日本人が忘れかけている東京大空襲の悲劇 3人の生存者の記憶と証言を、ひとりのオーストラリア人映画監督が見つめる
1945年3月10日午前0時過ぎ、アメリカ軍の爆撃機が東京を襲撃し、木造の家屋や多くの紙材が密集していた街に火の粉を浴びせた。日の出までに10万人以上の死者を出し、東京の4分の1が焼失した史上最大の空襲だった。この凄まじい記憶が今もなお生存者の脳裏に焼きついている。戦争や空襲の記憶が失われつつある今、未曾有の悲劇の体験を後世に残そうとする生存者たちに肉薄する。本作は東京を拠点にするオーストラリア人映画監督エイドリアン・フランシスの長編ドキュメンタリー・デビュー作。この悲劇で私たちは何を記憶し、なぜ忘れようとしているのか。ロシアによるウクライナ侵攻から1年。戦争の影がしのび込んでくる今、生存者の体験と未来への思いを見つめる。
2021年/オーストラリア/80分/原題:Paper City/配給:フェザーフィルム
監督:エイドリアン・フランシス
出演:清岡美知子、星野弘、築山実
with english subtitles
▶︎2023年2月25日(土)より公開



監督プロフィール
エイドリアン・フランシス
1974年オーストラリア生まれ。メルボルン大学、ドキュメンタリー映画専攻を卒業。15年前から東京を拠点に活動。短編ドキュメンタリー『Lessons from the Night』はサンダンス映画祭でプレミア上映、2010年ベルリン映画祭のTalent Campusに招待された。初長編映画『Paper City』はメルボルン・ドキュメンタリー映画祭では2つの賞を受賞し、さらに2つの賞にノミネートされた。

監督のことば
初めて東京大空襲について学んだ時、たった一夜で10万人もの人が命を落としたいう、言葉を失うような事実を知りました。「歴史上もっとも破壊的な空襲」であったにも関わらず、東京の街にはその跡がほとんど残されていない、ということです。生存者は生きているのだろうか。語り継ぎたくなかったのだろうか。それとも、忘れてしまいたかったのだろうか。私は生存者の方々に連絡を取ることを決めました。オーストラリア人の私は、彼らに警戒されてしまうのではないかと不安でしたが、3人の生存者の方が当時の記憶や経験を語ってくれました。
東京大空襲、直前で「超高高度・昼」から「低空・深夜」の爆撃に変更した理由

※本稿は、鈴木冬悠人『日本大空襲「実行犯」の告白~なぜ46万人は殺されたのか』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。 ● 東京大空襲実行の直前に 「超高高度」から「低空」へ転換 日本への焼夷弾爆撃は、入念に準備されていた。実験を繰り返し、最も効果的に街を焼き尽くす方法まで検証されていたのだ。あとは、どのように実行するか。それだけであった。その実行役を担うことになったのが、カーチス・ルメイだった。焼夷弾爆撃を成功させるための最後のカギとなる空爆計画。航空軍の命運を握る計画の策定は、38歳の指揮官の手に委ねられた。 アーノルドから焼夷弾爆撃の指令が下ってから10日あまり。ルメイは、どうすれば日本への空爆で成果を上げられるか考え続けていた。 大きな障害となっていたのは、気象状況だった。航空軍が爆撃を行っていた11月~2月の間、東京上空の天候は、常に厚い雲に覆われていた。B-29が超高高度から目視で爆撃できる日は、ひと月に7日程度しかなく、最悪の時期は3日しかなかった。さらに、天気に恵まれた日でもジェット気流に阻まれた。超高高度から目視で行う精密爆撃は、目的地が好天候であることを前提にしており、日本にはまったくこの条件が当てはまらなかった。 B-29の使用方法を変えなければ、成果をあげられない。1945年3月上旬、ルメイは、一つの答えにたどり着く。 「私は、日本の偵察写真をすべて確認している中で、あることに気付いた。ドイツ人が防衛で使っていたような低空用対空砲火は見当たらなかったのだ。このことに気付いたとき、自分の中で“これだ”と確信した。レーダーも使い物にならないことを知っていたので、気圧などを調整することで、B-29をできる限り低く飛ばせるようにした。私たちは、高すぎる位置から爆撃をしていて、私が思うには、そのせいでB-29に負担がかかりすぎていた」(肉声テープより) ルメイが思いついたのは、B-29を低空飛行させる爆撃計画。これまでの超高高度1万メートルを捨て、2000メートル付近まで高度をさげるという思い切った作戦だった。

説明
内容紹介
半世紀ぶりに発掘された米将校246人、300時間の肉声テープが語る「大空襲」の真相。
第二次大戦末期、わずか一年足らずの空爆で約46万人もの命が奪われた。すでに敗色濃厚の日本に対して、なぜそれほど徹底的な爆撃がなされたのか。最大の理由は、空爆を実行したアメリカ航空軍の成り立ちにあった。当時、陸軍の下部組織という立場にあり、時に蔑まれてきた彼らが切望するものは何だったのか。半世紀ぶりに発掘された将校ら246人の肉声テープが浮き彫りにする「日本大空襲」の驚くべき真相とは。






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名無し (月曜日, 06 3月 2023 19:44)
日本軍とアメリカ(空)軍のエゴのために46万人もの犠牲者が。
二度と戦争を起こしてはいけない。
名無し (月曜日, 06 3月 2023 19:45)
日本軍はほとんどの戦争に関する公文書を破棄しましたが、アメリカは過去の公文書がすべて残っている。公文書の取り扱いの差に、愕然とする。