島の猫3千匹を不妊去勢へ 希少ウサギ守るため 徳之島 青空と向日葵の会

 島の猫3千匹まるごと不妊去勢する――。そんなプロジェクトが鹿児島県徳之島で進んでいる。野生化した猫から希少動物を守りたい地元自治体が、猫を殺処分せずに時間をかけて数を減らす「TNR」と呼ばれる活動に目をつけた。野良猫問題に悩む各地の自治体でも大規模なTNRを実施する例が相次いでいる。

 1月下旬、徳之島・伊仙町の高校跡地内につくった「手術室」。ボランティアらが次々に運び込む猫に獣医師8人が不妊去勢手術をした。昨年11月に実施したTNRと合わせると、手術は約1100匹にのぼる。

 島には絶滅が危惧される国の特別天然記念物アマミノクロウサギが200匹生息するとされ、主に野生化した野良猫による捕食が問題視されてきた。徳之島を含めた奄美群島は世界自然遺産登録をめざしている。

 島では一部住民の過剰なエサやりなどが原因で野良猫は増えている。昨春、島にある3町は猫の放し飼いを制限する条例をつくったが効果は表れず、伊仙町の美延治郷環境課長は「行政主導で殺処分することはできず、頭を抱えていた」と話す。3町は昨夏に「これ以上増やさないように手を打とう」と話し合い、TNRを進める公益財団法人「どうぶつ基金」(兵庫県芦屋市)の協力を得て、飼い猫を含めた島のすべての猫3千匹を目標にTNRを実施することを決めた。

 島でのTNRは昨年12月、北九州市の沖にある住民40人の離島・馬(うま)島でも実施例がある。ボランティアらがエサ付きのかごで猫を捕獲。獣医師2人が2日間で島のほぼすべての約80匹に不妊去勢手術をした。島の港で猫がくつろぐ姿は猫好きの間で有名だったが、観光客のエサやりなどが原因で野良猫が増え、住民は糞尿(ふんにょう)の臭いや発情期の鳴き声に悩まされていた。

 徳之島では来年3月にTNRを完了予定。クロウサギと生息域が重なる野良猫は元に戻さずシェルターで保護する。だが、山奥に入りこんだ野良猫をすべて捕まえるのは現実的には難しい。美延課長は「プロジェクトを通じて飼い主のモラル向上をはかりたい」と期待する。

■自治体のTNRを実施例が増加

 市町村に引き取られた猫は、譲渡先が見つからない場合、原則殺処分される。2013年度の殺処分数は約10万匹。ピークの1991年度の約33万匹に比べると3分の1に減った。

 環境省動物愛護管理室によると、殺処分を減らそうという機運の高まりや譲渡会が活発になったこと、改正動物愛護法施行で安易な自治体への持ち込みを拒否できるようになったことが要因だという。

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    やっぱり猫が好き (木曜日, 19 2月 2015 18:48)

    全国に広まって、殺処分ゼロになると良いですね。