心に買い物難民となる住民が出ている。市民生活を支えてきた重要なインフラの倒産が一般消費者に大きな影響を及ぼすこととなった。(帝国データバンク情報部)

日刊工業新聞 2022年12月29日

物価高・人手不足…3年ぶり増加の企業倒産、「今後も増加局面」の理由

2022年の企業倒産は3年ぶりに増加した。帝国データバンク(TDB)のまとめでは、前年比6・0%増の6376件で、東京商工リサーチ(TSR)が同6・6%増の6428件だった。コロナ禍に加えて物価高や過剰債務、人手不足といった経営環境の悪化で事業継続をあきらめる中小企業の増加が背景にあるようだ。

TDBによると、負債総額は同2・0倍の2兆3723億8000万円と5年ぶりに2兆円台を記録した。マレリホールディングスの法的整理など大型案件が負債総額を押し上げた。

TDBによれば、業種別では、小売業を除く全業種で前年を上回った。サービス業は同12・4%増の1601件で、5年ぶりに100以上の増加となった。資材価格の高騰が続いた建設業は同12・9%増の1204件で、14年ぶり増加となった。運輸・通信業も同22・8%増の334件と悪化した。TSRによると、新型コロナウイルス関連倒産は同36・7%増の2290件だった。

22年12月の倒産件数は、TDBが前年同月比18・2%増の592件で、8カ月連続で前年同月比増加。TSRは同20・23%増の606件で9カ月連続で前年同月を上回った。

23年の見通しについてTSRは「物価高倒産は運輸業や製造業だけでなく農林・漁・鉱業など幅広い産業に影響の波及が懸念される」とした。TDBは「予想される賃上げの動きに取り残されかねない中小企業の動向に注視が必要。23年の企業倒産は緩やかな増加局面が当面続きそうだ」と予想する。 

急増する「円安倒産」…増勢傾向はさらに強く

帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)が発表した8月の倒産件数は、TDBが前年同月比9・8%増の493件で4カ月連続の増加、TSRが同5・5%増の492件で5カ月連続の増加だった。足元の急激な円安進行で、企業にとってさらなるコスト増が懸念される。燃料高や人手不足による人件費高騰も追い打ちをかける。倒産件数の増勢傾向はさらに強くなりそうだ。

負債総額はTDBが同11・9%増の1059億600万円、TSRが同22・4%増の1114億2800万円だった。8月としては4年ぶりに1000億円超えとなった。内訳では1億―10億円の中堅規模の倒産が広がりを見せている。

円安による輸入コストの上昇などが要因となる「円安倒産」も急増している。TDBによると8月の円安倒産は7件発生した。8月としては2年ぶりの発生だったほか、単月で見ると6年ぶりの高水準だった。急激な円安を受けて「円安倒産予備軍も増えている恐れがある」(TDB)。

新型コロナウイルス関連倒産も増加している。TSRによると同50・7%増の193件で、2020年2月の集計開始以来、過去3番目の多さだった。

業種別では燃料価格の高止まり影響を受ける建設業や運輸業で倒産が増えている。運転手や作業員などの人手不足も深刻なまま。例えば運輸業でのコスト増は商品の仕入価格の上昇にもつながり、他の業種にも波及しかねない状況となっている。

日刊工業新聞2022年9月9日