DVやストーカー被害に国が弁護費用、法律相談は無料化 法改正方針

ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー事件の増加を受け、法務省が日本司法支援センター(法テラス)の業務を定める総合法律支援法を改正し、被害者支援を強化する方針を固めたことが7日、分かった。法テラスを窓口に無料法律相談を受けられる資格要件を緩和するほか、経済的に余裕のない場合は加害者交渉や捜査機関との調整など法的手続きにかかる弁護士費用を国が負担。被害に関連するリベンジポルノ対策も対象となる方向だ。

 警察庁によると、昨年のDVの認知件数は4万9533件、ストーカーは2万1089件でともに過去最多を記録。昨年10月には東京都三鷹市で元交際相手からストーカー行為を受けていた女子高生=当時(18)=が殺害されるなど深刻な被害が相次いでいる。

 これを受け法務省は、今までは一定の収入や資産がないことを証明しなければ受けられなかった法テラスの無料法律相談を、DVやストーカー被害者であれば誰でも受けられるよう改正。さらに、経済力がない被害者に対し、必要な法的手続きの弁護士費用を国が負担する方針。被害が深刻化する前でも受け付ける。

 法テラスのあり方を議論する同省の有識者会議が今年6月にまとめた報告書によると、DVやストーカーの被害者は加害者と近しい関係であることが多いため捜査・行政機関への通報を躊躇(ちゅうちょ)しがちで、通報したとしても関連法令上の要件がそろわないと動いてもらえないケースも多い。一方、弁護士であれば、被害者への暴力やつきまといを止めるため(1)捜査・行政機関と調整(2)裁判所への保護命令の申し立て(3)内容証明郵便による警告書の送付など加害者交渉-といった対応を迅速に行うことができる。

 また、三鷹ストーカー殺人事件では、女子高生のプライベートな画像がインターネットで公開されるリベンジポルノ問題も発生。このため、被害者がリベンジポルノ行為にあった場合も支援の対象になるという。

 同省は来年以降、総合法律支援法の改正を目指しており、「政府方針である『頼りがいのある司法』を目指し、確実にできる部分から対応したい」としている。

 女性支援団体「日本フェミニストカウンセリング学会」の井上摩耶子代表理事は「DVから逃げ出した母子は経済力がないことが多く、無料で弁護士に対応してもらえるのは大変助かる」と評価している。