【衝撃事件の核心】「最後はぼろ切れのように捨てられる」 山口組4代目〝ボディーガード〟独白 組分裂は「足を洗う絶好のチャンス」

「最後の賭けをしたのだろう」。日本最大の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)の分裂騒動を、こう推測する人がいる。NPO法人「五仁會(ごじんかい)」の竹垣悟代表(64)。兵庫県姫路市で、暴力団から離脱しようとしている組員や元組員らの支援活動を続けているというが、もともとは暴力団の組長。それも、山口組の竹中正久4代目組長の〝ボディーガード〟の立場だった。分裂を決意した組長らの心境も理解できる部分があるといい、「このままだったら金が続かなくなり、最後は捨てられる」と、背景に金銭問題が存在した可能性を示唆する。一方、抗争も懸念される中にありながら、竹垣代表はむしろ好機ととらえ、現役組員らにこう呼びかけている。「足を洗うには、絶好のチャンスだ」

「離脱組長ら最後の賭けか」

 10月13日午前、神戸市灘区の閑静な住宅地にある山口組総本部に、兵庫県警の捜査員約30人が家宅捜索に入った。玄関前には盾を携えた県警の機動隊員が並んで警戒に当たったが、トラブルなどはなく、家宅捜索は約30分で終了した。詐欺容疑事件の関連先としてのもので、分裂後、警察当局による総本部の家宅捜索は、これで3回目を数えていた。

 衝撃の分裂から1カ月半以上が経過。この間、警察当局は徹底捜査を続け、総本部や、山口組最大勢力だった山健組(本部・神戸市中央区)を中核とする13団体が離脱して結成された「神戸山口組」の関係団体などへの家宅捜索を、まるで日替わりのように繰り返した。抗争が懸念される中、一刻も早く実態把握を進めたいという考えだろう。

 分裂に至った動機はいまなお謎に包まれ、憶測も交えてさまざま語られているが、竹垣代表は離脱組のメンバーから、こう推測している。

 「(分裂した側の神戸山口組は)組長らの年齢を見たら、最後の賭けをしたのだと思う。このままだったら上納金を払い続け、組織の金が続かなくなり、最後はぼろ切れのように捨てられる。金を出せなくなったら、結局、ほうり出されるだけだ」

 分裂の背景に金銭問題の存在を指摘する声は、これまでにあった。実際のところは分からないが、竹垣代表は山口組を割って出ることの重大さを語る。

 「山口組の『盃(さかずき)』をいったん飲んだのなら、それは絶対。その仕組みを壊してまで分裂したのだから、相当な覚悟なのだろう」

一時は姫路最大の暴力団

 観光客でにぎわう世界遺産「姫路城」。この近くに、竹垣代表のNPO法人事務所がある。

 「強きをくじき、弱きを助ける。そんなヤクザにあこがれて、21歳で極道に入った」

 入ったのは竹中組。後の竹中正久・山口組4代目組長が立ち上げた組だった。

 その後、「竹中組長からの寵愛(ちょうあい)を受け」、ボディーガード役を務めたこともある。「困った人がいれば、必ず助けなければいけない」。竹中組長が口癖のように言っていた言葉は、いまもよく覚えている。

 やがて、山口組を二分した「山一抗争」が勃発(ぼっぱつ)。竹中組長は殺害されてしまうが、竹垣代表は当時、収監中だったという。

 自らも暴力団の組長だった。一時は組員約150人を数え、姫路で最大組織といわれたこともあったと振り返る。

 だが、その後、ある組長の引退を目の当たりにし、時代の移り変わりを感じた。「ヤクザの看板で飯を食える時代が終わった」とも感じ始め、今から10年前、暴力団をやめた。

元組員を自立更生支援

 3年前、社会の役に立つ活動がしたいと、暴力団員と犯罪者の自立更生支援の活動を始めた。これまで、暴力団を辞めた元組員の相談に乗ったり、仕事を紹介したりして支援をしているほか、地域の防犯活動や子供の見守り活動を行ったという。

 しかし、元組員には仕事を紹介しても、長続きしないことが多い。「楽をして稼ぐ方法ばかり知っている暴力団の体質がある。しかし、社会にこうした人たちを受け入れる土壌がないことも要因のひとつだ」と指摘する。

 平成4年に施行された暴力団対策法など数々の取り締まり強化で、暴力団でいることのメリットが昔と比べ、減ってきているとみている。そういうご時世だからこそ、手を差し伸べることの重要性も増していると訴える。

 「暴力団をやっていてもマイナス面が多く、今の組員の多くは、惰性で続けている。暴力団に対する取り締まりを強化するだけではなく、国が自立更生支援の方策を考えるなど、それなりの対応はこれから必要になる」

「大きくなりすぎたものは必ず滅びる」

 近年、暴力団組員の自主的な「離脱」を促す取り組みも始まっており、今年7月、暴力団から離脱することを希望している組員らを支援する「全国社会復帰対策連絡会議」の初会合も開催された。

 そんな中、山口組が分裂した。

 「分裂は時代の流れ。恐竜が滅びたように、大きくなりすぎたものは、必ず滅びる。いつかは起きる事態だった」

 こうした上で、竹垣代表は現役の組員らにメッセージを送った。

 「私が現役だったころ、ヤクザとしてしか生きられないと思っていた。しかし、いまは組員らに更生を促す立ち位置にいる。暴力団の末路というのは、どんなに上にいった人でも哀れなもの。社会の役に立つようなことができれば、人の見る目も変わるし、有意義な人生を送れる。足を洗って一般社会に戻ってきてほしい。私にできたのだから、きっとできるはずだ」

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コメント: 1
  • #1

    ナチス水晶の夜 (木曜日, 22 9月 2016 19:26)

    ヒトラーが、始めた戦争で5500万人の尊い命が亡くなった。許されない独裁者だ。しかし、そいつもまた人間で決してモンスターでは無かった。人の心には、残虐性が潜んでいる。自己コントロール出来なくなれば人間失格。常に己に厳しく生きたいものだ。